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執筆者の写真松田学

戦争をやめられないイスラエルと中東で広がる核武装~都知事選が示す政治潮流と問われる日本の危機対応力~

選挙がビジネスの手段にされたり、同じポスターが掲示板にズラリと貼られたり、目をそむけたくなるような政見放送が相次いだりと、これだけ多くの話題を呼んだ都知事選は初めてでしょう。結果をみると、コロナ対策などテレビに露出し続けた現職の有名人はやはり強い…小池氏が292万票、得票率42%で予想通り圧勝。同じ有名人でも蓮舫氏は立憲共産党ではやはり無理、166万票で2位につけたのは都民には無名の人だった石丸氏でした。


この石丸氏の選挙戦入り後の伸びも話題となりましたが、同氏の政策は、地方活性化のために東京を衰退させる?など、真面目な政策論としては中身はほぼ皆無。何が都民に受けたのかといえば、政治を根本から変える短く明快なキャッチなどが与えた新鮮さでしょう。若年層では小池氏を上回るトップで、SNSが初めて実際に選挙結果を大きく動かしました。既成政党と新興勢力との対立構図を鮮明にしたのが今回の都知事選だったといえます。


政権与党が政治とカネを巡る一連の騒動で信を失い、野党も明確で新鮮な対立軸を打ち出せないでいる政治の現状をみれば、石丸氏が有権者の期待を短期間でここまで引き寄せたこと自体は、今後の日本の政治の在り方を考える上で決して軽視できない現象だと思います。しかし、ただ新しければ良い、胸をスカっとさせてくれれば支持するというだけで政治が決まって良いほど、日本が置かれた状況は生易しいものではないのも事実でしょう。


私は参政党員たちが事実上の選対本部となって連日、選挙活動を支えた田母神氏の応援演説を4度ほどいたしましたが、そこではこんな内容も訴えました。「いま私たちは戦後初めての危機の中にいます。東京は中国が日本に照準を当てている膨大な核ミサイルによる攻撃で数分間で溶解する。呉大使のあの暴言には根拠があります。核シェルターは当然だが、それで済むものではなく、正に都民を保護するプロが首長でなければならない。」


「いずれ必ず来る首都直下型地震。犠牲者も被害額も実際には公表数字とは桁違い。GDP比1.5倍の被害額との数字もあり、これは、かつてその後の文明の姿を変えたとされる18世紀のリスボン大地震並のインパクト。交通遮断、食料遮断による餓死、エレベーターに閉じ込められて白骨化、実は恐ろしい絵図が予測されている中で、都民の命を守れる首長は危機管理のプロしかいないでしょう。人気があるだけの政治家ではなく、都知事には司令官の資質が問われる危機の時代に、これを担える候補者は誰かは明らかです。」


残念ながら、善戦した田母神氏は3位の蓮舫氏の128万票からも大きく引き離されて27万票と4位にとどまり、以前の都知事選で獲得した61万票の半分以下。これには従来なら同氏を応援するはずの層の票が他の多数の候補者へと分散したことも大きかったでしょう。


しかし、私が提起した日本の危機の問題こそ、これにどこまで真正面から向き合えるかがいまの政治にいちばん強く問われているテーマであることに変わりはありません。


核の問題については、日本が戦後、その抑止力に依存していた、あの公正と正義と民主主義をもって世界を睥睨してくれていた米国が崩壊しています。日本のメディアも無視できないその象徴が、あのバイデン大統領の無様なテレビ討論だったのではないでしょうか。


聞くところでは、バイデン氏が大統領職には耐えられない認知症だったことは、2020年の大統領選の頃から明らかだったそうで、それがヒタ隠しにされてきたようです。思い返すと、当時もコロナを理由に自宅の地下室で選挙活動をしていましたし、大統領職もプロンプターを見ながらの演説以外の場面では、色々なボロが出ていました。先般のG7サミットでは他国首脳とは逆の方向に一人徘徊し、メローニ伊首相が急いで連れ戻したとか…。


やはり大統領はパペットだった。その背後にいる勢力によって米国という国家そのものが操られてきた。今回の現象は、これを「陰謀論」として片付けられない米国の実態を示唆しているような気がします。すでに反米の国々が圧倒的に多数のグローバルサウスがG7と拮抗して中ロを軸に大きく台頭する国際社会にあって、そんな米国にただ付き従っているだけでは日本は国を失うのではないか…。ましてや、もしトランプ氏が大統領に再選されれば、もはや日本には対米自立以外の道はないでしょう。


この対米自立の文脈には、日本独自の核抑止力の構築も含まれてこざるを得ないかもしれません。現下の国際情勢をみると、その思いがどうしても強まります。


今回は、この問題をリアルに考える上で、松田政策研究所chで対談をした二人の論者による中東情勢の分析をご紹介します。一人は、イスラエル-ハマス紛争の真相を語った上で、核戦争のリスクを示唆する中東専門家の石田和靖氏、もう一人は、中東の大国が次々と核武装へと走る中で、日本の選択肢としての核武装論を提起している宇山卓栄氏です。


●ハマスの攻撃の真相とは

まず、前述の石田氏によると…「日本のマスコミは昨年の10/7以降しか報道していない。10/7に大規模越境奇襲、多数のイスラエル人が拉致、殺害され、これに対してイスラエルが報復。こういう報道だった。しかし、注目すべきは、10/7以前に何が行われていたかだ。」


「2022年12月に第六次ネタニヤフ内閣誕生。これは過激な内閣で、シオニストも含まれている。この組閣の翌月、23年1月に『オクトパスドクトリン』を発表。イスラエルはこれまでイランが動かすタコの触手から攻撃していたが、タコの真ん中の心臓であるイランを攻撃すると。そこで、イスラエルは近いうちに大きな戦争を起こすとの予想が出ていた。」


「2023年の夏に世論調査、イスラエル国民の30%が今すぐに国外脱出したいと。3つの理由。第一に、前記のようにネタニヤフの対イラン政策が過激であり、戦争を起こす懸念。」


「第二に、対パレスチナ政策がかなり過激になっていること。ヨルダン川西岸への入植活動をトランプ大統領のときにストップさせる内容がアブラハム合意の中にあり、入植活動はいったん止まったが、西岸地区への入植が再開してエスカレートした。」


「パレスチナ人虐殺。イスラエル軍がヨルダン川西岸地区でパレスチナ人の民間人の家に入って、出て行けと。武器もなく、難民化。抵抗するパレスチナ人は子どもであっても、テロリストとして撃ち殺す。これが入植活動の実態。一昨年の10月からずっと起きてきた。」


「日本では報道されていないが、中東のメディアには報道されていたし、現代版アパルトヘイトという記事も欧州では出ていた。これが余計な対立を生んでいる。普通のイスラエル人にとっては、同国の工場でパレスチナ人が普通に出稼ぎで働いている。国民の間には大きな戦争の予感があった。」


「第三に、ネタニヤフ政権の司法制度改革。裁判所を首相の下に持ってくる。三権分立ではない。司法機能を行政の下に。ネタニヤフ首相は汚職の問題を抱えていて、首相を辞めたら逮捕される。自分の身を守るため。戦争を起こすためには独裁化に向かう。」


「だから我々の国はヤバいんだと。イスラエルの知人に訊いたら、国外脱出をしたい人は30%ではなく、50%以上だと。今のイスラエルは本当にヤバいと。


「大きな戦争は3人の人が導く。スモトリッチ財務相、ベングビール国家治安相、そして法務大臣。彼らがネタニヤフ首相をコントロール。」


「つまり、ハマスというより、元々、イスラエル側に戦争の動機がある。この3人を中心とした政権にとって、大きな戦争を起こす理由が必要だった。それが10/7の奇襲。分かっていた。イスラエル側が誘導していたと考えられる。」


「ハマスのバックにいるイランは、戦争は避けたいという方向になっている。去年の3月に、中国の仲介でサウジとイランの国交正常化。そうなると、アラブ圏全域のリーダーはサウジであり、21か国のアラブ連盟もイランに寄り添うことになる。その後、イランはBRICsにも加盟。こうして国際社会の仲間になると、勝手な暴発はできない。」


「イランはイスラエルへの攻撃はしたくないのであり、ハマスを動かしたのはパレスチナへの過激な入植活動。これが動機。イスラエルはこれを奇貨としてガザ地区を支配下に。」


●イスラエルはパレスチナ人殲滅まで戦争をやめない…その理由

「今のイスラエルは戦争をやめない。戦争の終わりは、ガザから全てのパレスチナ人を殲滅したとき。ハマスを殲滅すると言って戦争が始まったが、今やっているのはパレスチナ人の殲滅であり、民族浄化だ。人間扱いしていない。動物扱い。民間人も、お前はハマスだと迫り、殺す。ヨルダン川西岸でも同じことが起きている。殺害と難民化。」


「ラファ攻撃。なぜ?国際社会から反対されても、イスラエル国内の過激派の世論がある。ラファを攻撃せずにハマス殲滅とはいえない。ラファはエジプトに繋がる唯一の部分、そこをふさいで兵糧攻め。190万人が閉じ込められ、殲滅する。ガザ北部を攻撃するからみんな南に逃げろと言ったが、今度は攻撃が南に移り、南を攻撃しているのがラファ攻撃。」


「オクトパス計画と3人の閣僚がキーポイントだが、なぜか日本のマスコミに出てこない。ネタニヤフは武器の供与をしている米国に対し、戦争をとめられるならとめてみろという立場だ。ユダヤ系資本から寄付をもらっているだろうと。」


「ネタニヤフは首相を辞めたらあとがなく、戦争を続けるしかない。その間に司法改革をする。それが彼にとって唯一の道。そこを握っているのが3人。カネと警察と法律を握っている。その内閣が入れ替わるか、国民の反政府デモでクーデターでも起きない限り、この戦争が止まることはない。」


「イスラエルの国民も3人の人物への反対は多い、75%は今の政権に反対。25%はヨルダン川西岸、北部ゴラン高原など、入植した他国の人たちが支持。3人は、そういう地域の出身。西岸では何十年も入植。子ども孫の世代に。この自分たちの土地をパレスチナに返すなどあり得ない。イスラエル人のものだと。」


「国民の75%は完璧に戦争反対で、二国家共存を進めたい。総選挙をしたら政権崩壊だから選挙ができない。転機は?国際社会がどのような圧力をイスラエルに加えるか。」


「ただ、彼らは一人でも戦うとしている。米英の支援なしでも世界を敵にしても戦うのが過激派シオニストの思想。選民思想。神から選ばれた、それ以外は賤民だと考えている。」


「普通に考えたら自殺行為だが、過激派シオニストは相手を殺して自分も死ぬ。これでは核戦争が起きる?ガザに核爆弾を落とすという発言が出ているのは、米国にも支持があるからだ。それで戦争が早く終わる、広島長崎のように。」


「相互確証破壊理論、その考え方があったので核は抑止力になったが、それは普通の国の考え方だ。イスラエルは普通の内閣ではない。核戦争の可能性は排除できない。核を打つ正当性を創りたいのだろう。だから先にイランに攻撃させるとか。」


「旧約聖書の通りに世の中は動いていると。エゼキエル書第3章では第三次世界大戦が予言。ロシアがトルコなど同盟国を引き連れてイスラエルと戦争をし、イスラエルは欧州に逃げ、そこに大地震が起き、イスラエルに来た敵の軍隊は滅びる。やはり神はいるというストーリーだ。やって来る勢力にはイランも入っている。」


「イランがサウジと国交正常化したといっても信用しきってはいない。イランが核開発、実用化できる状態。それをサウジが許さない。サウジは自分たちが中東の盟主だと考えている。お互い許せない。核を持つんだと。イランからみて、サウジは元々は遊牧民ではないか。それとイランは違う。ペルシャだと。人口大国だし、石油ガスも持っている。」


「こうして中東の覇権争いに。我々日本はいずれとも親しくしなくてはならない。みんな親日で日本をリスペクト。輸入を湾岸諸国に依存、中東に目を向けないと日本は厳しい。」


●イスラエルとイラン…両国の思惑

次に、宇山氏による中東情勢分析をご紹介しますと…「イスラエルは、4月13日にイランから無人機やミサイルなどの合計300発以上の攻撃。にも関わらず、報復はほとんどしなかった。その代わり、ラファ侵攻を米国に認めさせる圧力。一方で、イランはこの危機の高まりの中、核武装に踏み込むことの正当性。イランは事実上の核武装をしているが、周辺アラブ諸国のイランへの反発を減ずるための地ならしの環境を整えつつある。」


「次の発言…『イスラエルがイランの核施設を攻撃すれば、核武装の選択肢もある』、『イランは核爆弾の製造能力がある』、『今も能力はあるが製造は決定していない』…。」


「イスラエル側は核施設のあるイラン中部イスファハンを標的にした。イランが核武装をする正当性がある。中東の核拡散を防ぐことはできない。サウジもイランの事実上の核武装について黙っていないだろう。」


●サウジアラビアの米国への要求(2023年9月)

「サウジはイスラエルとの国交正常化を呑む。その見返りに原子力の民生利用での支援→いつでも軍事利用可能に。ウラン濃縮施設をサウジアラビアに設ける、米国とひそかに協議。サウジは開発資金を提供してきたパキスタンの核を買い上げることになる。」


「サウジとイランは反目。イランが核開発を進めるのは、サウジの脅威のためであり、イスラエルのためだけではない。サウジは2019年、イエメンのフーシの攻撃を受けた。そのため、サウジも核開発。UAEも原子力発電所をつくりたいとしている。」


●米国によるイラン包囲網

「アブラハム合意はイラン包囲網のはじまりだ。単なるイスラエルとの関係正常化ではない。トランプ政権が2020年、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンなどアラブ諸国との国交正常化を仲介し、合意が成立。シェール革命で世界最大の産油国となった米国にとってのペルシャ湾岸のアラブ産油国(GCC)の重要性は大きく低下。」


「その一方で、中国の台頭により、米国はアジア方面に米軍を振り向け、中東の米軍を削減しようとした。米国GCCの動揺を抑えるためにGCCとイスラエルの関係正常化を通じて、アブラハム合意へ。この合意はイスラエルにとって、パレスチナ国家を樹立させることなく、対立関係にあったアラブ諸国との和平を進めたという意味で外交的な勝利だった。イランを封じ込める『イラン包囲網』の構築である。」


「さらに、米国はイランと長年のライバル関係にあるサウジと、同じくイランと敵対するイスラエルを結びつけることで包囲網を築こうとした。サウジはイスラエルとは外交関係を結んでおらず、表向きは対立関係。水面下では対イラン戦略において協力関係にある。イスラエルとイラン、サウジをめぐる三角関係だ。」


●米国とサウジとの安全保障条約

「バイデン政権はイスラエルとサウジとの国交正常化を条件として、米国とサウジとの間で安全保障関係の強化や、民間向けの核開発能力の付与などを提示。イスラエルにとっても、サウジとの国交正常化が実現すれば、イラン包囲網を強化できる。しかし、ハマスによる10/7の攻撃で状況が変わった。」


「つまり、ガザで多くのパレスチナ人が死亡する中で、イスラエルと国交を結べば、アラブ社会からの反感を受ける。イスラエルと国交正常化できない。しかし、米国と安全保障関係の強化や、民間向けの核開発能力の付与などは欲しい。サウジの最大の敵はイラン。イランの脅威に対応するためには米国やイスラエルとの同盟関係が必要。」


「そこでサウジはイスラエルとの国交正常化抜きに、米国から安全保障の確約を得ることで合意を目指す。米国もイスラエルとの国交正常化を絡めるべきではないとの立場に。」


「つまり、これまでは米国議会や国内世論を説得するために、イスラエルとサウジとの国交正常化が前提条件だった。しかし、状況が今や変わりつつある。米国はイランの核武装の可能性が高まる中で、サウジとの安全保障条約が必要と考える。その場合、原子力の開発も含まれる可能性。核拡散に。元々、サウジは米国ともイスラエルとも協調したい。経済最優先の国になっている。」


●トルコも…

「トルコのアックユ原子力発電会社が2023年12月に起動許可。建設工事を請け負ったのはロシアの原子力総合企業ロスアトム社。エルドアン大統領『トルコはイスラエルの核問題が忘れ去られることを容認しない』。イスラエルの増長に対する対抗策として原子力を打ち出しているのではないか。」


「トルコもまた、紛争を自国の利益に結び付けようとしている。中東や周辺国は核武装の準備に事実上、入っている。」


●どうするのか、日本の核問題

「日本はどうするのか。韓国では核武装の議論が進み、韓国民の大半は理解を示している。アジアの有事が迫っている。それでも岸田総理は、核なき平和な世界などと寝言。」


「米国はイスラエルの事実上の核保有を黙認してきた。イスラエルの核問題を我々のために応用すべき。米国がイスラエルの核を黙認しているならば、我が国にも黙認すべきだと。我が国が核武装をするための機運を上げていく絶好の好機だ。」


「ほとんどの日本人が『そんなことできるはずがない』との思考で去勢状態だ。実際には、すぐにできる。明日にでもできる。自衛のための核武装に何の法的制約もない。歴代の内閣法制局長官は『自衛のための必要最小限』の範囲において、『憲法は核保有を禁じていない』と答弁。やるかやらないかは時の政権の意思にかかっている。もっと言えば、国民の意志。この点では、韓国人の方が進んでいる。」


「問題は同盟国の米国がどう反応するか。そもそも、核武装は米国に秘匿してやるべき。もし、米国にお伺いを立てれば、米国は反対する可能性。実はトランプとて認めない。だが、イスラエルもインドも事後黙認だった。」


「台湾を巡り軍事的緊迫が高まる中、中国はこれまで何度も、日本への核攻撃を示唆。東アジアの情勢は緊迫感を増している。米国議会では、中国が過去最大となる核戦力の増強を進めていると指摘。」


「安全保障において日本の自立性を高めなければならない。それには、必然的に核武装が含まれる。日本が独自に核武装をして、抑止を機能させなければ、東アジアの平和と安定がかえって損なわれる。インドとパキスタンは双方が核を持った時、和平が進展した。あくまでも、平和のために必要な核武装である。」


「被爆地選出の岸田総理は、核軍縮を『ライフワーク』に掲げている。『被爆地・広島出身の首相として、核兵器のない世界に向け、全力を尽くす』…まったくの寝言に等しい。そもそも、この危機が迫っている時に、被爆地選出の政治家を総理にしてはいけなかった。今の岸田政権では、核戦略についての議論すらできない状況になっている。日本が自滅へと向かうのかどうか、岐路に立たされている。」

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