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トランプ関税の真意は脱中国の自由貿易経済圏「強制的TPP」にあり~日本の政局と石破政権延命の構図~

  • 執筆者の写真: 松田学
    松田学
  • 4月15日
  • 読了時間: 11分

世界を揺るがすトランプ相互関税。発動の直後に90日間の停止(10%を上回る部分)がトランプ大統領から発表されました。理由は、私が前号のコラムでも可能性を指摘した通りの「トリプル安」、やはりマーケットのリスクオフは株から債券、すなわち米国債のほうにも来ました。中国が米国債を売却との噂だけで米国債売りとなり、長期金利が上昇。


さすがの強気のトランプ氏もこの道のプロであるベッセント財務長官の進言に従わざるを得なかったようです。年間で1兆ドルにものぼる利払費の圧迫で、減税もままならなくなる。偉大なる米国にとって国債や米ドルの暴落は避けたいところでしょう。ドルへの不信は米ドル基軸通貨体制をも損なう。これが中国による最大の報復だったかもしれません。


やはり市場の論理にはどんな強力な為政者であれ、従わざるを得ない。昨年の衆院選で減税政党が躍進し、現在はトランプ関税対策として参院選向けに各党でも減税や給付金が検討される状況にある日本にとっても、このことは対岸の火事ではないでしょう。


かつて英国のトラス政権は、財源無き大型減税で市場から英国売りを浴びせられ、1か月半の短命内閣に終わりました。市場が買わなければ国債発行は増やせないし、減税も積極財政もできない…日本の消費税廃止論者やMMT論者たちが見落としている点です。


だから、国債を日銀が買い、これを政府発行電子マネーで償還して減らしていく松田プランという出口が必要。このことを今回ほど明確に示す事態はなかなかないと思います。


それはさておき、今回の相互関税については「米国のエゴの保護主義で自由貿易体制を破壊する」との見方が圧倒的であり、トランプ大統領の評判もさんざんです。ただ、前号でも述べた通り、これがターゲットを中国に置いている措置であることに加え、もう一つ、山口敬之氏が松田政策研究所CHで指摘したように、これが実は「強制的TPP」として自由主義圏で自由貿易を実現することが狙いであることは、あまり知られていません。


そもそもTPP(環太平洋経済連携)は、国営企業体制の中国が参加できないルールを定めて、環太平洋の自由主義圏で関税を撤廃し合うなど、自由で公正な経済圏をもって中国包囲網を形成するものとしてスタートしました。ここからの脱退を決めた第一次政権のトランプ氏は、対中国という点で矛盾しているのではないかと思ったものですが、トランプ氏にせよバイデン氏にせよ、政治的に保護主義を採らざるを得なかったのでしょう。


この矛盾を解決するのが、一見、保護主義的にみえる手法をもって、中国とのサプライチェーンを排除する形で自由貿易を実現しようとする今回の相互関税措置だといえます。現状では、米国は中国には145%、これに報復した形の中国は米国に対して125%の高関税。報復する国(中国)には更に報復関税を上乗せするが、そうでない国とは協議に応じる。


すでに70か国以上が米国との協議を要請し、その筆頭が日本だとされていますが、それより前に真っ先に米国に具体的な提案をしている国が、いずれも今回高関税が表明されたベトナムと台湾のようです。米国に対して関税をゼロにする…と。米国と相互に関税セロとなれば、米国はこれら国々から安く製品を輸入でき、インフレ抑制にもつながる…。


トランプ氏が敵として闘うグローバリズム(=DS)の政策のもとで米国は製造業を失い、金融とITだけの国になってしまいました。日用品ですら、その多くが米国内で供給できない。軍艦を建造し軍事力を維持するためにも、中国とのサプライチェーンに依存しなければならないわけですから、これは安全保障を米国に依存する日本にとっても懸念すべきこと。この深刻な事態に対してトランプ関税の目的は、国内製造業の復活にあります。


しかし、関税を回避するなら米国に投資せよ、と言っても、そうすぐに各国が米国での現地生産へと移行できるわけではありません。まずは、米国内で生産されていないがゆえに「保護主義」の対象にもなり得ない産品について、中国以外の信頼できる国々からの輸入を関税ゼロで促進する、高関税はこれをディールで実現する手段であり、その意味では自由貿易推進措置といえなくもありません。よく考え抜かれた措置だともいえます。


こうしたトランプ政権の真意がみえなければ、これからの日米交渉も良い成果をあげないでしょう。トランプ氏から全く信頼されていない石破総理としては、せめて対中包囲網でトランプ氏と共同歩調をとる姿勢を具体的に示さねばならないはずです。


その石破政権ですが、石破氏では参院選には勝てないのは誰もが分かっているにも関わらず、自民党内で石破降ろしが起きない不思議な状態が続いています。山口氏によれば、これもDSの仕業…。同氏は、DSとして財務省を国民の敵だとして挙げています。


DSとは、選挙で選ばれていない官僚機構や利権集団が国を支配している状態を指し、その背後にはグローバリズム勢力がいるとする考え方ですが、私に言わせれば、同省の緊縮財政も、前述のように国債発行が金融市場によって制約を受けていることが根っこにありますので、本当のDSはこの面でもグローバル金融勢にあると思います。


それはともかくとして、今回は以下、石破政権やトランプ関税の真意、そして今後の政局などについて、山口氏が私との対談で語った内容をご紹介します。


●石破降ろしが起きない構造…DSと財務省が支配する自民党政治

山口氏のチャンネルでは、石破総理の顔を画面に出しただけで、「見たくない、嘔吐を催す」などと評判が悪く、あまり石破氏の話をできないでいるということでしたので、私のチャンネルではまず、この石破総理について語っていただきました。山口氏によると…、


「石破内閣をいま支持している人は頭がおかしいのではないか。憲政史上、あるいは戦後、ここまで酷い総理と閣僚は初めて。メディアの支持率は信頼できない。3割も支持率があるはずがない。マスコミのフェイクが石破政権を延命させる方向に機能している。自分が100人会って支持するという人は一人もいない。岸田氏以上の酷さだ。」


「それでもしぶとく政権が続くのは、それで得する人たちがいるからだ。高市氏を総理にしたくない人たち。総裁選では第一回投票では46人しか石破氏に入れなかったのに、これを第二回投票でひっくり返したのは、バイデン民主党とその背後にいるDSとつながっている連中だ。岸田と菅という、石破が大嫌いなはずの二人の大物が石破に票を寄せた背景には、103万を178万に、ガソリン暫定税率廃止ということが一番イヤだった財務省がいた。」


「石破政権でいちばん喜ぶのは財務省と自民党税調と、その背後のDS。彼らが仮死状態の石破政権をマリオネットのように動かしている。」


「岸田前総理は恐怖によって支配されている。今頃になって能登に。ウクライナ支援をしなければ能登支援ができたのに、自分でやりたいようにできなかった。バイデンに言われた通りにやり、能登が未だに苦しんでいる。倒れたバイデン政権に未だに支配。」


「それが高市首相になると曝露されることが一番怖い。岸田氏の総理返り咲きへの動きは虚栄心というよりも、悪事がバレる恐怖によるもの。バイデンも予防的恩赦を出した。完全にバイデン政権に従属していたことが表沙汰になることを岸田は怖れている。」


「石破総理で参院選は闘えるのか?まず派閥を解消した。それが政権交代の原動力だった。今は派閥として石破降ろしができない。そして、売国的政策を批判する保守派の政治家を非公認にして、総選挙で3分の1に減らした。石破降ろしの母体が壊され、脅されている。いま政権批判をすると、刺客を立てると。特に衆議院に多い。森山と菅のラインでやっている。一個一個、事前に反石破の動きを詰んで歩いている。」


●首脳会談のたびにトランプ氏から相手にされていない

「2月の日米首脳会談が成功だったとのメディア報道はウソだった。失礼なことに、トランプ氏は会見を終えるとさっさと帰ってしまった。トランプ氏はあんな失礼なことをする人ではない。今回の関税を巡る電話首脳会談は25分でなく20分で終わった。通訳が入るので実際には10分。一つのテーマでも30分かかるはず。」


「石破と話すことはない、ガチャンと電話を切るような失礼な終わり方だった。握手もしないで出ていったのと同じことを今回もやった。そして、安倍氏を会見で持ち上げた。電話会談のあと、日本は米国を酷く扱っていたとコメントした。電話会談がうまく行っていたら言わないセリフだ。安倍の敵は俺の時、印籠を渡された。」


「大事なのは石破を代えること。今の策が米国に全く刺さらない。論理的思考力が低い。この局面で最もふさわしくない人。トランプ関税の本当の狙いがわかれば打開策がある。」


●高関税政策とは中国包囲網への強制的TPP…ブロック内自由貿易でインフレも抑制

「米国はもう、各国と交渉している。ベトナムや台湾が関税ゼロと言ったら、具体的な交渉が始まった。これがショック療法の答だ。中国が最終ターゲットになっている。」


「ベトナムについては、一つは中国からの迂回。もう一つはiPhoneの組み立て工場がベトナムにあること、もう一つはコモディティの巨大供給国。ちょっとした日用品はベトナム製かカンボジア製が米国では圧倒的。」


「目指しているのは『強制的TPP』。元々、TPPスタートの目的は中国の孤立化だった。国営企業の排除など、中国が入れないルールをまず作った。中国製品がないと米国が立ち行かない。これをやめるために、環太平洋の自由主義国が相互に関税をゼロにしてブロック化。ここからトランプは離れた。そして今回、ベトナムなどに関税ゼロを仕掛けている。」


「MAGAの帽子を米国では作れない。トランプが怒って、高くていいから米国でと、米国に帽子を創れる工場がなかった。これはWTOの体制のもとでグローバリズムによって分業が進んだ結果、米国の中国依存体質となったもの。これを進めたのがDS。米国が安心できる国々でないと、中国に対抗できない。」


「今回は全部に関税をかけて各国とディールしていく。米国製造業を保護しようとする関税ではない。そもそも米国内では工場が壊滅している。それを進めたのがDSの経済政策。」


「米国での現地生産をと言っても、実際にすぐにできるわけではないので、特定の国々と自由貿易をする。ベトナムにからコモディティが関税ゼロで輸入ですぐに入る。現地生産では間に合わない。だが、中国は報復ということで、このディールには乗ってこない。『この指とまれ』、中国と米国、こっち来るのか、米国に来るなら関税ゼロだと。それで米国では今より安くモノが入り、インフレも抑止できることになる。」


「石破のみならず、メディアもこのことが分かっていない。トランプ氏は、経済的グローバリズムが創った現状を変えようとしている。」


●次の政局は?国民が闘う相手は明確、財務省とバックにいるDSこそが本当の敵

「次の参院選で自民党が惨敗するのは間違いない。衆院選なら政権交代だが、今の仮死状態の石破政権で我が世の春なのが財務省やDS。彼らは石破政権には何の愛着もない。自民党が選挙で敗けても、総理は高市氏以外になればいい。」


「予算修正で維新とお茶を濁していちばん喜んでいるのは財務省。立憲民主党とも国会で既に大連立になっている。内閣不信任案で野党は内閣を倒せるのに、あえて瞬殺していない。この通常国会でいずれ内閣不信任案は出るが、出されてもかっこがつかない。」


「出したら通る?予算に賛成した維新が賛成しなければ成立しない。維新が反対しなければ、不信任案を自民党は拒絶できる。維新は前回の衆院選で比例を800万から500万票に減らした。まともな政党なら石破に協力しないはずだが、自公と維新は集団自殺でいいと。党首が理解できていない?」


「どうみても参院選は国民民主が圧勝。反緊縮財政で国民民主が伸び、それに加えて参政党が反グローバリズムという点でも伸びる。参政党だけが反グロ。DSという単語を使う国政政党だ。他は世界の構造が分かっていない。親米保守も自民党の9割も…。」


「参院選でボロ負けし、もしかすると、自公で参院が過半数を割る可能性。これは『ねじれ』ではない。完全に裏に行く。両方で過半数割れ。憲政史上初めてとなる。本会議場が再編、自民党が誰を総裁にするか、2つの大きな政治の流動化。」


「本来は昨年の衆院選で始まっていた流動化が顕在化する。連立するなら維新、最悪は立民との大連立。自民と野田立民の連立なら、今より素晴らしい財務省の天国がくる。」


「石破ほどウソつく政治家はいないが、石破的な人物は高市氏以外に、いくらでもいる。岸田氏も再登板に意欲。『高市氏はガス抜きに過ぎない』という人たち、『何もできない』と、そういう論評をしている人たちの背後にも、実は財務省がいる。」


「日本の大手メディアは財務省の広報になっている。そして高市氏や参政党のネガティブ情報を流している。コバホークを押し立てた人たちは、保守票が高市に集まらないようにと考えた。彼を立てたのも実は財務省。」


「DSと言いながら、あまりディープではなく、浅い見え透いたステートだ。日本国民が戦うべきなのは、これである。」


 
 
 

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