top of page
  • 執筆者の写真松田学

戦略家ルトワック氏から菅総理へのアドバイス~日本はより積極的な行動を~

相変わらず世界中が注視している米大統領選も、本日12月14日はいよいよ選挙人による投票日のはずです。トランプが主張してきた選挙不正も、テキサス州が4つの州を連邦最高裁に訴えましたが、どうも首尾よくいっていない…?果たしてどんな展開になるのか。


日本では先週、政府が事業規模73.6兆円の追加経済対策を決定しましたが、これは新型コロナの感染拡大を受けた対策。しかし、人口当たり死者数が日本の数十倍、数百倍の欧米とは全く別世界の免疫状況にある日本では、新型コロナの死者数は、年間の交通事故死亡者数まで到達していません。果たして、交通事故を起こさないためにと、政府はクルマの運転の自粛を国民に要請してきたでしょうか…?


問題はむしろ、この状態で医療崩壊が懸念されるような、日本の医療体制の機能不全にあるのではないか。医療政策の問題を社会政策にすり替えていないか。それで経済社会には計り知れない大犠牲が…。どうも新型コロナへの認識そのものに大混乱がありそうです。


こうした大統領選とコロナの混乱に乗じて、中国は着々と世界覇権へ布石を打ち続けていますが、こちらの問題もかなり深刻。いま私たちにますます必要になっているのは、内外で起こっているさまざまな事象を冷静に俯瞰できる戦略的な発想力ではないでしょうか。


戦略といえば、すぐに思い浮かぶのが、安倍総理にも数々のアドバイスをしたことで知られる世界的に著名な戦略家のエドワード・ルトワック氏。松田政策研究所チャンネルでは過日、そのルトワック氏に私がインタビューをいたしました。米国東部のご自宅との間でのzoom対談です。この番組でルトワック氏にお願いしたのは、菅総理に対し、日本の外交・安全保障戦略や国家路線などについてアドバイスをしていただくこと。ですから、菅総理や安倍前総理などにも、この動画をご覧いただくことになっています。


今回は、このインタビューでルトワック氏が述べた内容をご紹介いたします。


●バイデンになるとどうなる?安倍前総理への評価は?菅総理は?

以下、ルトワック氏の言…この選挙の結果はショッキングなものではない。下院選挙で民主党は議席を減らし、上院でも共和党が多数を占める。それゆえ、新政権はバランスが取れている。加えて、バイデンは共和党の有力議員たちと40年にもわたっての親交がある。グリーンニューデールなど、民主党で言われているドラスチックな政策を実現するには巨額の予算が必要で、それが通れば軍事予算は削らなければならないが、そうはならない。今の主要な政策が継続されることになる。政治的には静かな政権移行ということになる。


安倍前政権については、まず、2011年津波の年には、時の民主党政権のもと、日本は中国よりに動いていた。防衛大臣は北京に行き、各種協定書に調印していて、日本は米国との同盟から離れていくとみられていた。当時のインドのシン首相は、中国と対決しようとは考えていなかった。2011年にも世界的な金融危機があり、米政府は中国封じ込めには熱意を見せず、むしろ、中国の経済的拡張による景気回復に期待していた。


安倍政権が再登場すると、彼は日本の方向を一変させ、米国は2015年にそれに従った。


インドは徐々に反中の動きを強めていったが、2014年にモディ首相になってから、中国封じ込めに注力するようになった。インドとの戦略的な関係には、安倍氏とモディ氏の間の人間関係も大きく寄与した。これには彼の祖父の岸元首相のインド訪問も関係している。


安倍前総理のイニシアティブは、日本にとってこの30~40年の間で最も重要な動きであり、初めて世界に変革をもたらしたといえる。そして事実上、米国は日本に追随した。


中国の脅威に最初に立ち向かったのは豪州だった。2011年の夏、豪州のギラード首相は訪日し、中国を封じ込めるべきだと説いた。公然とした対中対立は、豪州が一番目、日本が二番目、インドは三番目ということになる。オバマ政権は2015年に、ようやくこの同盟に加わった。米国政府は中国封じ込めに真剣に取り組み始めた。そしてトランプ大統領が登場した。だから、安倍首相は同盟のリーダーであった。彼が登場する前には日本は親中国の方向に向かっていて、中曽根元首相は「日本は中国の『天下』のもとに入るのが好ましい」とまで語っていた。ゆえに、安倍首相は歴史の方向を転換させた総理だった。来年1月20日以降も、対中国政策については共和党も民主党もなく、反中国が国民的政策である。


菅氏の外交手腕について言うと、安倍氏も谷内氏も政権を離れたが、菅氏は継続している。彼は経験豊富であるし、多くの場合、彼自身の判断で外交問題を処理し続けてきた。


その一つの例は捕鯨問題である。南氷洋における日本の捕鯨は豪州の一部政党からは大問題とみなされてきていた。それが、日本との同盟関係を樹立する上で大きな障害だった。なぜなら、豪州の内閣は連立内閣であり、環境重視派や捕鯨反対派の協力がなければ成り立たないからである。菅氏は賢明にも、豪州近海や南氷洋での日本の捕鯨は止め、日本近海での捕鯨を行うと宣言した。これにより対中国包囲網・海洋同盟は進展し、マレーシア、インドネシアも巻き込むことになる。菅氏は優れた外交戦略の能力があることを示した。


●海洋同盟を形成させたのは中国の戦略ミス

(ルトワック氏が日本の文芸春秋で、「米国は中国との対立の最前線には立っておらず、現在進行しているのは、『米国主導の海洋同盟と中国との戦い』である」とし、豪州、フィリピン、ベトナムやインドなどの国々と中国との対立を指摘し、香港問題も同じであり、こうした対立は中国自らが招いたものであって、中国よりも人口や経済規模の大きな海洋同盟の形成を促した中国は大局的な戦略が下手である」と述べていることについて…)


この海洋同盟は、あたかも植物が根を張り枝や幹を茂らせるように、自然に現れてきた。それがNATOのような人工的な組織とは違う点である。このプランは中国が自ら作ったようなものだ。中国は豪州に喧嘩を売り、カナダに難癖をつけ、ベトナムの漁船を沈め、ラダック地域でインド国境を越え、スウェーデンとも文化交流を停止させている。


これはすべて中国(習近平)が始めたもので、トランプでもなければ安倍でもモディでもトルド―でもスウェーデンの首相でもない。


同時に中国の中では、彼は古い伝統のある国の役割を放棄しようとしている。以前は国の中に共産党があったが、彼の下では共産党がトップになっており、国家としての政策ではなくなっている。ウイグルやチベットの次世代の人々は、全て中国語で教育され、中国語を話すことになり、モンゴルでも事情は同じである。彼は非常に挑発的な行動を国内でも国際的にも取ろうとしている。これは典型的な中国人の考え方であり、周りで何が起きているのかまったく顧慮しない。


例えば、ぎゅうぎゅう詰めのエレベーターの中の肥満した男(中国)がますます肥満していく状態と思ってほしい。肥満した男は周りの人達を押すばかりか、口汚く喚き散らしている。それで周囲の人達は自然に団結して対抗していくことになる。


また、重要なポイントとして、中国の民衆の教育レベルは上昇しており、彼らはプラトンやソクラテス、アリストテレスその他の西洋哲学にも親しみ、民主主義や自由主義などの教養も積んできている。それに対し、中国政府はますます野蛮で暴力的になってきており、政府の野蛮・無教養と民衆の文化・教養が大きな矛盾を引き起こしている。これは持続可能ではない。今後の中国の中で大問題を引き起こすことになると思う。


現在、西側のほとんどの国々との関係が極度に悪く、パキスタンとカンボジアとだけは良好といった中国の状態は、非常に不安定で長続きしない。というのは、習近平の極端な路線が個々の中国人にも負担になっているからである。通常のビジネスを中国人ができなくなっており(例えば中国人が日本の旅館を買収することは既に不可能)、中国人ビジネスマンは毎日被害にあっている。中国人学生は豪州や米国の大学で勉強したくても出来ない。学者や投資家たちも困っているし、アリババのジャック・マーも政府と衝突した。


中国政府はより極端に走るようになりつつあり、この状態は長続きしない。


●日本にとって重要なのは尖閣問題よりも台湾…スウェーデンにならえ

米国の立場は、日本への攻撃は米国が反撃するが、尖閣の問題は日本政府の問題であって、中国がもし尖閣を占領したならば、日本自身がそれを取り返す責任があるというものだ。そのための現実的な軍事作戦プランを日本は作成していなければならない。日本側もそれが日本の責任であることを理解していると思われる。自衛隊は長崎県に水陸両用作戦用の特殊部隊を配備している。


もっと大きな間題は台湾である。香港は我々にとってすでに失われてしまっていて、どうすることも出来ない。これは中国にとっても大きな損失であることは疑う余地がない。香港は中国にとっても経済的に大きな価値があったのだが、それを殺してしまった。しかし、台湾はこれからの問題である。


長期にわたった冷戦の期間中、フィンランドもスウェーデンも中立国であった。しかしその全期間を通じて、スウェーデンはフィンランドを支え続けてきた。スウェーデンは一言も口にしなかったが、ロシアはそのことを熟知していた。もし、ロシアがフィンランドに侵攻したならば、スウェーデンは国境地帯に大量に備蓄されていた兵器や補給物資(50万発以上の対戦車ミサイルを含む)をフィンランドに直ちに供給する用意ができていた。同時に、欧州最大の空軍力を持つスウェーデン空軍が援護する。中立性の看板を損なうことなく、スウェーデンはフィンランドを援助していた。


我々は台湾問題を抱えている。日本は公式的には「一つの中国」政策の下、台湾援助は難しいが、もし中国が台湾を取ると、日本の安全保障は大きく損なわれることになり、日本は計り知れない損失を負うことになる。日本は直ちに安全ではなくなり、軍事予算は2~3倍必要となろう。日本国民は核武装の必要性を話し始めるだろう。


だから、日本政府はスウェーデンのやり方を良く研究し、彼らが行ったように台湾を援助すべきである。スウェーデンはフィンランドと協定を結び、そのための武器を生産、備蓄し、有事にはすぐに送れるようにしていた。誰も何も言わなかったが、これがフィンランドを強くし、冷戦の期間中、同国が独立を保てた一つの大きな要因だった。


日本も台湾を強化する頭の良い方策を考え、実行する必要がある。しかも、公的な立場を変えないで行う必要がある。中国の攻撃に台湾が対抗するための武器・弾薬や補給物資を直ちに送れる状態で保管しておくことは、行政的には可能な行為である。


●米中経済戦争の本質と日本の役割

日本政府はイニシアティブを取ってEconomic Alliance on Going Committee (継続的経済同盟委員会)の設立を呼び掛けるべきである。それは常時活動し、冷戦時のCOCOMの役割を果たすべきだ。COCOMは水平的な組織で、米国がボスでメンバーに命令するといったものではなかった。それは多くの政府の間での実務的な相談の場であった。


現在の中国との経済戦争の中身は、情報技術に特化したものだ。マイクロプロセッサーの生産や、コンピューター、量子コンピューター、AI等関連の非常に特殊なものである。


ここに特別な問題がある。現在、トヨタは自動車を中国でも自由に生産し販売しているが、もしトヨタが完全自動運転の車を開発したならば、それは非常に進化したAI技術を体現している。完全自動運転の車が出来れば、自動運転の飛行機、潜水艦等が直ちに可能となる。だから我々には委員会が必要だ。日本はそのイニシアティブを取るべきである。


日本は中国との貿易や観光をできるだけ振興したいと考えているが、ワシントンから誰かが声を上げるのを待って反応するのではなく、売って良いものと禁止すべきもの等について、自ら声を上げて主導するべきである。安倍氏は日本のイニシアチブでの独自戦略を打ち出した。外から言われて、イエス、イエスとかノ―、ノーとはやってこなかった。


現在、日本はもう一度、独自のアイデアを打ち出すべき時である。全ての高度技術保有国が協力すべきであり、良い例としては、世界で3か国だけがシリコンをICチップ用に薄膜に切断する技術を持っている。オランダ、日本、米国の三か国だけがラップトップや全ての種類のコンピューター製造に不可欠なこの技術を持っている。


この技術は中国に絶対に盗用されてはならない。秘密をお話しすれば、私自身がワシントンのNSCでこの問題を提起し、同意させ、オランダ政府にも同意させ、日本政府にも認めさせた。なぜなら、ARMというこの技術を持った会社は、日本のソフトバンクの完全子会社だったからだ。日本政府はこの問題でオランダ政府、米国政府との話し合いを始めるべきだ。同時にイスラエル政府にも協議のテーブルについてもらうのが望ましい。


なぜなら、イスラエルの会社がその薄膜を1,000万分の一ミリ単位で精密に計測する技術を持っており、それは現実的な生産に欠かせないものであるからだ。つまり、日本やオランダの会社が切断し、イスラエルの会社がそれを計測するということである。


これらの会社は毎日協議をする必要がある。なぜなら、現実は単純ではなく変化に富んでいるからだ。トヨタは中国でどんな車でも生産販売を行いたいであろうが、もしトヨタ車が完全自動運転の機能を持てば、その技術は中国に対して禁じられるべきである。それは航空機、ミサイル、潜水艦などに直ちに応用されるものであるからだ。


我々にはあまり時間がない。すぐに行動を開始すべきだ。多くの会社、例えばユニクロなどは中国ビジネスをどんどん継続してかまわない。


ロシアとは話が違う。ソヴィエトロシアは3つの主要輸出品しか持っていなかった。日本に供給する木材、ダイヤモンド、そして毛皮だった。中国との貿易は重要で、大切にしなければならないが、特別な希少な技術は除外する必要がある。それを決定する組織が必要であるのに、現在、まだ存在していない。


●日本の情報収集能力の強化は中国へのフィールド・インテリジェンスで

日本は画像による情報は、独自衛星や米国からの情報によってかなりの能力を持っている。電子ベースの情報は聴覚とも言え、それもかなりの水準である。加えて、船舶や航空機によるレーダー等による多くの情報もある。しかし、決定的に不足しているのが人的情報収集である。これは全ての情報の中で1~2%に過ぎないが、現実を反映している点で決定的に重要だ。日本人は中国で生活してみて初めて中国の現実を知ることができる。


これが重要なのは、米国が非常に弱い分野であるからだ。文化的な理由から、米国はフィールド・インテリジェンスの収集・分析に伝統的に弱い。米国のいわゆるスパイ活動は大使館を中心に行われているが、それはパラグアイやウルグアイなどの小国ではOKでも、中国では駄目だ。中国の社会に溶け込めないし、何が起こっているかもつかめない。


日本が自国を守るためには、フィールド・インテリジェンスの強化が絶対に必要である。それにはジェームス・ボンドは必要がなく、例えば中国国内における多くの国際会議に専門家として出席させて、中国の専門家達と仲良く付き合うことなどが重要。会合に出かけて行って、蝶の専門家でも何でもよいが、先方の学者や専門家と仲良くなることだ。それにはコストはほとんどかからない。それを実際に効率的に行っている国は、費用を掛けずに多くの貴重な情報を得ている。


イスラエルが多くの国際会議で重要視されている理由がそれである。例えば、イラン問題では、彼らはイランを外から監視しているのではなく、イランの中で生活して日々情報を集めている。これがお金を少ししかかけずに、大量の現実的情報を得る方法である。


中国は急速に変化している。自分が初めて中国に行ったのは1976年、毛沢東が死去し、人民大会堂での毛沢東の葬儀に招かれ、出席した。それ以来、コロナ禍で中断するまで毎年中国を訪れ、多くの友人を持っている。中国人も常に変わっており、我々は中国や中国人という静止画を見るのではなく、現実の中国を見なければならない。


●菅総理のベトナム・インドネシア訪問と海洋同盟

ベトナムは海洋同盟の最初のメンバーであり、オーストラリアに先んじていた。ベトナムは中国と戦い、歴史的にも負けることはなく、将来も中国に勝利できると信じている。そして彼らは非常に真剣な人々だ。日本にとってはいかにベトナムを助けるかということが問題であり、それは援助ということになる。経済か軍事関連であるかに関わらず、ベトナムを援助すれば、それは全てベトナムを強力にすることにつながる。


すでに米国はベトナムに沿岸警備隊を派遣しており、ベトナム漁民を守っている。これは秘密でなく公表されている。日本のそうりゅうクラスの潜水艦がベトナムを初めて正式訪問し、単に社交儀礼的な訪問ではなく、ベトナム海軍との共同訓練も行われた。ベトナムに関しては問題は単純であり、いかにベトナムを援助するかの問題である。


インドネシアについては、3~4年前までは、インドネシア政府は「我々は『中国との対立』とは関係ありません、むしろ中国との仲介者になりますと」言っていた。ところが、中国はナテュナ群島を発見し、自国の領土であると宣言した。そこでインドネシア政府は、対船舶ミサイルを装備したヘリコプターを派遣し、中国船を撃沈すると宣言した。だから、菅総理にとって最重要な訪問国はインドネシアであると言いたい。インドネシアについては、我々は同国が海洋同盟に参加することをエスコートする必要があるからだ。


ベトナムについては実務的にいかに支援するか、インドネシアについては外交的にいかにインドネシアが同盟の中で振舞うべきかを教える必要がある。


インドネシアの人々の日本に対する思いは複雑なものがある。350年間、オランダの植民地として支配された後、日本の占領によって初めて独立を成し遂げることができた。そうでなければ、インドネシアの独立戦争は10年以上かかっただろう。ゆえに、インドネシアの人々の日本に対する態度は、政治的にも文化的にも極めて友好的なものだ。


しかし、インドネシアは海洋同盟の新しいメンバーであり、菅総理の訪問は極めて建設的なものだった。彼は重要なことを成し遂げた。


●米国新大統領との向き合い方 

米国の対中政策は不変である。その他のことに関しては議論や争論の種はいくらでもあるが、対中国では一致している。バイデン大統領のもとではウイグルやチベット、香港などでの人権問題がより一層強調され、前面に押し出されるであろう。


日本との関係では、重要政策については一致しているので問題はないが、ディテールには問題がある。例えば、日本側からは日本駐在米大使は重要で有能な大使でなければならないと申し入れることだ。オバマ政権のもとでの何代かの米国大使は残念なことに、役に立つ大使ではなかった。大使館の役割は昔と違い、今はそれほど大きくはないが、それでも一定の役割は持っているし、有能で優秀な大使が着任していることが大事である。


日本側はワシントンに対して、駐日大使はそのようなレベルの人間であるべきことをロビーしなければならない。なぜなら、冷戦中は米国の最も重要な同盟国は英国、フランス、ドイツであったが、現在における最重要同盟国は疑いもなく日本であるからだ。だから、ワシントンにはこれを正しく理解してもらう必要があり、今すぐに米国政府と話し合いを始めるべきである。


●日本はどのような国になるべきか~マリタイム・ストラテジーの要諦とは~

安倍氏はとても積極的だったが、彼は側面的な動きも多く行ってきた。例えば、プーチン大統領との関係構築がそれであり、それは長期的には非常に優れた戦略だ。もし中国が現実に非常に危険な国になった時には、ロシアは立場を変えて我々の側につかなければならなくなる。なぜなら、ロシアの死活的な場所であるシベリアは、米国からは遠く離れているが、中国に隣接していて、中国が取りに来る可能性は高いからである。


世界はより積極的・行動的な日本を待ち望んでいる。その世界の中には、例えば英国がいて、英国は「航行の自由」の旗の下に軍艦を南シナ海に派遣し、米海軍も共同訓練を行った。フランスも同じことを行った。日本は英国とフランスに呼び掛けて海洋における共同訓練を行うべきだ。欧州諸国も、より積極的な日本を待っている。


また、世界の多くの地域では人口は減少しているが、アフリカでは増加が続いている。米国はアフリカではうまく活動ができないので、中国は今のところ、アフリカで自由勝手に行動している。日本はアフリカでもっと存在感を高めることが必要ではないか。


ただ、何よりも重要なのは、中国の周辺で日本の存在を高めていくことである。現在、日本はインドで非常に活動的であるし、米国がうまくやれないバングラデシュでもそうだが、その他の中国を囲む国々で、もっと存在感を高めることは日本の生存戦略にとってとても大事である。タジキスタン、キルギス、カザフスタン、モンゴルなど、中国を囲む国々でどんな形でも行動を開始し、日本のそれぞれの国における存在感を中国に知らしめることは非常に重要だ。


なぜなら、それは中国がランドパワーであることを思い知らせることになるからであり、ランドパワーは先ず周辺国の動向に最大のエネルギーと時間を割かなければならないからである。それはODAでも良いし、環境調査、あるいは鳥類学者の訪問・派遣でも良い。


そうした国々で日本が活動的になり、存在感を増せば増すほど、中国はそれに対して人的・資金的資源を割かなければならなくなる。中国側がそれに反応して人員を割けば、その分だけ海軍に割ける人員・資金が少なくなり、日本に対する圧力が減少することになる。


マリタイム・ストラテジー(海洋戦略)とは、ランドパワー周辺国への存在感を増し、ランドパワー国の勢力や影響力を弱めることなのである。


…以上、特に最後の部分は、私が提唱してきた「日本新秩序」の一環に位置づけられる考え方でもあり、まさに我が意を得たり。これが大東亜共栄圏の時のような誤解を海外から招かないためには、英語では次のように表現すればよいのでしょうか…。

The New World Order due to influence from Japan…

閲覧数:161回
bottom of page