top of page
執筆者の写真松田学

都知事選が示す新たな民意と選挙のあり方~「支配層vs国民」で三次元化する世界政治の対立軸と衆院解散~

8月末に衆院解散!?このところ、そんな情報が一部の識者の間で駆け巡っています。私にも先週末、ある筋から入ったのですが、どうも、岸田総理は、8月に臨時国会を招集して安倍総理の改憲案(憲法9条に第3項を加え「自衛隊を置く」と規定)を国会で訴え、8月末に衆議院を解散して9月下旬とされる自民党の総裁選の前に総選挙を終えてしまう、すでにその準備に入っているとのこと。この支持率低迷の中で?解散は早くても総裁選以降になったとの永田町の常識を覆すような話ですから、正直なところ、大変驚きました。


本当にそうなるかはわかりません。公明党が絶対に反対するなどの理由であり得ないとする別の自民党筋の情報もあります。ただ、問題は、こうした解散判断が出てくるのは、岸田総理がその座に固執し、解散をしないと総裁選で勝てないと考えている場合に限られることにあります。確かに、支持率は野党のほうがずっと低く、選挙で敗けはしない、政権維持さえできれば総裁再選だ、自民党議員は多数落選するが、自分が総理を続けるためには仕方ない。自らの在任中にと公言した改憲を俎上に載せて、保守層の離反を抑止する。


岸田氏の頭の中にこの選択肢があるのは間違いないとするジャーナリストの山口敬之氏は、もう一つ、8月の電撃訪朝による二人の一時帰国(家族会が待つ拉致被害者の帰国は実現しない)がもたらす支持率アップをもって解散に持ち込む可能性も挙げています。


ただ、これではまさに「自己都合解散」では?自らの権力維持のために解散権を弄び、国政選挙で国民を振り回す。我欲の政治?そんなことでは政治への信頼回復は遠いでしょう。他方で、岸田総理側近筋から8末解散説を聞いたとする前述の山口氏によると、岸田氏を総裁選に出すまいと画策する茂木-麻生ラインに対するブラフの可能性もあるとのこと。いずれにしても、岸田氏が総理の座に固執しているのは確かだということになります。


しかし、7月26~28日の日経・テレ東の世論調査によると、岸田総理に求める在職期間は「9月の党総裁の任期満了まで」が55%と最も多く、「直ちに交代してほしい」が25%で、総裁選での再選を前提とする「できるだけ長く」は13%にとどまっています。なんと国民の8割が岸田総理の退任を求めている。党内もそう。「会期終え 降ろしの風吹く 永田町」…私が6月の通常国会会期終了直後に戯言で詠んだ句です。その他、歴代内閣が退陣した際の状況はほぼ揃っています。なんと往生際が悪い岸田さん。バイデンも撤退したのに…。

バイデン氏の場合は、最近の同氏の言い間違いや徘徊など相次ぐボケ老人ぶりを前に、同氏を背後で操ってきた勢力が、もはや大統領が操り人形であることを隠し切れなくなったとして、時期尚早のテレビ討論をセットし、撤退の決断をせざるを得ない状況を演出するという策謀が促した撤退でした。これに対し、岸田氏の場合、彼を操るのがそもそも米民主党のバックにいる勢力。だから、それに支配された日本のマスコミも、歴代政権末期のような岸田批判はなぜかしない。党内でも派閥の解散で反岸田がなかなか奔流化しない。


こんな時、トップたる者に問われる道義心や、諌言ができる側近の存在が不可欠。特に岸田氏は一国の宰相。国家の命運がかかっています。ただ、本当に国民に信を問う気なら、ウクライナ戦争でも見せた、あのグローバリズム勢力奉仕の姿勢や、そのもとで日本をATM化することの是非こそを国民に堂々と問うてほしいものです。岸田氏が国民には黙って米議会やゼレンスキーに約した巨額の支出を負担するのは、日本の納税者なのですから。


軍事専門家の矢野義昭氏は、今や世界中で厭戦気分が国民の間に広がっているとしています。トランプ氏が再選されれば一挙にウ戦争は終結するでしょうが、グローバル利権の「戦争屋」が支配する民主党のハリス氏が大統領になれば核戦争の危険すらあると同氏は警告しています。バイデン撤退表明後のメディア報道は急にハリス、ハリスで「ハリスの旋風(かぜ)」?が吹いているかのようですが、米国内ではそうでもないとのこと。これも、日本のメディアがいかに民主党グローバリズム勢力の支配下にあるかを示すものでしょう。


銃弾をものともせずに立ち上がりファイティングポーズを見せたトランプ氏。彼が闘っている敵はバイデンでもハリスでもない。この構図を読まないと日本の政治も組み立てられません。かつてのケネディ大統領暗殺事件も、ロッキード事件も、2年前の安倍氏暗殺事件も、その背後に巨大なパワーが存在する。本当の敵を見誤ってはなりません。


もはや世界の対立軸は「左(リベラル)か右(保守)か」だけでは語れません。私はかつて「後ろ(既得権益固執)か前(未来創造)か」を唱えましたが、もう一つ、「下(国民)か上(グローバルな支配勢力)か」が加わり、政治は三次元の世界に入ったと思います。


トランプ氏が「ヒルビリーエレジー」の、虐げられた白人層を代表するバンス氏を副大統領候補につけたことは、かつての労働者の政党から、90年代以降はグローバル利権の代弁者へと変貌した民主党に対して、共和党がかつてのエスタブリッシュメントの政党から、一般庶民の側に立つ政党へと脱皮したことを確定させたものとも言えます。


この米国で起きている政治の動きは、日本国民にとって対岸の火事ではありません。日本の既存の大政党には、自民を筆頭に、真に国民の側に立ってグローバリズム全体主義に対抗する軸がスッポリと抜けていました。そこに立脚したのが参政党です。ただ、政治を変えるには選挙で多数を取らねばならず、新しい軸を主流化する上で課題が多々あります。


そのような中で、様々な話題を呼んだ7月の東京都知事選は、これからの政治を決める有権者の「民意」の所在がどこにあるかを考えさせてくれる選挙になりました。そこで見られた国民の既存政党離れも、選挙の場を弄ぶかに見えるおちゃらけ的な現象も、新たな政治の軸の形成に向けた日本の有権者の声を映じたものだったかもしれません。


今回は、2年前の「参政党現象」にも比せられる「石丸現象」を中心に、今般の都知事選に関して政治評論家の田村重信氏とSAKISIRU編集長の新田哲史氏と行った対談をそれぞれ、ご紹介します。もはや日本の選挙の仕組みそのものから変革すべき時かもしれません。


●やはりテレビが大きかった都知事選での石丸現象~4人の争いの構図づくりが勝因~

まず、都知事選では石丸陣営に加わっていた田村重信氏によると…「都知事選は小池さんが強かった。最初は女性対決と言われたが、石丸さんが蓮舫を抜いた。テレビの時代からインターネットの時代に入ったということ。実際の選挙だと、インターネットは結果に結びつかないが、石丸さんには藤川晋之助さんという選挙のプロと軍団がいた。」


「自分も手伝うことになったが、それまでは石丸さんを全然知らなかった。藤川さんの力だ。有力候補として小池、蓮舫、田母神の中に入るような工夫を彼がした。ネームバリューのある候補に石丸を入れた。そうなると、マスコミがこの4人に集中する。4人の選挙になる。これが最大のポイント。そうでなかったら、石丸も泡沫候補だった。他にも有名な人がたくさんいた。軍師が大事だ。主要4候補の仕組みを創ってしまった。」


「石丸は41歳で市長の経験もあるし、市長時代に話題を呼んでネットでは名が知られていた。ネットで見た人はリアルに会いたいとなる。ハイテクになればなるほど、ハイタッチを人は求めるようになる。そして街頭演説、それを見に行く。どんどん人が集まる。旧来型選挙だと動員が必要だが、彼にはボランティアも5,000人、献金も2億円以上。Youtubeを見て感動しました、で来る。参政党も二年前の参院選で同じことをやったが、押し込んだ当たりのつくりが、いまひとつだったのではないか。」


「若さ、行動力、切れの良さ、石丸は自分で考えて自分で配信していた。中身は賛否両論だったが、気にしないで発言。選挙に出る前の市長時代からネットで有名だった。選挙が始まってからのネットではダメ。選挙運動も日頃からやっているかどうか。それと同じ。」


「人の意見はきかない。そういう人だから、独断専行、行動力がある。批判があるからやめようということで日本経済は30年間、ダメだった。そういう人たちが出てこないと日本は元気にならないということを示したのが石丸現象。」


●選挙ではチャレンジ精神と斬新さが不可欠な時代に…自民党総裁選は?

「蓮舫の場合、共産党が表に出ると、日本人の間には共産党への拒否感が強い。大失敗。石丸には小池、蓮舫の両方から票が流れた。無党派からも。沢山の候補者が出たが、5番目以下の人が軍師に支えられたら石丸さんと同じになった。政見放送なんかバカバカしくて聞けない。ポスターも貼れない人が大半だった。都知事なんだから、貼れるぐらいの人でないと、出るのは失礼だ。」


「同日の都議補選のほうは自民が惨敗し、深刻。9月の自民党総裁選が今までと違うのは、派閥が解消されたこと。派閥の長であれば20人を集められる。そうでない人は大変。今度は、派閥は前面に出られない。派閥に依存しないで誰が出られるか。来年も選挙がある。党首のイメージで選挙は左右される。国民に人気のある人が有利。」


「岸田氏は外交的には自分は長くやったほうがいいと考えているだろう。その問題と国内の問題は全く違う。当選4回以下の人は風で当選した人が多く、危機感を感じている。石丸をみて、若い人が、俺もやろうという人がいていい。小泉進次郎さんにも出ろと言っている。派閥がなくなったのだから、俺がと、20人集めればいい。総裁選の討論会にメディアが殺到するのがいい。」


「石破、小泉、高市…加藤さんも安全で落ち着きがある。世論調査で支持率の高い人が有利な総裁選になる。来年には衆院の任期が来る。参院選と都議選も。解散の時期として衆参ダブルもありえる。ダブルでやると組織力があるところが勝つ。」


「選挙では斬新さが大事になった。何かやってくれるのではないかと。どの党もそうだ。失われた30年は、上から言われたことを着実にやっただけだった。チャレンジして失敗してもやろうということでなければならない。」


●国民は既成の政治を見放した~石丸氏が急伸したメカニズムとは~

次に、社会現象との関連で政治情勢を分析する上では、新田氏の見方が参考になります。同氏によると…「石丸現象は驚異的。かつての東国原さん、青島さん、テレビ的著名人の票数をとった。初めて選挙に行った人も応援。ネットから出てきた候補者が初めてこれだけ票を動かした。参院の比例票ではあったが。衆議院という狭いエリアでは日本保守党も厳しかった。疑似的比例区でネットの影響も大きいのが東京。」


「彼を追いかけるユーチューバーたち。石丸氏の切り抜き。彼を写すと広告収入。視聴数が伸びるから。こういう非公式の動画が100万回近く再生されたりする。今まではネットでは票は取れないだったが、コロナの巣ごもりで年配の人が家で時間ができ、結構、Youtubeを見るようになっている。政治系チャンネルは50~60代が多い。」


「飯山あかりさんは中高年男性、今回の石丸さんは老若男女問わず。ふだん選挙に関係なさそうな人たちがフラットに。これは広がるなと。以前は小池に入れた無党派層が石丸に。蓮舫は基礎票ぐらいで、伸びも落ちもしていない。小池さんが290万票とったが、前回は360万票。その差が石丸に行った。」


「石丸は政策は全然言っていない。中身は無いなと皆さんが言う。演説もうまくない方だ。新しかったのは、『政策は続きはウェブで』と。確かに暑い中でまともな政策は聞かれない。信念や人柄を訴えた。」


「小池さんは30~40歳の子育て世代、教育無償化など、バラマキの成果。石丸はぶった切るイメージなので、支援をやめられては、と。ならば小池さんにという向きもあった。」


「選挙では細かいことではなく、姿勢をみせる。街頭は1万人を超えるまでに雪だるま。そこで何をしたか。自己紹介。初心者に対してハードルを下げて、演説を短めにする。10~15分。これが大政党だと、前触れ演説が長々と。石丸の場合、本人一人しかいない。さっとわかりやすいことを言って引き揚げる。一日13~4カ所ぐらい。ネットで蒔いた種をリアルで刈り込みに行ったのが、他のネット候補者とは違った点だった。」


「都知事選で今回の60%の投票率は結構大変なこと。自民も立民もダメ、維新は候補者すら立てられなかった。どの政党もグタグタ感。世代交代しろというメッセージ。既視感のある人はイヤ。自民党も総裁選に若手候補?立憲にも優秀な若手はたくさんいる。」


「しかし、上にいるのが院政を敷いている。野田さん、枝野さん、辻元さん。野田さんと志位さんがツーショットで。これは決定的に離れる。野党共闘は大誤算だった。石丸は参政党にもライバルになる。次はどういう手で出てくるか。」


「最初は、テレビ局も石丸をやる気はなかった。基本は小池・蓮舫。途中から急に取材が増えた。後半に向けて伸びて、都知事選後の政界のキーパーソンだろうということで露出が増えた。」


●民意を映じた選挙を…公選法を改正して昭和から卒業せよ

「あのポスター掲示板。選挙ハッキング?立花氏がおカネを稼がねばならず、実利としてはそう。大義としては、ポスターを創ることの無駄。昭和のタテカン。映像はビジョンで出せる。サイネージも。タッチパネルでマニフェストを出せる。QRコードで政見放送を観ることも技術的には可能。立花氏は大量擁立で選挙ポスターの無駄をアピールした。」


「いまの選挙は新規参入を妨害するためにわざと古いやり方を変えていない。党利党略で公職選挙法が時代と合わないまま放置されている。民意を反映するものにすべき。」


「石丸氏には5,000人以上のボランティアなど、いろんな人が選挙に参加して、気軽に政治や選挙を考えて世の中を考える。現在は参加障壁が高く、公選法は有職故実で、誰も分かっていない。選管に聞いても警察がと、警察に聞いても選管にと。それで突然、違反だと捕まえに来る。警察利権であり、法治国家としてわかりやすくすべきだ。」


「そもそも秘書やスタッフになる若者人口が減っているから、選挙活動が回らなくなっている。人手不足だ。機械化もできない。自民党も同じ。選挙をより参加しやすくしないと。公選法の抜本的改正をしないと、みんなが困る。」


「今回の都知事選は、選挙そのものを考える良い契機になった。憲法ではないのだから。公職選挙法の抜本改正を民主主義のために。いつまで昭和をやっているのか。有権者が今までの政治のやり方がおかしいと。今までの政党ではとらえきれなかった民意が出てきた。それを捉えていかないから答えが出てこない。」


「大きな既成政党にプレッシャーをかけるためにも、昭和20年代の公選法を変えるべき。憲法以上に時代に合わなくなっている。選挙が終わったあと、お礼回りができないのにネットではやっていいとか。おかしなことばかり。今回の都知事選で分かったことを今後につなげていきたいもの。」

 

…確かに、選挙期間中の戸別訪問を、家の中で現金のやり取りをするという理由で禁止したり、1万4千枚(都知事選の場合)ものポスター貼りや何十万枚ものチラシ証紙貼りに人員を動員できない候補者は不利になったり、法令違反の多額の報酬をウラで支払えない陣営は良いウグイス嬢を確保できなかったり、SNSはOKなのにメールはダメだったり…と、合理的な理由が伴わない規制が極めて多いというのが公選法です。


何をやっていいか悪いかの解釈もきちんと示されず、慣れない新参者の活動を委縮させている状況は、新規参入者が有権者に政策を伝える上でも妨げにもなっています。これは既得権益保護だけでなく、有権者が適切な政治意思を形成するために必要な知る権利をも侵害しているといえます。


このことも相まって、政治は硬直化し、国民の本質的なニーズに応えられなくなっている。都知事選が示したのは、日本の有権者が現在の政治の無能ぶりを本能的に感じ取っているということではないでしょうか。国民vs支配者の対立図式は、この点でも成り立っているのかもしれません。

閲覧数:53回

Comments


bottom of page