少数与党のもと、修正に次ぐ修正で迷走を続けた政府予算も3月31日に年度内成立し、新年度に入りました。では、これから国会はどんな展開になるのか。3月末までに結論を出すことが与野党で目指された企業団体献金を巡る攻防は結論が出せず、これも一つの焦点ですが、価値観の対立で結論が簡単に出ない選択的夫婦別姓の審議も気になります。
では政局は…?6月には国政選挙並みに重要とされる都議選、そして7月には参院選が予定されており、商品券問題で支持率をさらに下げた石破内閣をこのまま死に体で「生かさず殺さず」を維持した方が選挙で有利と野党は考えるでしょう。少数与党のもとでも内閣不信任案には至らず、与党内でも石破降ろしのエネルギーを欠いたまま、政局も衆院解散も全ては参院選の結果が決める、その後に先送りという見方が強まっているようです。
他方で、最近の世界的な話題といえば、ついにトランプ大統領による一律25%追加関税措置が発動されたことでしょう。早速、トランプ政権をめぐる不透明感から株価が下がり、世界経済における米国一強が崩れるなど、各国による報復関税を待つまでもなく米国へのブーメラン効果が起きているようです。第一次政権のときにはドル高が関税による米国物価上昇を抑止しましたが、そのドル高も起きていません。果たしてどうなるのか…。
トランプ政権としては、高関税による15兆円もの財政収入を減税財源に使えるし、関税を回避したいなら米国内に製造拠点を移し、米国で雇用と成長を生めばよい、短期的にはマイナスでも中長期的にはプラスになるということでしょうが、これでは正に、他国を犠牲にしての「アメリカファースト」!次に出てくる「相互関税」を前に、これを回避すべくインドなどの高関税国では自国の関税を引き下げる動きも出ていますから、他国は自国の産業保護もできなくなる…。公約通りの高関税、これも民主主義の結果ではあります。
当然、国内で裾野を含め数百万人の雇用を生んでいるとされる自動車産業を中心に日本経済にも打撃、GDPを0・5%引き下げるとの試算も出ています。このような中でもう一つ気になるのは石破総理の国会答弁でした。トランプ大統領の関税をめぐる発言について「何を言っているかよくわからない、もう論理として非常に通りにくい。」と。
これは、「米国はこれだけ収奪されてきた。関税を取って、それで雇用を取り戻すんだ、生産を取り戻すんだ。」とのトランプ発言を巡るもので、確かに、素直に受け取れない内容ではあっても、一応、石破氏は米国の同盟国たる日本の総理です。早速、トランプ側近がこれを問題視する動きを示したようです。そもそも2月の日米首脳会談で151兆円の対米投資などを差し出したものの日本は例外扱いには至らず、この会談自体が失敗でした。
あの会談で、終了後そそくさと会場を離れるなどのトランプ氏の様子からも、同氏が石破氏に信頼を置いていないのは明らかでした。石破氏が安倍氏のような同志的な関係をトランプ氏といかに築くかが日本の国益上、最重要の課題となっている中で、発言には気をつけるべきでしょう。では、同志的な関係とは何か…それはトランプ氏が闘う敵を自らも共通の敵として闘う姿勢を示すことで築かれるはずです。その敵とは、選挙で選ばれていないにも関わらず国家や世界を動かす官僚組織やその背後の利権集団のことを指すDS…。
トランプ氏が建国以来とされる「革命」に取り組んでいるのもDS潰し。西村幸祐氏は、「もし、晋三が日本の総理で自分が米国の大統領だったら」日米戦争は起きなかったとトランプ氏が昭恵夫人に語ったことを想起すべきだとしています。日本を真珠湾攻撃へと追い込んだのが当時のDSだったという認識がトランプ氏にはあるからである…と。
DSとの闘いということでいえば、それは日本の財政金融政策も同じかもしれません。迷走する石破総理に対して参院選を手ぐすねを引いて待っている野党が掲げているのが減税。先の総選挙で「手取りを増やす」で躍進した国民民主党を始めとするいくつかの減税政党のみならず、10%への消費税率引上げを決めた総理だった野田氏を代表に戴く立憲民主党の中においてすら、消費税率引下げの議論が広がっているようです。
選挙で勝つために野党が税金などの問題点を指摘して、国民が喜ぶ減税を掲げるのは簡単ですが、有権者はそれが現実にできる仕組みを持っている政党なのかを見極めてから選ばないと、またウソつき政治が繰り返されるだけでしょう。参政党は、手取りを更に増やす(国民民主)、よりも更に手取りを増やす(現在約45%の国民負担率を35%に引き下げてキャップをはめる)を掲げていますが、実は、それはDSとの闘いでもあります。
その相手は財務省だけではありません。どんなに積極財政派の政治家が財務大臣になっても、あるいは財務省を解体しても、突破できない「国債の壁」を突破しなければ、大型の減税は実現できません。それは日銀の壁であり、金融マーケットの壁。要するに選挙で選ばれていないDSであり、これを突破するプランが「松田プラン」です。
国民負担率を今よりも10ポイント下げると税金と社会保険料で50兆円負担が減り、これに国にやるべきことをやらせる積極財政を組み合わせると、国債発行を巨額に増やさねばなりませんが、今ある壁のもとではそれだけの国債の買い手がいません。国債購入額を減らし始めた日銀が国債購入を倍増しても、その国債が国民が使える電子マネーに転換するなら、国債の壁もマーケットの壁も突破されます。他の減税政党にはないプランです。
あけだけ積極財政を掲げて7年8か月も政権の座にいながら、二度の消費税率引上げに追い込まれ、アベノミクスの第二の矢の財政出動を十分に実現できなかった安倍元総理が闘っていたのも、こうしたDSだったとみてよいでしょう。
今回は以下、DSとの闘いで戦後80年の世界秩序の転換をめざすトランプ大統領の本質と日米関係について、前記の西村氏が私との対談で語った内容をご紹介いたします。
●トランプ氏が目指すのは戦後80年の世界秩序の転換…その意味を理解しないメディア
西村幸祐との対談は、トランプ大統領が再誕生したことの歴史的意義を大局的観点から語ることから始まりました。同氏によると…、
「未だやり始めたばかりだが、普通なら4年間でやることを2か月でやっている。議会での施政方針演説は自画自賛の演説だったが、実際にやっているので事実を述べただけ。第二次大戦後80年経った。その間にできた世界秩序をトランプは崩そうとしている。」
「ブレトンウッズ体制は大戦中に米国が作った。その前の基軸通貨はポンド、それをドルにした。あの戦争を利用して米国民主党とDSがやった。その制度疲労が出てきている。ブロックチェーンやデジタル通貨にどう関わるかはまだみえていないが、ドルの基軸通貨は守るとトランプは言っており、これまでとは違う方法で守る。そういうことを我々が理解しないと対応がちぐはぐになる。日本の報道にそれを見つめようとする姿勢がない。」
「USAIDについても、対外援助カット、米国第一だという報道しかない。無駄なカネを米国のために使おうとして、AIの人材をリクルートしてマスクがやっている。そのモデルには日本の行政改革にも使えるノウハウがあろう。AIで人類社会全体が転換点に。このことに中共も気づいている。ディープシークは21世紀の覇権争いのファクターだ。」
「細かい点を些末に論じても何も分からない。近代以降の歴史を総点検する意味でも、トランプが目指しているものは根が深い。かなり本質的なものを見ている。」
「かつて2015年頃にトランプは、ショーペンハウエルの言葉を引用。『優れた人は的に矢を射ることができる、しかし天才は見えない的に矢を射る』と。知識や造詣がある。」
「日本は核武装をと、2015年に発言。最近、『日本が攻撃されれば米国は日本を守るのに、米国が攻撃されても日本は守らない、誰がこんなディールをやったのか』とトランプは発言した。やったのは彼の敵、DSだった。84年前の真珠湾攻撃もそうだ。」
「安倍昭恵さんにトランプは、『晋三と私が日米首脳だったら戦争は起きなかった』と語った。深い言葉だ。第二次大戦への米国参戦のために米国が日本に戦争を仕掛けたという歴史事実について、トランプは知っているのではないか。その言葉の意味を解釈した日本の専門家は誰もいない。第二次大戦を起こしたのもDS。日本の戦前の敵は今も同じ。」
「ルーズベルト政権にはコミンテルンのスパイが100人、これがGHQにも関わっていた。太平洋協議会には日本の共産主義者がたくさん行っていた。やろうとしたのは、米国のリベラル拡張主義によるアジアの民主化。日本が邪魔になった。中国という巨大な市場、当時も人口3~4億人、そこで日本に戦争を仕掛けた。それとは自分も安倍氏も違うと。」
「日米安保が不平等と言っているが、米英間も対立しつつも、同志的な関係に。けん制し合いながら。英国の特別性は、米国にとって、大西洋を挟んでユーラシア大陸の西側にあること。太平洋を挟んでユーラシアの東側の島国は日本と台湾。日本が英国の役割を果たせるようになれば、片務的でなく公平な日米安保に。それで世界秩序が安定。」
「その理想に向かうために、日米安保がこんなのでいいのかと言った。しかし、今の自民党からあの言葉に対するレスポンスがない。日本は陳腐な言い訳だけ。『ワー大変だと思ってはいけない』と石破氏。中学生ではないでしょう。本当に安全保障の専門家?その場をやり過ごす言葉しか彼にはない。」
「まずは自分で守る体制を整えよと、日本には最高のチャンス。欧州にも自立しろと。トランプ氏はEUを潰したいのでは…。集団安保体制で30年間秩序を保ってきた。NATOとEUがなくなって、欧州軍構想に。バンス副大統領が『欧州には自由がない』とした。酷い全体主義に。言論弾圧。これをEUがやっている。ソ連に対抗してNATOができた。NATO存立の意味がもうない。しかし、NATOは東に延びていた。プーチンには圧力。トランプは、これからは米国との個別の関係で安全保障を考えよと言っている。」
●欧州での潮流変化とAfDの台頭
「ドイツの総選挙でAfDが第二党に。これはトランプの動きと重なっている。歴史の流れ。フランスも国民連合、英国も支持率第一位がファラージの独立党。オランダ、デンマーク、ポーランドも。反タボス連盟で各国が。イタリアはもうそうなっている。」
「CDUはAfDと組まないことが生命線。ナチだとしてAfDを排除。ファイアーウォール。既存政党がAfDと提携せず、遮断する。投票で二位になっている政党の言うことを聞き入れないと政権運営はできないはず。フランスもそうなっている。マクロンが極左と協力して国民連合を落としたが、結果として機能していない。」
「これは石破政権と似ている。高市氏が党員票で一位なのに排除。メディアを利用して。裏金問題も、ちょろまかして私利私欲に使ったのではなく、政治活動に使った。メディアもそんなことは分かっているのに。AfDと同じ。レッテル貼りで保守系議員を落とす。フランスやドイツがそんなことをしているから、欧州は苦境を脱することができない。」
●USAIDとLGBTQとDEI
「パリ五輪の開会式は酷かったが、あれこそUSAIDのカネが流れた?LGBTQとDEI(多様性、平等、包摂)がコンセプトだった。調べてほしい。IOC自体が怪しい。スポーツマフィアのトップにカネが行っているのでは?日本のメディアにも行っていると思う。日本のメディアも暴かれていくべき。利権や株主の構造など。」
「参政党も既存の政党にしてみたら怖いのだろう。自分たちが知らないことを言っているから。ドイツにはAfD(ドイツのための選択肢)が生まれて第二党だが、日本には『日本のための選択肢』がまだない、参政党がそうなってほしい。」
●日本の価値観と歴史的立ち位置をいまこそ明確化せよ
「昭和18年に出た本、『世界史的立場と日本』。ベストセラーになった。当時の日本人の知的レベルは高かった。今こそ、あの本を見直すべきだ。トランプの片務姓批判に向き合う手掛かりになる。哲学者や歴史学者たちが知恵を絞って語ったことは80年経っても生きているはず。日本の立場を明確に出さねばならない時だ。」
「日本が先頭に立つ。インド太平洋は安倍さんが創って、世界の通用語に。これを担うのは4か国、しかし今の日本はそれを担えない。集団的自衛権は国連憲章51条の権利。しかし内閣法制局が、『権利はあるが行使できない』と。安倍氏がこじ開けて安保法制に。あれがあるから今も南シナ海での共同訓練ができている。」
…故・安倍晋三氏とトランプ大統領が共闘して闘った敵と闘う姿勢を石破総理が示せないのであれば、これに代わる政治勢力が日本の政界で育つことが急務です。すでに「日本のための選択肢」として活動を展開している参政党が参院選でどこまで議席を伸ばせるか、同党から全国比例の公認候補として立つ予定の私も全力を挙げて活動する日々です。
Comments