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参院選は減税合戦か?蔓延する消費税への誤解、されど悪税~活路を拓くのは政府の通貨発行権の活用~

  • 執筆者の写真: 松田学
    松田学
  • 29 分前
  • 読了時間: 7分

このままでは選挙に勝てない…依然として不人気な石破総理に対する「降ろし」ができないまま参院選に突入しそうな状況を前に、公明党のみならず、自民党内にも「減税」を求める声が上がり始めました。物価高とトランプ関税の影響が懸念される中で、当初、自民党内で浮上した給付金は「選挙目当てのバラマキ」と評判はよくないようです。そうした結果が出た世論調査が示しているのは、国民の大半が消費減税を求めているということ。


あの消費税率10%への引上げを総理大臣として決めた野田氏を代表とする立憲民主党内にも、食料品の消費税率引下げを求める声が拡大…財政規律を身上とする石破氏も野田氏も、党内からの減税要求の突き上げには頭を悩ましているのではないでしょうか。もしかすると参院選は「減税合戦」?ポピュリズムの蔓延を心配する識者も多いようです。


そもそもこの消費税、大変が評判が悪く、これに乗じて一部の野党やネットでの著名論者たちが国民に誤解を与えるセンセーショナルなメッセージを浸透させています。例えば、消費税は法人税減税に回っている、輸出還付金で儲かる経団連が増税を求めている…など。


この見方は、トランプ政権が付加価値税そのものを非関税障壁としていることで勢いを増しています。ただ、付加価値税がないという意味で米国は例外的な国。EUもそうですが、世界の多くの国に導入されている付加価値税は、どの国でも、物品の輸出の際に、仕向け先の国でその国の税率で間接税を課せるよう、国境で、輸出企業の仕入れ先が負担した消費税を還付して税金がかかっていない状態にする還付制度がルールとして営まれています。


仕入れ先は自らが納めた消費税分を輸出企業への納入価格に上乗せしていますから、その分、コスト高になっている部分を元に戻すだけで、輸出企業の儲けになるものではありません。ただ、多くは下請け企業である仕入れ先企業が消費税分を価格に転嫁できず、自らの負担として飲み込んでいるケースがあるとすれば、その部分は輸出企業に有利かもしれません。しかし、これは制度として大企業を優遇した結果ではありません。


また、消費税収が法人税減税になど回りようがないことは、法律でこれが社会保障給付に充てられることが明記されていることからも明らか。現実に、2023年度(予算ベース)では、社会保障給付134兆円(年金60兆円、医療42兆円、介護14兆円、子ども子育て14兆円)に対し、その本来の財源である社会保険料は78兆円に過ぎず、残りの53兆円を国と自治体が補助しており、その53兆円の財源に国と地方合わせた消費税収30兆円のほぼ全額が充てられています。それでも20兆円以上不足している部分が赤字国債などです。


社会保障は一種の保険システムであり、保険料によって賄われるのが原則ですが、少子化高齢化で保険料を負担する現役世代の比率が大きく低下した結果、民間の保険会社ならとうに破綻している状況です。そうならないために消費税が支えていて、それでも足りない。とても法人税減税に回る余裕などありません。このように、消費税は社会保障に使われていないという主張はウソですが、結構、このデマを信じている国民も多いようです。


しかし、消費税そのものは決して良い税制ではなく、廃止論が横行するのには十分な理由があります。このことも決して無視できないでしょう。


●されど、消費税は悪税である、されど、歴代政権が公約に反して増税してきた訳

消費税が悪税とされる理由はあります。前述のように、中小零細業者は価格に転嫁できないケースが多く、これでは消費者が負担するのではなく、事業者に対する直接税。しかも、固定費は税額控除できませんから正規雇用の人件費にも課税され、結果として非正規雇用が増えたことが日本の平均賃金が上がらなかった原因だという面はあります。


また、最近導入されたインボイスは事業者に膨大な事務負担をかけるだけでなく、従来は非課税業者だった方も、取引から排除されよう、従来の価格に消費税分を上乗せできるわけでもないのに課税事業者を選択せざるを得ないことも中小零細いじめでしょう。こんなインボイスなくして適正公平な課税ができないなら、その税制自体が悪税…。国民にとっても多くは源泉徴収の所得税より、買い物のたびに税痛感がある消費税は当然、不人気。


だから、消費税反対は政治的スローガンになりやすいのですが、過去を振り返ってみると、これは全て政権与党に裏切られ、消費増税が続いてきました。消費税導入時に「ダメなものはダメ」とマドンナ旋風を起こしたのは社会党の土井たかこ党首。その社会党が輩出した自社さ政権の村山富市総理のもとで、3%から5%の税率引上げが決定されました。


民主党が政権を奪取した際には、無駄の削減と資産売却で17兆円を捻出すると公約し、消費税には一言も触れなかったことに国民は期待しましたが、その民主党の野田総理の時に現在の10%への引上げが三党合意で決まりました。そして、積極財政の急先鋒だった安倍氏の政権のもとで、同氏の本意ではなかったと思いますが、2度にわたる10%への税率引上げがなされました。野党の時の主張とは逆の消費増税が繰り返されてきたわけです。


それは実際に政権をとってみると、前述のような社会保障財源という現実に直面するからでしょう。ですから、消費減税、ましてや消費税廃止!といったスローガンに有権者は簡単に乗せられてはいけません。「れいわ」などの政党は消費税廃止を謳っていますが、それによる税収減30兆円の穴を、全体として国民負担を増やさずに埋めるには、国債の大規模な増発にしか道はありません。確かに、日本の対外純資産残高は470兆円と世界一です。


マクロ的には国債増発の余力は十分ですが、国債はそもそも金利付きの金融商品。買ってくれる人がそれだけいなければ国債価格が下落して金利が上昇するだけでは済まないでしょう。あのトランプ大統領ですら、国債マーケットからの逆襲により、相互関税の強権発動の90日停止に追い込まれました。ですから、すでに国債購入額を減らし始めた日銀に、国債大量購入へと方針を転じてもらわねばなりませんが、日銀もこれまでの国債購入で膨らみ過ぎたバランスシートの縮小が悲願という状況になっています。


●減税と積極財政のカギは政府の通貨発行権の活用…これは世界の流れでもある

結局、政府の通貨発行権を活用して日銀保有国債を政府通貨で償還するといった出口を創り、日銀のバランスシートの無闇な拡大を抑止する方策を講じなければ、金融市場も日銀も十分な国債を買わないという壁にぶつかり、大規模な減税は不可能ということになります。この出口戦略である「松田プラン」こそが減税や積極財政を実現するカギを握っており、海外に流れ米国を豊かにしてきた日本マネーを、国債増発で日本国民の懐と日本の将来への投資のために取り戻すためには、本プランが不可欠ということになります。


「政府の赤字(債務)は民間の黒字(資産)」とも言われますが、現実には、それは国債の殆どを保有する金融部門の資産に過ぎません。国民には銀行からわずかな預金金利が支払われるだけですし、たとえ国債を持っても、それで買い物ができるわけではありません。


新たなデジタル円を政府が発行し、日銀保有の国債を償還し、これを手にした日銀が、銀行を通じて、民間からの両替需要に応じてこのデジタル円を民間に供給し、法定通貨たる「政府発行電子マネー」として流通させれば、この時、政府の赤字は国民が使用できるマネーとして、真に「国民の資産」となります。両替による取得(チャージ)なので、それ自体、通貨の総量を増やすわけでなく、直ちにインフレを招くことにもなりません。


あとは、これによってバランスシートを縮小できる道筋がついた日銀が再び国債の大量購入に踏み切れるようになることで、国債マーケットの壁が克服され、財政金融政策の自由度が大幅に増した政策当局が、過度なインフレを招かない範囲で思い切った減税と積極財政に転じることで、国内に強力なマネー循環を興すだけのことです。


このプラン、私が唱えだした当初は、理解が難しいなどと言われたものですが、最近では、金融やITや会計に通じた方々を中心に理解の輪が広がってきています。日銀も含め欧米など多くの国々の中央銀行がブロックチェーンを基盤とする中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)の研究を進めており(すでに中国などでは導入済み)、デジタル法定通貨の基盤も整いつつあります。


ちなみに米国ではトランプ大統領が、このCBDCを中央銀行(FRB)が発行することを禁じたそうです。トランプ氏と昵懇の仲であるアルゼンチンのミレイ大統領は、中央銀行ではなく政府が通貨を発行すると、同氏に述べたという話もあります。中央銀行ではなく、デジタル通貨を政府が発行することがあってもおかしくない動きが出てきています。


来たる参院選に向けて、日本の再興のために不可欠なこのプランの意義をさらに訴え続けていく所存です。


 
 
 

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