あれだけ権勢を誇った二階俊博・元幹事長が次回衆院選不出馬を表明しましたが、自民党政治の一つの終わりの象徴かもしれません。二階氏が率いてきた志帥会は、私がかつて自民党公認の可否を巡って接触した派閥でしたが、田中角栄時代からの利権とカネの政治を最後まで体現した集団のようなイメージがありました。聞くところによると、公認には「金一封」が必要だったとか…。オモテから要求はしませんが、自民党政治では常識のようです。それを配布できるスポンサーがつかないと、能力や志やキャリアでは難しい世界。
国会議員という特定の職業集団の維持が自己目的化し、政権維持のために必要な票とカネ集めのためには何でもあり、必然的に利権と結びつく。国や国民のために何をするかは二の次。こんにちの政治とカネの問題の根本にあるのはこうした与党の体質だといえます。
公党たるもの、国政において日本のリーダーにふさわしい人材を登用し、育てていくことも大事な使命のはずですが、それより優先するのは目先の集票。これは広島の事例でしたが、次世代の党のときの私の同僚衆議院議員だった某氏の場合、国会では安全保障では自民党からも信頼される論客だったにも関わらず、地元で順番待ちの県議などを優先するため、公認審査の討論会への出席も断られたとか。議論では彼が勝ってしまうからです。自民党でいちばん偉いのは地元に根付いて集票力のある市会議員、次が県会議員ということで、国会議員は一番下だとか。これでは国政政党というよりも地方利害のための政党?
埼玉では、住民に恐怖を与えているクルド人問題にまともに向き合おうとしない自民党県連は闇だらけと言われますし、二階氏のおひざ元の和歌山では露出度の高い女性出演の乱痴気?パーティー、どうも、その趣旨は「多様性」尊重だったとか…岸田総理の言う多様性って、そういう意味だったのでしょうか?その岸田氏は、日本があたかも差別に満ちた国であるかのような、日本の国柄を侮辱する発言。自民党は本当に保守政党なのか…。
自民党の腐敗ぶりの事例は挙げだしたらキリがありませんが、長らく政権与党に座にあり、野党も「多弱」、何事も国民は忘れやすい…そこには驕りがあるのでしょう。ここで政治に絶望し、投票に行っても何も変わらないとして政治をあきらめてしまっては、国民の敗けです。今の政治の腐敗には、有権者の側でも考えるべき点が多々あると思います。
そもそも真っ当な普通の国民が選挙などに出たいとは思わないような現在の選挙の仕組みのもとで、特に小選挙区では有権者の側に有為な人材を選ぶ選択肢が限られているという問題もありますが、その中で、私の経験では、国政選挙の帰趨を決めるのはテレビなどのマスコミ報道が創り出す各党に対するイメージだといえます。
そのメディアを巧みに使う天才が小池百合子氏。都知事選で公約した電柱ゼロを始めとする「7つのゼロ」を一つも達成していませんが、なぜか都民の人気が高いことが彼女の他の追随を許さない強力な政治資源になっています。先日の八王子市長選では、裏金問題による逆風をはねのけて自公推薦の候補が当選したのは、彼女が応援に入ったこと…。
4月28日に投開票の3つの衆院補選の一つ、東京15区では自民党が不戦敗の危機に直面する中で、小池氏が都民ファーストの候補者を立てて自公が推薦する形をとることで、自民党はここでの一敗は免れるという話が聞こえてきます。これで岸田政権を救ってさらに自民党に恩を売れば、7月の都議選で自公が対立候補を立てなくなる、場合によっては、次の総選挙で国会議員に復帰し、自民党入りで総理を狙う…これが小池氏の計算だとか…。
これを悪夢だとおっしゃる方が私の周囲にもいますが、悪夢かどうかはさておき、某報道局元幹部の私の大学の同期が、小池氏のことを「一見とても良い人に見える、しかし、言うことがコロコロ変わるし、自分が言ったことと違うことをしても、ウソを言っても、それを自覚せず、自分は正しいことをしていると思い込んでいる。自分に共感してくれそうな人たちを見つける天才的な能力がある。」…これは一つの人間類型だそうです。
少なくとも、私たち有権者自身が候補者を選ぶ眼力をもっと養わねば、日本の政治は変わらないでしょう。東京15区には参政党も公認候補を出すこととなりました。これについては、既に、日本の国柄を大切にし、LGBT法にも反対した日本保守党が、小池氏のカイロ大学の学歴詐称の実態を暴露しているイスラム思想研究者の飯山あかり氏を立てている中で、真の保守層の票を割ってしまうとの批判もあります。ただ、普通の主婦でも選挙に出られる仕組みを営む参政党がこの注目の選挙で広く国民の知るところとなれば、利権や政治の垢とは無関係の、一般国民の志を軸とする政治への一歩となるのではと思います。
長らく自民党の職員を務めて歴代政権に仕えた、現在は政治評論家の田村重信氏は、「政治家の在り方として、法律に違反しなければいいというのではなく、それ以前のモラルというものがある。リーダーなのだから、ノブレス・オブリージュだ。みんなの模範となる立ち居振る舞い、人格が問われる。」とし、「福沢諭吉は、門閥、縁故、世襲をやめないといけない、自由と平等で、日本も実力でリーダーになるべしとして、慶應大学を作った。今度お札になる渋沢栄一も同じ考えだ。いまの自民党は世襲で能力のない人がリーダーになり、特権階級になっている。謙虚さがない。二世三世だから。能力ある人がちゃんと選ばれているのか。新札を契機に志高い人が政治を担う国政を作ることが大事。そして自民党は結党の精神の憲法を。米国におんぶにだっこではいけない。」と述べています。
自民党には、自主憲法の制定で独立自尊の国家を創るとの結党の理念に立ち返り、真の保守政党として再生してほしいものです。今回は、保守の志高き二人の自民党論客、一人は現衆議院議員の長島昭久氏、もう一人は前衆議院議員の長尾たかし氏とそれぞれ行った対談の内容をご紹介します。テーマは、安全保障問題として、セキュリティクリアランス(SC)、防衛装備品の輸出、サイバーセキュリティ(CS)、そして自民党と公明党との関係、憲法改正、トランプ再選後の日本外交の在り方でした。
●SC:セキュリティクリアランス
かつての安保法制や一昨年末の安保三文書に続く日本の安全保障で残された課題が、➀(SC)セキュリティクリアランス、➁防衛装備品の輸出、③(CS)サイバーセキュリティ法制の3つであるとされます。過日、長島議員はこうした観点から予算委員会で質疑に立ち、対談ではこれらがテーマとなりましたが、共通しているのは、憲法で保障された様々な人権も、これも憲法に定められているように、国家安全保障という「公共の福祉」による制約を受けるという点。海外では当たり前ですが、このことへの理解を日本でも浸透させねばなりません。長島議員はまず、SCについては…、
「外国人の土地取引規制の際も、反対する人たちは所有権の問題、営業の自由とか、憲法上の権利とかを主張した。それらも大事だが、規制によって守られる法益がある。防衛施設周辺の土地に意図的に投資された場合の日本の安全、生活を守るという公共の福祉のもとに、人権が無制限に認められるわけではないことは憲法にも書いてある。そことの調整を図る立法をしたが、反対する人たちの声も踏まえざるを得ないということで骨抜きという意見も出るのだろう。」としています。その上で…、
「完璧なものはいきなりは難しい。まずは作って、そこから見直しするしかない。SCもそうだ。企業活動と安全保障は不可分。機密情報にアクセスする人たちを限定してバックグランドをチェックする。憲法上の人権はあるが、これも安全保障という法益が大事。」
「特定秘密はトップシークレット、そこまではいかないが、ある程度、秘密の保持は資格のある人たちに限定。日本だけの問題ではない。国際的な共同開発も、これがなければ、相手国から、ここから先は協働できないとなってしまう。ビジネス上の不利益もある。」
「ようやく諸外国と並んだ。G7の他の国は全て、SCの制度がある。希望者だけをチェックするものであり、一般人に対するチェックではない。」
他方で長尾氏は、次のように問題提起をしています…。「SCは高市大臣はいつも鼻息荒い。最初は岸田総理はやりたくなかった。最初に高市氏が経済安保担当大臣になったときに岸田氏から言われたのが、中国の名を出すな、本国会で法案出すとは言うな、だった。SC法を成立させたくない人たちが間違いなくいる。」
「前任の小林大臣の時の経済安保推進法、あのときはSCが入っていた。しかし途中で、いちばん大事なSC法が抜かれた。公明党…土地も売買規制でなく、利用規制にしろと。8合目か9合目いつもで抜かれる。仏作って魂入れずのところで、高市さんが引き継いだ。」
「世論もあり、やっと入れることになった。予算関連法案でないのでGW明けの審議、そこまでに崩れしないように持っていかねばならない。4月中旬ぐらいから左派勢力が邪魔しに来るだろう。誰でも調査受けますと喧伝されるだろう。国が持っている機密情報にアクラスしたい人が、できるようにするために調査してくださいというものなのに。」
「岸田総理がなぜあんなことを高市大臣に言ったのか、公明との関係か、自分の考えか、わからない。SCは要するに対中政策。ロシアよりも中国。中国と懇意な公明党から、土地売買と同じ類の骨抜きが小林大臣のときになされたのだろう。」
●防衛装備品の共同開発・輸出
この問題について長島議員は…「日本で初めて、完全な自主開発でも米国依存でもない、戦闘機を共同で。エンジン、レーダー、ステルス性の3つ。相手に見つけられない状況で攻撃。その能力を備えた次世代戦闘機。英国とイタリアと協働で研究して開発して生産して終わりではなく、必ず売らねばならない。販路を広げることで開発コストも下がる。」
「本件もようやく与党内合意に。公明党は平和の党、殺傷兵器は輸出しないということで、佐藤栄作政権のときは一定範囲で輸出できる上での三原則だったが、三木内閣で全面的にダメになったもの。佐藤政権のとき武器の供与はしていた。そこに戻ろうとするもの。」
「ウクライナ戦争ではっきりしたのは、世界警察がないということ。侵略する国とされる国があり、された場合は抑止力、それで国際秩序が保たれる。日本だけでなく、侵略を受ける国とも共有。戦闘機なので、公明党は面食らうかもしれないが…。」
「殺傷兵器は売らないと言っても、他国は売る。日本一国平和主義なら世界は安定というのが過去の考え方。日本が殻に閉じこもって国際社会が平和になるのではなく、積極的平和主義のもとに第三国への移転を考えようということ。『平和主義』の再定義が必要。」
●サイバーセキュリティ(CS)法制
このテーマについて長島議員は…「日本はこの分野でマイナーリーグだとされる。抜けている、と。サイバー攻撃は、一つは機能破壊。重要インフラへの攻撃、それらがダウンされては、米軍も自衛隊も機能しなくなる。最近はハイブリッド戦争で、戦争の前触れかも知れない。発信元を突き止めて、能動的サイバーセキュリティ。相手の方に行って…。もう一つは情報操作。人々の不安を掻き立て、政府への信頼を落とす。」
「防御のためでもサイバー攻撃は武力行使ではないかという議論があるが、物理的な破壊を伴わない。攻撃した相手を無力化するもの。反撃可能であり、自衛権の範囲だ。問題は元を突き止めること。国家主体か非国家主体かを見極めるためのパトロールだ。」
「憲法21条(検閲の禁止、通信の秘密などについて規定)とか、通信の秘密に触れるとか、これも確かに大事だし、手紙を開けてはいけないのはそうだが、攻撃を受ける道筋、アトリビューション、発信元を突き止めるために、公共の福祉の制約を受ける。」
「予算委員会の質問では、内閣法制局長官からOKの答弁引き出した。検閲は絶対にダメ、しかし、通信の秘密は公共の福祉に制約されるとの答弁。これに基づいて法整備へ。」
他方で長尾氏は、CSについてもより深刻な問題提起をしています。「CSは海外のサーバーのサーチが大事。サイバー攻撃を軍事的な先制攻撃ととるかどうかの議論はやらないとならない。攻撃に決まっている。法律がないなら、アタックをかける技術を。民間はやっている。ホワイトハッカーの会社から言わせると、アタックできなければ防御も不可能。日本ではさらに、警察、防衛などネットワークが縦割り。だからセキュリティがさらに脆弱になる。民間のホワイトハッカーを政府で雇うためには高額な報酬も必要。数億だ。」
「専守防衛、通信法、国会では?アタックこそ必要だと、部会では言ってはいるが、国会質疑でやったとしても、政府からはゼロ回答になろう。それを議事録に?ならば今は後回しに、となる。目に見えた議論に発展しにくい。」
「サイバーアタックが武力行使かどうかはいろんな専門家の意見を聞くだけで、政府としてとりまとめたという話がないから、深刻だ。そもそも誰もが納得いく提言などない。左派系メディアはいくらでも騒ぐ。それを怖がってはダメだ。」
●公明党はネックなのか?
公明党との連立が、自民党が保守政治をする上で大きな足かせとなっていることは、上記の各テーマを巡る動きからも明らかですが、この点について長尾氏は…、
「公明党の議員と話をすると、意外と安保でも共通項が多い。でも、トップがおかしい、と。山口那津男ではダメだ、一緒にされたくないという地方議員が何人かいる。トップを替えるしかないと。なぜ宗教をやっているのに選挙ばかり?若手から批判。雰囲気が変わってきている。学会信者でもトップがダメだという人がいる。」
「日本の直面する状況をみたら、誰もがおかしいと思うだろう。公明党は絶対に連立から離れない。下駄の雪ではなく、下駄のガム。いったん政権に入ると、そのうまみを知ったから、離れない。だから強く言えばいい。日本の国益にならないと。」
「平和安全法制のときに安倍さんは山口さんに滔々と説いた。あの公明党が賛成するとは思わなかったが、言い切れば、賛成する。権力から離れたくないから。」
●トランプ再選で日本はどう対応?…
「もしトラ」から「ほぼトラ」になる中で、トランプ氏が大統領に再選された場合の日本の外交政策の在り方についても、お二人にそれぞれ訊いてみました。まず長島議員は…、
「そんなに心配ない。貿易交渉も外交交渉も、トランプは最初にかます。その上でネゴに入る。あの交渉術のパターンを習得すれば、反発ではなく、いったん聞いた上で、こういうこともあるよと、きちっとしたロジックで言う。安倍さんはそうだった。」
「日本が自分たちの足で立とうという気概が日本にも出てくる。頼るな、それぞれの国ファーストでやれと。そうできるようになるのは悪くはない。NATOに関する発言も、まともに受けてはいけないレトリックだった。あれで欧州は自主防衛の路線に。日本が自主防衛に向かうきっかけになる。対米依存から脱却する良いチャンス。」
「トランプ氏だと、日本が中国から侵略されても見捨てる?ただ、クアッドなどをトランプは安倍さんと一緒にやった。事実を見れば、変なことはしていない。日本はむしろ、自立のチャンスだ。自分で技術開発して市場を開拓して。トランプになっても、今までやってきた積み重ねでなんとでもなる。」
「安保三文書も絶賛されている。これでトランプは満足だと、ハガティ前駐日大使が言っていた。真の自立が問われる日本。そのフェーズに入った。」
他方で、長尾氏は…「安倍さんがいない。だからトランプ誕生で日本は大丈夫でない。上川陽子を次の総理に?米国から見たら自由に操れる。トランプ氏はイレギュラーが多いが、安倍さんだから言うことを言えた。衝突はあっただろう、あったから信頼関係に。」
「バイデン政権の今より日本はもっと大変になる。しかし、バイデン政権では日本の未来が見えない、米国にあらゆるものが吸い上げられる。ただ、トランプ大統領再選で日本が大変になっても、防衛など自分でやらねばならなくなる。トランプ政権から、もう守らないと言われたほうがいい。その先には日本の真の独立が待っている。」
●真の安倍派はもともと少数派…憲法改正は?
自民党の立党の理念である憲法改正については、長島議員は…、「憲法審査会が未だに動いていない。立民と共産の反対で…。自公、維新と、国民民主で多数決でいいから発議する。国民に問う。国民の半数がyesと言わないと変えられない。国民にまだ語りかけていない。今年中の発議、まずは緊急事態条項に絞り、風穴を開ける。」
しかし、長尾氏によると…「岸田氏は今年の施政方針演説でも、自分の在任中に憲法改正をと言ったが、それは言ってみただけ。秋の臨時国会の演説で最初に言った。だが、国民投票の前に180日の周知期間が必要だ。昨年秋の臨時国会で条文を出して、ようやく今年の6~7月。ということは、自分の任期中ではそもそも無理。とりあえず読んでいるだけ。本気なら昨年秋にやっていたはず。」
「トランプ大統領再選で問われる日本の自立に向けた力を自民党が発揮できるか?安倍さんは総理在任中も自民党だけでは無理と思っていたと思う。公明党が足を引っ張る。数が足りない。そこで維新、国民民主、参政党、日本保守党、野党の側に同じ価値観で賛同してくれる勢力を作ることも是としていたのではないか。いま野党の側に保守勢力が生まれてきた。一緒に政党活動ではなく、この法案について大同団結と、安倍さんは当時から考えていた、だから維新を大事にしていた。」
「安倍派がこうなってしまった。清和研の中には安倍派と福田派がいる。総裁選の時、安倍派は高市派、岸田派、河野派に三分裂した。真の安倍派は元々少数派。しかし安倍氏が官邸にいたから、安倍氏の政策を霞が関も応援したので、結果として自民党も保守っぽく見えていた。自分がかつていた旧民主党のほうが保守派の比率は高かった。自民に移って、保守派は少数派だと強く感じる。安倍政治は自民党のマイノリティ。」
「『我々は少数派だからね』と安倍氏はよく言っていた。参政党のことも、もし安倍氏がご存命なら日本保守党も…野党の側での保守勢力の台頭を望みたい。」
…自民党の中にまだ残っている保守勢力と保守野党との大同団結により、カネや利権ではなく、理念に基づく政治勢力が台頭してこそ、国民が積極的に票を投じるに足りる政治が実現するのだと思います。私としても、微力を尽くしてまいります。
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