次に出てきたのは商品券!予算案を巡る石破政権の迷走に加え、国民意識との乖離が著しい本問題が政局絡みの展開に発展しそうな勢いです。国民意識からの乖離といえばもう一つ、全国に広がる財務省解体デモも無視できません。財務省庁舎前には千人の国民が…。
先日、久しぶりに財務省のOB仲間の会合に出ましたが、皆さん、なぜあんなに財務省解体論が盛り上がるのだろう?こんなに弱くなった官庁なのに、日本が先進国一の財政赤字の国なのは財務省が強くない証拠、もう税の論理も何もなくなってしまった…と。
私からは、この物価高の生活苦の中で、税収がこれだけ増えても全額を国債減額に回して国民に還元しないのは国民の感覚とズレている、理屈の問題を超えているなどと指摘したのですが…。石破氏の議員一人当たり10万円は、国民一人当たり2万円程度の減税にとどまった今回の「壁の引上げ」と比べても、どっち向いているんだ!となるでしょう。
これでは、カネにクリーン、「共感と納得」を標榜する石破氏も大きなイメージダウンか。早速、内閣支持率は3月15~16日の朝日の調査では26%、前月の40%から大幅下落です。
石破氏では参院選に勝てないと、すでに与党内からも突き上げが出始めていましたが、今回の商品券問題で、さすがにこれで石破政権は終わったと断言する論者も出てきました。永田町では、予算成立後の4月初めに石破内閣は退陣、新総裁のもとで、衆参同日選どころか、その前の4月か5月に解散総選挙になるとの見立てすら出ています。
野党としてもこれはチャンス、再修正予算案の成立と引き換えに内閣不信任案を可決か…。ところが、立憲民主党の野田代表は、直ちに石破降ろしはしないとしています。表向きは真相究明が先との理屈ですが、野党にとっては参院選で勝つ上で石破氏が総理であり続けてもらったほうが闘いやすいというのが本音でしょう。他方で自民党側でも、新総裁が選ばれても首班指名で例えば国民民主の玉木氏で野党がまとまれば政権交代になってしまう、さすがに政権は失いたくない、だから石破降ろしには至らないという見立ても…。
ジャーナリストの佐々木類氏によると、そもそも石破政権には、低空飛行状態でしぶとく存続する構造があるようです。いずれにしても、政策論よりも選挙対策で動く国会の姿を最近の永田町は存分に見せてくれています。議席よりも国民を向け!と言いたいところ。
さて、その国民から上がっている声に応え、本当に大型減税を実現するには、財源は国債以外にありませんから、財務省の立場に立つまでもなく、実際に国債を増やせるようにするための措置と、その国債を無害化するための仕組みが必要なのは事実でしょう。
本当の論点はここにあります。国の借金を原則禁じる財政法4条の改正に加え、日銀が大量の国債購入を続けねばならなくなりますが、日銀は昨年から国債購入額を減額していますし、日銀に代わる金融機関も、バーゼル3の新規制でかつてのような規模で国債を買えなくなる…その中での国債大量増発は金利を上げて、国民経済を苦しめることになる…。
ここに、政府の通貨発行権を活用して、日銀が保有する600兆円もの国債を政府発行デジタル円で償還しながら、これを市中に流通されることで国債残高が減る出口を創るのが松田プランです。ただ、いつも「分かりにくい」というお声を頂いているので、先日、少しでも親しんでいただけるよう、このデジタル円は要するにもう一つ、新たな電子マネーが生まれるものだとして、「マナPAY」というネーミングを街頭で発表しました。
ただ、これは政府が発行するので、私の名前よりも、専ら日本国民にとって便利な「ニッポンPAY」の方がいいかもしれません。あるいは「手取り増PAY」か「減税PAY」か…。
減税のほかにも、政府には積極財政のもと、国債増発で緊急に国家投資をしなければならない課題がたくさんあります。日本型AGIの開発、核攻撃を無力化する技術防衛体制と国防産業の育成、核融合など新エネルギー、食料自給体制、少子化対策、介護ロボット、老朽化したインフラの再生…国家には国家しかできないことがあるから国家があります。
この当然のことを忘れていたことが、日本の失われた30年に繋がったのではないでしょうか。行革とプライマリーバランスで国家を縛り、何もかも市場経済だ、民間だ、で突っ走った結果、マーケットを支配する外国勢に振り回され、国民経済が失われてしまった。
トランプ革命で「自国ファースト」の時代に入ったいま、海外に流れる日本の金融資産を国債で吸収して積極財政で取り組まねばならない、これまで置き去りになっている日本国内のテーマがたくさんあります。それに着手することが結果として、民間の活動領域を広げる枠組みづくりにもつながる。それが国民を生活苦から救う道になると思います。
こうした日本の未来への投資に加え、党利党略に明け暮れる国会にはもう一つ、そこから目を覚まして取り組むべきテーマがあります。それは、日本が迎えている戦後最大の安全保障上の危機にどう対応するか。いま、ウクライナ停戦を巡ってトランプ氏とプーチン氏とが駆け引きを展開していますが、もはや日本には、「武力による現状変更は許さない」とか「核廃絶」といったテーゼを理想論としていったん切り捨てる覚悟が問われています。
そこには、プーチン氏のしたたかな戦略で強大化するロシアやBRICSがあり、核の能力を更に高める中国や北朝鮮もあります。日本が直面するのは、G7体制や米国による拡大抑止の建前に自国の安全を委ねられなくなった厳しい現実。日本はむしろ、トランプ氏と同様、ロシアとの関係を改善し、これをカードとして中国にどう対抗していくかこそを考えるべきでしょう。そして、自国の核保有をどうするかの議論も避けられなくなっています。
宇山卓栄氏が先日、私との対談で、米国には事後承認ということで、日本が独自に一気呵成で核武装を進めるべきだと提案しました。これについてどう考えるべきか、今回は以下、日本の政局については前記の佐々木類氏が、核の問題についてはこの宇山氏が、それぞれ語った内容を、今後の議論の参考のため、ご紹介いたします。
●石破降ろしが起きにくい構造、今年の参院選は自民党が大敗のジンクス…佐々木類氏
まず、日本の政局ですが、佐々木氏によると、「先般の日米首脳会談は決して成功だったわけではない。外務省などのチームジャパンが首をかけて。石破氏は短期で怒りっぽい。小渕さんもそうだったが。石破構文、たばこが出てこないと怒る。安倍さんはほっといてもうまくやったが。ワシントンの日本大使館は大変だったろう。-10が-7になっただけ。」
「メディアも突っ込まない。政府専用機で取り込まれる。ウマが合う…(笑)トランプ氏からみると、なんだあれは、とってつけたお世辞、ビジネスマンだから。ドナルドとゲル?」
「予算成立花道論がある。石破さんに参院選やらせていいのか、と。ただ、大義名分が要る。その点、石破さんは低空飛行、なかなか落ちない。野党も石破政権と参院選を闘う方が有利。都議選は参院選を決する。相関関係がかなりある。昨年も都議補選で自民党が大負けしたあとの総選挙だった。」
「ただ、衆院解散は見えてこない。石破さんにそんなパワーあるのか。野田さんと石破さんは同類。どじょうとうなぎ。大連立?ただ、今は見えない。高市さんが自民割ってというエネルギーもない。」
「参院選については、自民党には9年おきに敗北の法則。1980年大平さん、1989年はリクルート事件とマドンナ旋風で大敗、1998年橋本内閣が恒久減税を口走って大敗、直前まで自民大勝の予想だったが。国民を騙そうとしていると。ちょっとしたことで変わる。そして総理退陣へ。」
「参院選は政権選択選挙である衆院選とは異なると言われるが、国民がお灸をすえすぎて大やけどすることがよくある。危ない。2007年は安倍さんが敗けて2か月後に退陣。2016年は例外。安倍さんが絶好調。そして今年2025年、どんぴしゃりで石破さん。ジンクス。」
「衆参同日選?ダブルは過去2回。いずれも自民の大勝。ピンチの時はダブルはあるが、石破さんにそれだけのエネルギーがあるか?臭いを嗅いだだけで石破降ろしに。安倍派が総選挙で落ちて、反石破勢力が少なくなったから、石破降ろしが簡単にはおきない。高市勢力は動きにくい。野党も闘いやすい石破氏には不信任案を出しにくい。皆で支えている。」
「もう一つ大きな勢力が支えている。マスコミだ。俺たちが石破さんを支えていると本音。安倍的なものを警戒するのがマスコミだから。」
「参院選の特定枠も見直した方がいい。特定枠を中国グループが買収しようという動き。1年間10億円で売ってくれないかと。外国人参政権よりも直接、送り込める。中央政界が危ない。党員獲得のノルマがかかっている党員名簿も、確認されていない。総裁選も公選法に基づいていない。自民党と選挙制度自体が狙われている。」
「サイレントインベージョンというよりも、音を立てて見える形で、あらゆる方面から多重的に来ている。トランプさん的な人が必要。そういう国会議員が選ばれるためには、国民が中国からの侵略について事実をまず知る必要。」
…そのための役割は私が引き続き果たしていきたいと思います。なお、今回の商品券問題を受けて、この佐々木氏も最近では、新総裁の選出、そして早期の衆院解散か衆参同日選あり得べしへと、見方を変えているようです。やはり石破政権の命脈は尽きたか…。
●ウクライナ戦争で強大化したロシア&BRICSと不安定化するイラン&中東
しかし、日本の命脈を尽かせるわけにはいきません。メディアも政界も国民も、日本はウクライナ戦争を経て激変している世界の構造についてリアリズムに立ち、国家の存続に向けた真剣な議論を始めねばならない局面に入っていると思います。宇山氏によれば…、
「北朝鮮に実戦経験を積ませるためにロシアはウ戦争に北朝鮮を参加させている。ロシアが追い詰められているからではない。北朝鮮がロシアの支援を得られる体制になっていることでいちばん困るのは米国と日本。ウ停戦交渉の上で北朝鮮をロシアは外交カードにできる。北朝鮮は既にICBMに核弾頭を乗せて米国に撃つことができる体制を整えている。」
「韓国では核武装論。尹氏がああなっても、世論は止まらない。4分の3が賛成。日本の隣の二国が核保有国になった時に、日本はどう均衡を保つのか。NPT体制はもはや無理。」
「2019年のトランプ-金正恩会談では、トランプは席を蹴った。この後の5年間で北は核の技術を高めた。猶予を与えたのは日本にとって痛手だった。長距離ミサイルの放棄でトランプとディールする可能性。米国にとって脅威はなくなる。中距離は関係ない形で勝手に合意されると、日本にとっては最悪の状態に。このことを日本は視野に置くべき。」
「ロシアは日本の隣国。ウラジオストックに強力な極東軍。戦略核をハバロフスクからウラジオストックに配備。即応体制になっている。中国も核ミサイルを日本向けに。」
「中東では、イラン大統領とプーチンの会談が1月に行われた。包括的パートナーシップでロシアがイランに技術協力。これをいやがるのは米国とイスラエル。ウ停戦では、こちらもロシアはカードに。イランは事実上の核武装国家。これをロシアが承認することは、北朝鮮に対してと同様、あり得る。」
「イランでは国民生活は経済制裁で劣悪。インフレ高進。イスラエルとの闘いどころでないとの世論。そこで新大統領は対話路線と思いきや、シリアでアサド政権が崩壊、ヒズボラは弱体化、大人の対応が裏目に出た。革命防衛隊が強硬に。強硬論を抑えられない。さらにトランプはイランに強硬姿勢。互いにヒートアップ。」
「中東は不安定化する。イランは中ロに接近する。石油を買ってくれる国々だからだ。世界のBRICSとの二極分化がさらに進む。イランが核武装を既成事実化すれば、サウジが黙っていない。自分たちにも核武装をと米国に。原子力の民生利用から始める。そうなると、UAEもイラン牽制のために。小国こそが、と。トルコも野心。原発発電所が稼働。ロシアのロスアトム社が請け負っている。トルコはイスラエルの核武装に対抗すると明言。「こうして核武装国家が広がっていく流れにある。」
●日本の核武装をどう考えるか…宇山卓栄氏の提案
「問題は日本に迫られている。石破政権は昨年10月に米国と拡大抑止に関するガイドラインを交わしたが、米国は核を含む戦力で日本を守ると書き込まれている。ただ、それがどうした?中国が台湾などで有事を起こしてそこに日本が介入すると、核ミサイルを日本に飛ばすと中国は言っている。そのときに米国がやり返してくれるか?」
「米国は中国に絶対にミサイルを撃ち込まない。中国の300発以上のICBMが米国に向いている。ロサンゼルスもサンフランシスコもワシントンもパーに。自分たちの生存を危機に?するはずがない。核の傘は機能しない。どの国も自国の利益が最優先。」
「結局日本は?自衛のための核武装しか方法がない。撃ち返すぞと。我々自身が核のボタンを握らないと抑止力にならない。そんなことはできないと専門家は言うが、そのように考えるように仕向けられている。すぐにでもできること。政権が覚悟を持てば。」
「憲法上の問題もない。自衛のための手段として憲法は核保有を禁じていないとの政府見解が出ている。トランプは一次政権の時も日本の核保有を容認する話をしていた。ただ、国務省が認めない。だから、日本は米国に秘匿して一気呵成に。事後承認でいい。インドもイスラエルもそう。周りを敵対国に囲まれているのは日本も同じ。」
「米国が西太平洋をカバーするためには日本のパワーが必要。米国のためでもある。米国に防衛面で何もかも従属することから脱却するのが政治の責任。」
…この宇山氏の核武装の提言をどうお考えでしょうか。実際には、日本国内に核ミサイルを配備するのではなく、遠い海底深く、いざというときに潜水艦から発射するSLBMが選択として考えられるかもしれません。
核武装以外の選択肢としては、外国からの核攻撃を無力化する技術の開発も議論されています。イスラエルの「アイアンドーム」のようなものを最先端の科学技術でさらにバージョンアップするイメージかもしれません。
ただ、科学技術は日進月歩で進化しますから、これを打ち破る技術進歩とのいたちごっこになるかもしれません。やはり守りに徹するのではなく、結局は「やられたらやりかえす」の原点は無視できないか…。
いずれにしても、実際に核武装をするかどうかは別として、日本にはこれについての真剣な議論が迫られていることだけは事実でしょう。政局どころではないかもしれません。
Comments