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  • 執筆者の写真松田学

GW後の政局は?未だ消えぬ6月解散説に相当な論拠あり~総理辞任と秋の総選挙こそが憲政の常道では?~

GWも終わり、「地球1周」の外遊から帰国した岸田総理が早速、政治とカネの問題でさらに低下していた支持率を取り戻そうと動き出していますが、この内閣支持率が7か月ぶりに上昇したことが最新のJNNの世論調査で分かりました。一般に支持率は外遊後には上昇する傾向があるとされますが、GW中の5~6日のこの調査で前回に比べ7・0ポイントもの上昇で29・8%にまで上がったのは「明確な理由が見つからない予期せぬ上昇」…。


普通なら、支持率アップに与党は喜ぶものですが、今回ばかりは自民党内から困惑の声があがっているようです。「そんなはずがない」、「困るんだよ。どうするんだよ、解散したら」…。当コラムでも以前から指摘してきたように、岸田総理個人としては9月の自民党総裁選での再選のためには6月にも衆院を解散し、与党の議席を減らしてでもなんとか総選挙に勝った実績をあげたいところ。支持率が上がれば、野党も弱いから今のうちに、と。


しかし、与党の各議員からすれば、三補選での4・28ショックは大きく、いま解散されたら自分の議席が危ない、なんとしても6月解散は阻止したいところでしょう。


GW最終日の5月6日に、都内で自民党の著名ベテラン議員の方々との会食の機会がありました。その席でA議員曰く…「6月解散はなくなった。岸田さんは直面するいろんな課題に専念すると決めた。そのまま総裁選に出る、対抗馬は茂木、高市…河野は微妙、上川は無理。再選されたら来年の衆院任期満了までこのまま続けるかもしれない。」


安倍派の重鎮として政倫審での答弁も注目された元政調会長のB議員曰く…「この状況では解散はとてもできないですよ。」拉致問題に長年携わってきた元閣僚のC議員に、私から「岸田さんは拉致被害者の帰国で支持率を上げて電撃解散を狙っているはずですが…」と尋ねてみたところ、「それが、うまくいっていない。外務省が功を焦って失敗した」…。


自民党内だけでなく、公明党も総裁選後の今年秋以降の解散が望ましいとしており、どうも与党内では6月解散はなくなったとの雰囲気が強く、あとは岸田氏の気が狂わないことを願うばかり…のようですが、他方で、6月解散断行説も根強くあります。それはジャーナリストの山口敬之氏だけではありません。政治評論家の田村重信氏は、「三補選の結果は事前に分かっていたこと。所詮、バッジを外したくないのが自民党議員たちの議員心理。なんとしても6月解散を阻止したいのは当然のこと。しかし、岸田氏の考えは違う。」


同氏は「自民党に長くいたが、これだけきちんと解散総選挙のお膳立てをしているのはなかなかなかったこと」だとも…。6月解散説にも強力な根拠があるようです。今回は、この田村氏が松田政策研究所CHで語った内容をご紹介します。


ただ、解散云々よりも前にやるべきことが岸田総理にはあると思います。この連休、「連休」といっても私には「休」ではなく、ほぼ毎日が活動。街頭演説だけでも4/28、4/30、5/1、5/3、5/5、5/6と連続街宣、「連宣」といったほうがよいGWでした。特に5/5の子どもの日には、子どもたちのためにも岸田総理は即刻、総理を辞任してほしいと訴えました。


なぜ、自民党の今回の処分は29人で、30人ではない?もう一人いる。岸田さんでしょう?あなたの派閥でも他派閥と同じ不正があったでしょう?まず、この段階で、普通なら不祥事が多発した会社の社長に問われるはずの責任はどうなった?自民党のトップとしての身の処し方を示さないと国民の政治不信はさらに高まるのでは?という問題がありました。


これも「政治家はやはり自分のことばかり考えている」という政治不信を子どもたちに植え付ける恐れがありますが、問題はこれにとどまりません。上記の指摘に対し、三補選の前に岸田総理は「最終的には国民と党員に判断してもらう」と公言しています。国民は選挙で、党員は総裁選で…この段階では、国民には6月に衆院を解散して総選挙で、党員にはその後の9月の総裁選で、ということが岸田総理の頭にあったのかもしれません。


しかし、その前に国民が判断しました。三補選で唯一、自民党が候補を立てた島根1区で有権者は政治とカネの問題に係る岸田自民党の対応に明確にノーとの審判を下したと言ってよいでしょう。島根はかつては竹下総理を輩出するなど、自民党の「保守王国」、それも、この1区では11回連続当選の元衆院議長、故・細田博之・前衆議院議員の弔い合戦なのに、野党第一党の立憲民主党とのガチンコ対決で2・5万票近くの大差で大敗しました。


一般に衆院小選挙区は二大政党制のもとでの政権選択を想定した制度ですから、この結果は岸田内閣に対する国民からの不信任と言ってよいでしょう。こうして国民が「判断」した以上、岸田氏は総理を辞任しなければ国民にウソをついたことになる。それでも岸田氏が総理の座に居座り続けること自体、子どもたちに対して「政治家はウソツキだ」との印象を与え、投票しても意味がないと感じた若者たちはますます投票に行かなくなる…。


米国では刑事裁判の状況をみても、トランプ氏に対する民主党権力による選挙活動妨害が顕著ですし、お隣の韓国での4月の総選挙での与党大敗も野党側による不正選挙によるものだったとか…その中で日本だけは、日本人の国民性である正直さや、約束を守る誠実さに基づく「徳治政治」をもって民主主義の信頼を確保してほしいものです。


ただ、岸田総理としては、国民の判断はあくまで解散総選挙によってなされるものであり、それは今通常国会で成立を目指す一連の政治改革の成果をもって判断してもらうものだと考えているかもしれません。ならば、6月解散説は一応、筋が通っている?以下、この説を主張する田村氏の発言内容から、その論拠を検証してみたいと思います


●4・28三補選の結果をどう見る?チャレンジ精神を失った自民党

まず、今回の三補選についての田村氏の見解は…、「戦わずして勝つ、ではないが、戦わずして敗けた。長年自民党に務めたが、こんな敗け方は初めて。自民党のプライドはどこにでも候補者を立てること。立てなかった理由だけ説明しているが、それはまずい。」


「長崎3区。政治資金の問題はあるが、今度は合区。出したらどうなるいう議論はまずい。他の政党は出しているのだから。出して当選した場合、他の選挙区との調整はできる。自分もそうした調整をやった。小選挙区で出れなければ比例で優遇すればいいこと。選挙は戦っていないと足腰が弱くなる。オリンピックもいざ大会の前に練習試合に出ないと。」


「日本人のチャレンジ精神のなさ。これは日本経済も同じ。競争回避。それが日本をダメにした。自民党が一皮むけるには挑戦し競争することから逃げてはいけない。挑戦しないことに理由をつけて当然のような…絶対にいけない。」


「東京15区。小池さんに期待していた。岸田さんの人気が落ちているので、勢力挽回のために小池さんが補選に出て自民党入りして総裁選にと言われていた。しかし、カイロ大学の問題。最初は自民公明は乙武に乗ろうとしたが、自民の推薦は要らないというならやらないよと。しかも、当選順位は5番目だった。自公の票がいかなかった。小池マジックがなくなった。力に陰りが見えた。」


「立民がみんな勝った。長崎以外はそれぞれの選挙区にいつも共産党が立てていたのを立てなかった。その結果だ。それと投票率が低く、組織が強くなる。東京では酒井さんが4・9万票に対し、次の3人は3万票に届かない。自民党支持者の票も須藤元気や維新に分散。要らないといわれるんだから。乙武の発言としてはマズかった。公明は乙武の女性問題で。」


「日本保守党の飯山あかり。あれだけ月刊誌やネットで有名な百田さんがやったが、もっと行くと思っていたのではないか。アクセス数が圧倒的に多かったが、実際の選挙は違う。自民党の右寄りはみんなこちらに流れたが、当選には至らなかった。」


「島根1区。元々、細田氏の統一教会やセクハラの問題と自民党の裏金問題があったが、亀井さんのお父さんが元々素敵な自民党の国会議員、そのイメージが地元では強い。対抗馬は財務省でイメージがよくない。自民党支持者が3割近く亀井さんに。それと共産党の票。選挙が始まる日には結果は決まっている。それまでどれだけやってきたかだ。」


●実際には着々と進められている6月衆院解散

「自民党の人たちも負けるのは知っていた。メディアは惨敗と大々的に報道するが、織り込み済み。党内は意外と冷静。解散総選挙の準備はやってしまっている。」


「だから、裏金問題の処理を急いだ。岸田さん訪米で若干支持率が上がった。そして、自民党の政治活動用ポスターが4月8日に各支部に大量に送られている。事前に貼っておくと選挙期間中も寿命がある。一年も貼れないもの。選挙の時に生きている。」


「政治資金の支給を前倒しして6月に。年4回だが、7月支給を6月に。通常の200万円に加えて300万円に増額して併せて500万円。会期末に合わせて配る。」


「もう一つ、自民党政権のもとで今まで低迷していた経済がこんなによくなったなどと、いいことばかり書いてあるチラシがある。選挙演説で使える。」


「三点セットがそろっている。あとは岸田さんがやるかどうかだ。」


●支持率の動向と岸田氏の考え…6月解散が自民党に有利?

「支持率は…連休の外遊、主要国との会議、総理大臣はキャリアを積むべき。岸田氏は3年近くやっていて重みが出て、最近でも橋本氏に次ぎ戦後総理の8番目の在任期間に。」


「政党支持率では、4月のNHK調査で自民党は28・4%、立民は6・5%で自民党の4分の1しかない。維新が4・7%。これが現実。意外と立民が伸びていないし、共産党もそうだ。無党派が41・3%。無党派が入れたから自民党の強さがあったが、今回は選挙に行かなかった。数字をみるとそんなに悪くない。」


「いまやったら政権交代?という声も党内にあるが、では延ばせばいいかといえば、逆だ。東京15区でもあれだけ野党がバラバラ。それがまとまる?全国の選挙だと、立民と共産がくっつかない。立憲共産党にならない。嫌いな政党のナンバーワンは共産党、そこと組むと皆が引く。今回は政治とカネだったから、立憲共産党となってもどうでもよかった。」


「一人を選ぶ選挙での協力には時間もかかる。いまは地殻変動。維新、参政党、保守党と、時間を置くと、参政党も擁立者を増やして組織を固めて。時間ができてしまう。早く解散したほうが自民党が有利。対野党でも保守層に対しても。新しい保守がまとまる前に。」


「自民党国会議員のコメントが厳しいのは当然。羽交い絞めしても総理に解散させないというのも、それはそう。俺は落ちるんではないかと、少しでも長くバッジをつけていたいという心理。総理とは考え方が違う。」


「このままだと総裁選にも立候補できなくなる。総理を辞める決断をしないなら、『また新しい日本人総理で初めまして』では国益を守れないと考えるなら、9月の前に総選挙をするのは党のためでもあると考えるなら…。裏金で議員を処分、最高幹部の処分は?と言われても、それは国民に訊きたいと言うのは総選挙でケリをつけたいということだろう。」


●総理辞任?それとも総選挙をして三党連立?

「総理を辞任する可能性もあるが、その状況が去年から変わった。去年は麻生さんが支持率が低いからと、茂木さんにという動きもあったが、派閥は解散された。」


「世論調査で、誰が次の総理にふさわしいかと、いちばん上は石破と小泉。それと比べて岸田の支持率は悪いが、もっと悪いのが茂木だ。支持率の悪い人をあえて総理にして、そのあとの選挙は考えにくい。支持率の高い人を総裁選で選んで選挙ということなら、そして9月まで何もないなら、石破さんでという話になってしまう。」


「自民党は勝てなくても、それなりに与党を維持できれば、敗け方によっては、連立の組み換え。自公+国民民主か維新か。かつて自社さ政権のことがあったが、3つだといい。カメラの三脚の論理だ。倒れない。二つだと倒れる。あのときは三党で民主的な協議をした。三つだとうまく機能する。議席が減っても、三つで安定する。」


●連座制はスパイ防止法とセットで、規制よりも政治への信頼を

「全ての前提となるのは政治改革だが、連座制については、今の世界情勢をみると、日本にスパイ防止法がなく、外国勢力が工作しやすい。意図的にこの政治家をひっかけてやろとうのたくらみ。それができないためにどうするかを議論して決めないと心配だ。スパイ防止法とセットでなければならない。日本はインテリジェンスが甘いから。」


「企業団体からの献金の禁止?日本の企業風土がある。割り切りしにくい。企業にも政治参加の自由がある。利権だけではなく、こういう理念の実現に賛同するから献金したいという会社もある。それまで全面禁止にすると、実際には会社が寄付していても、個人名義に変えてしまうことになる。名前を借りて、名社員に金を払って寄付をと。」


「あまりぎちぎちやるのはいかがなものか。何でもかんでも規制するのは?政策調査費の使途公開は、官邸にも機密費というものがあり、そことの関係もある。」


「ある程度は信用しなければ政治は回らない。そもそも政治に対する信頼がない。信頼回復が大事。規制を創ると、そこで少しでも問題があったら、そこだけ報道する。裏金の話も、記載しなかった=裏金問題になってしまった。大事なのは政治家が襟を正してきちっと政治をすること。」

 

いずれにしても…「自民党の事務方にいて、今回ほどきちっと解散の準備をしているというのは、今までなかった。チラシ、その時期に合わせたおカネの配布、ポスター。もらったほうはそのおカネで何するのか。選挙準備でしょう。」


「6月末には内閣不信任が必ず出るから、解散の大義名分がある。今回の三つの補選は最初から敗北が決まっていたものだから、総選挙を占う材料にはならない。」

 

…以上、田村氏のご発言の中に三党連立による「三脚理論」がありましたが、維新、国民民主のいずれも党首がその可能性を否定してきましたし、少なくとも維新の場合は、馬場代表を総理にするとの約束がなければ困難でしょう。その場合も、岸田氏は総理辞任です。かつての「自社さ」連立でも総理は社会党の村山氏でした。


本当に「自民党の安定=日本の政治の安定と国民の信頼回復」を考えるなら、やはり、今通常国会での政治改革関連法案の成立をもって岸田氏は総理を辞任し、9月の総裁選で国民の注目を自民党に集めたあと、新しい顔での新しい政治のイメージのもと、10月解散とするのが、憲政の常道のように思えますが、いかがでしょうか。 

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