トランプ氏が目論む対中国「ネオTPP」とソブリンデジタル通貨~松田プランがトランププランになる?~
- 松田学
- 23 分前
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通常国会会期末が来週に迫り、内閣不信任案の提出のある無しが関心を集めていますが、最近では、小泉コメ劇場による支持率向上という事態を受けて、石破総理自身が衆院解散を決断する?との噂も一部に流れているようです。現状では、衆参ともに自民党は選挙に敗けない、これで少数与党から脱せられる…ただ、衆参同日選には公明党が大反対だとか。
今週は東京では6月22日投票の都議選が行われていますが、今年は7月の参院選と6月の都議選とが重なる12年に一度の年、人口1,400人の首都東京での都議選の結果が、直後の参院選、さらには衆院選の動向まで決めると言われる「国政選挙並み」の重要な選挙です。ここでも最近の調査では、自民党が都議会第1党を維持しそうです。
あれだけ有権者から見放されていた自民党がどうして?劇場型政治の効果はここまで大きい?そんな日本の有権者には絶望したとの書き込みもネットにはみられるようですが…。新しい政治を日本の有権者は求めてきたはずです。国民民主党の躍進は自民に見切りをつけた保守層の自民離れによるも言われてきましたが、このところの同党の失態で同党から離れた層が向かう先になっているのかもしれません、参政党の支持率が上昇しています。
参政党が参院選に向けた公約で掲げているのが「日本人ファースト」。安倍氏亡きあと政治がどんどん左傾化し、中国化が進む日本国を守り、過去から受け継いできた国柄を未来へと継承させていくために、グローバリズムに対抗する姿勢を示している同党への期待が高まるのは当然かもしれません。この点では国民民主党には明確なスタンスがみえません。
7月の参院選で参政党から全国比例(同じ「比例」でも投票で政党名のみ記載の衆議院選挙とは異なり、候補者本人の名前を記載でき、本人名での投票数が多い候補者から順に当選が決まる仕組み)で立候補を予定している私は、今年初めから東京を中心に全国を回るなど全力をあげて取り組んでいるところですが、最近では街頭でも有権者の反応が良くなっていることを感じます。日本を軸とした政治を…そんな常識を取り戻したいものです
世界秩序が大激変に向かう中にあって日本はどんな国家路線を選択するのか、今度の選挙で問われているのは何よりもこの路線選択の問題であり、コメ問題に矮小化してはいけません。それと同時に問われるのが財政政策へのスタンスでしょう。現在のコメ騒動も根本的には緊縮財政がもたらした問題ともいえます。日本が海外勢力への依存から脱して自立路線を歩むためには、海外に流れるマネーの流れを国内に引き戻す積極財政が必要です。
ちなみに、参政党は大型減税などによる国民負担の軽減と積極財政による国民所得の引上げによって、現在、46・2%にまで高まっている国民負担率を恒久的に35%まで引き下げることを公約に掲げています。そのためには一時的にせよ国債の大量増発が必要です。
衆参同日選で自民がいずれも勝利するということがない限り、参院選後に予想される一つのシナリオは、前号のコラムでも指摘した通り、自公と立民の大連立であり(だからこそ野田代表は内閣不信任案提出を渋っている?)、大増税への道が拓かれてしまうこと。これに減税政党がどこまで対抗できるかが問われていますが、日本の財政は1,100兆円以上にのぼる国債残高を抱え、減税は無責任というのが減税反対派の基本的な論理です。
この国債残高ですが、米国は対GDP比では120%と200%を超える日本よりも低いものの、公的債務は36兆ドル(約5,000兆円)にのぼり、利払費は1兆ドル(150兆円)と、同国の国防費や日本の一般会計予算総額をはるかに上回る水準となっています。
実は、減税政策を進めたいトランプ政権にとって大きなネックになっているのが、この膨大な連邦政府債務の問題。政府効率化省で歳出の削減を進めてきたイーロン・マスク氏とトランプ氏が一時、不仲になった原因の一つが、この債務問題への対処でした。
すでにマーケットでは虎視眈々と米国債が狙われており、国際情勢アナリストの及川幸久氏によると、次は日本国債だとの話もあるようです。確かに、最近の金融市場では日本の超長期国債の金利が史上最高水準になるなど、これ以上の国債増発には黄信号が…。元々は金融マーケットの出身者でもある及川氏は、米国でも日本でもこの事態を打開できるのは「松田プラン」しかないと公言しています。そのポイントは政府発行のデジタル通貨。
現在のマネーは中央銀行(米国ではFRB、日本では日銀)を頂点とする金融界が発行(銀行による信用創造など)する仕組みとなっていますが、これこそトランプ政権が敵視するDS(ディープ・ステート)。ジャーナリストの山口敬之氏によると、同政権はこれへの対抗手段として、ソブリンによるデジタル通貨の発行に本気で取り組んでいるそうです。
もしかすると松田プランは「トランプ・プラン」に?今回は以下、過日、山口氏が松田政策研究所CHで披露したトランプ政権の動向について、その内容をご紹介いたします。
●トランプ政権の目玉であるゴールデンドームと超知能とイーロン・マスク氏
まず、最近話題となったトランプ氏とイーロン・マスク氏との不仲問題について、山口氏は、「マスク氏がトランプ政権で初期に政府効率化省で託されたのは二つ。民主党政権下で納税者のためにならないところに流れた歳出のカット。だが、それはオモテ向き。もう一つは、ワシントンDCのDS(ディープステート)支配を断ち切ること。5月までに一定の成果をあげた。官僚たち数万人の首切りに成功した。」
「『DSとは何か』と問えば、『ワシントンDCの官僚のことです』と全員が答える。大統領のもとでもサボタージュして動かず、ジェンダーやリベラルばかりやっていると。その退治がトラックに乗ったので、マスク氏はいったんお役ごめん。そしてもっと大きな仕事に。」
「それが『ゴールデンドーム・イニシアチブ』だ。イスラエルではアイアンドーム、鉄。これを米国全土に大きな球体で張り巡らせ、こっちは「金」だと。最低でも30兆円かかる。米国上空に数百の軍事衛星を打ち上げ、レーダー照射で極超音速も含めてミサイルを撃墜して米国本土を守る。その打ち上げは、マスク氏のスペースX社だ。今度は米国の国防に関与する。マスク氏の重要性は変わっていない。」
「人工知能については、マスク氏本人は今まで通りだが、今のところトランプ氏はアルトマン氏というチャットGPTの開発者にやらせている。最終ゴールは超知能。その完成がトランプ政権の最終ゴールとすると、中国にその手前でAGI(汎用人工知能)を開発させないために、中国に対して圧倒的な軍事的優位を確立しようとしている。」
「かつてレーガン大統領がソ連を圧倒したのがスターウォーズ計画(SDI)だった。これを模して『GDI』。手前のプロジェクトはマスク。その奥はアルトマンのAI。それが日本の思想で設計されるAIであることは、人生観、世界認識に関わることであり、この点は変わらない。ここを共有しているから、マスク氏とトランプ氏の喧嘩別れはない。」
●対中関税の延期は徹底的な中国体制潰しへのシナリオ~「ネオTPP」交渉に
「トランプ大統領は中国と関税交渉で妥協した?現実を見て折れた?そんな報道は何も分かっていない証拠。高関税をかけても中国は潰れない。中国は他国と交易すればよいだけということになる。トランプが目指す、中国を干上がらせることにつながらない。」
「関税は第一ステージ。中国を交渉の場に連れ出したもの。停止も90日だけ。その間に何らかの交渉妥結をしないと、またもとに戻る。棍棒をもって90日間で貿易体制をガチンコで話し合う。ここで『ネオTPP』交渉が行われる。」
「不当な補助金、国有企業、民間ベースでない競争。国が支援している。お尻を決めて中国の経済や貿易体制、為替を変える。国有企業はダメ、そのあり方を改善し、自由競争でやってくれ。元安誘導もダメ。中国がこれらを飲めば、共産党体制は崩壊する。」
「元々、TPPは中国を追い詰めるためのものだった。そのためのブロック経済圏の形成だった。中国が入ってこれないような。もし中国が入ってきたら、中国はゆるやかに自殺することになる。つまり、中国の完全排除か、入ったら壊れる。どっちでもいい。トランプは同じことをやっている。」
「中国が一帯一路でやってきた実態とは、中国の覇権主義だった。現在、中国はTPPに入りたいとしているが、入ってきたら、国有企業のハードルを下げさせようと考えている。米国は入っていないから、米国が入る前に、と。それに乗ってはいけない。TPPとは、ルールを変えるものだから。いずれにしても、中国が米国との交渉で米国の要請を飲んだら、中国の独裁経済は崩壊する。飲まねば関税を上げる。知的財産も含めて。中国はもたない。」
「トランプ関税の発動で米国債が売却されるなど、金融マーケットが動揺したことが、中国との関税交渉での妥協となったとの見方があるが、間違いだ。トランプ政権で関税をやっているのは、プロ中のプロ。ベッセント財務長官は、ソロスから学んだ人。DSの真ん中にいた人。国債のプロもいる。商務長官もUSTR代表も経済諮問委員会委員長などもそう。国債がどう動くかを先回りして大儲けしてきた人たち。今回も読み切ってやっていた。」
「昨年、マールアラーゴにには、ビッグテックの人も来ていた。彼らはAIのリソースを提供し、国債、為替、株の市場がどう動くかを分析し、今の金利、ドル相場などを完璧に予測していた。だから、トランプ政権は動揺していない。ここまでは完全にシナリオ通り。」
「8月下旬に交渉のお尻を設定しているのは、その成果が貿易統計に出てくるのに一年かかるからだ。来年11月の中間選挙から逆算している。90日でひざ詰め交渉し、経済指標的な説得力と成果を出す。マーケットで動揺して延期したということではない。」
「一部に『疑米』論もあるが、中国に実際に歩み寄っている国があるのか?インドは絶対に行かない。敵国だから。ベトナムもいかない。カンボジアとシンガポールぐらいだが、トランプと関税ゼロで交渉中だ。その交渉をしないのは日本ぐらい。中国にすり寄る具体的な例がなく、むしろ、米国とやっていくと発信している国々ばかりだ。」
●トランプが考えるのは政府発行デジタル通貨~松田プランがトランププランに?
「通貨については、中国包囲網でまず狙ったのはドル安だった。米国の輸出を増やし、輸入を減らすために。そこで、FRB議長に金利のことで文句を言ったりした。しかし、奥にはもっと大きな絵がある。通貨発行権とは何かということだ。」
「これがDSによる世界支配の基軸の一つである。その枠組みを全面的に変えられないないとすれば、コンティンジェンシープラン、違う選択肢を創って、相対的に下げていこう。それを最初に政府紙幣でやろうとしたのがJFケネディだった。」
「今回、その手段となるのはデジタル通貨だ。政府が関与するソブリン通貨だから、FRBも無視できない。トランプ氏周辺からビットコインの発言が増えている。輸入する商品は関税で上がるから、米国民の生活は苦しくなる。そこで、ビットコインで国民一人当たり数百万円の給付をする。これは生活支援になると同時に、政府の通貨が通貨として流通して機能し始めることを意味する。連邦政府職員の給与も暗号通貨でという話もある。」
「これで、これまでとは全く違う論理のデジタル代替決済手段をトランプが手にすることになる。最終的には、政府在庫のビットコインを使用するわけではない。政府自らがマイニングのルールを創ればよい。自国建て通貨を発行する国は財政破綻しないと言われるが、その論理の前に、政府自らが発行する。まさに松田プランだ。」
「ビットコインは現在のチャンピオンだから、米国政府がデジタル通貨を出せば、ソブリンとリンクすることになり、ビットコインの相場も上がる。新たに米国民の生活を支える手段が出てきた、それには元手も要らない。」
「そういうことを言っているのは、世界中でトランプ氏と松田だけだ。今までとは違う世界の通貨を完全に政府がコントロールできる。米国のデジタルソブリン通貨を誰も無視できない。これはFBRなど中央銀行が発行するCBDCではない。」
「ヒントはアルゼンチンのミレー大統領だ。彼は中央銀行を20世紀最大の屑だとしている。同国の通貨はデジタル通貨とのペッグになり、勝手に通貨を出せるようになる。だからトランプと組んでいる。」
「ザッカーバーグ氏も多くのスキャンダルを抱えているが、トランプ氏は彼を守っている。フェイスブックのときにリブラという独自のステーブルコインを計画した人物だ。リブラのエルとは、英国ポンドのエルでもある。ノウハウを相当、蓄積している。」
「トランプ氏はそれぐらい真剣にデジタル通貨に向かっている。松田プランが先なのに、ようやく二人目が出てきた?ベッセント財務長官も、完全にこれに乗っている。財務長官のオーソライゼーションになる。」
…政府が通貨発行権を行使すれば、国の財政政策は国債マーケットや中央銀行といった金融勢による支配から解放され、民意を反映した自由度の高い積極財政が可能になります。トランプ氏が実際にどの程度、この構想を進めることになるのか、現段階では未知数ですが、米国がどうあれ、国債発行残高のGDP比が世界最高水準の日本としては、国家運営の自立性を高めるためにも、松田プランを実施したいものです。
それを実現するためにも、来たる参院選で何としても国政復帰を果たさねばならない、その思いで、7月に臨もうとしております。応援をいただければ幸いです。
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