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  • 執筆者の写真松田学

国の命運を左右する5月7日への総理決断~本当の危機を見極めるための冷静な検証を~

外出自粛は国民の義務。分かっていても耐え難い、出口はいつなのか…。人々のストレスがたまっているためか、ネットでは異説を叩きまくる狭量さも目立っているようです。それにしても、日本では欧米に比べて桁が2つ少ないのはなぜなのか?松田政策研究所を中心に、現場の方々も含め、これまで私なりに色々な専門家と積み重ねてきた議論から得られた感触は、人類が共存してきたウィルスの世界は、まだ人間には未知の領域が大きい複雑系だということ。断定や思い込みで異説を排することなく耳を傾ける謙虚な姿勢こそ、専門家ではない者がとるべき科学的な態度ではないか。それが私のスタンスです。


連休明けに向けて問われるのは冷静な科学的論拠に基づく厳しい政治決断。果たして安倍政権にはできるのか…。日本はいま、新型コロナについての本当の危機が見えていないという意味での危機なのかもしれません。


●コロナでも異説を排する規範文化の危険性

私は日頃から、松田政策研究所で配信した動画をフェイスブックで紹介しています。武田邦彦先生といえば、前号のこのコラム欄でもご紹介した「<楽観論>日本はいますぐにも自粛を解除すべし…との説」の論者ですが、これを紹介するFB記事に対する数々のコメントには唖然としました。なかには賛同するご意見もありましたが、大半はバッシング。


ご本人の名誉のため名前は出しませんが、財務省の私の同期で本省局長まで出世したエースの一人の某君など、反社会的な記事だ、削除しろ・・・!私が色々な議論の積み重ねの上に書いているとコメントを返しても、みっともない言い逃れはやめろ!


よくSein(ザイン)すなわち事実は何かを見極める「である」論と、Sollen(ゾルレン)すなわち主義や価値領域に関わる「べき」論とが混同されて、議論にならない傾向が日本では強くみられます。私が昔、属していた日本の官僚機構は、ここまで規範文化の弊害に染まっていたかと、同君を賢いインテリと一目置いていただけに、暗澹たる思いになりました。歴史的にみても、日本ではこの「空気」文化こそ、しばし国を誤らせてきたもの・・・。


この旧友からの批判がそのまま、日本の危機を象徴していると思った次第ですが、まず、新型コロナに関する松田政策研究所での発信活動で対談相手となっている登場者の発言内容は、必ずしも私の見解ではありません。リアリズムを標榜する当研究所としては、何事も真実を見極めることは容易ではないため、できるだけ幅広く、様々な仮説も含めて、視聴者に自ら考えていただく素材を提供しています。メディア報道を疑ってみることも、こうした思考の切り口になりますので、あえて異説を唱える方にもご登場いただいています。


特に新型コロナについては、私は専門家ではありませんので、こうした異説について断定的なことを押し付けることはしておりません。要すれば実証的な反論をぶつけていただき、真実は何かを見極める姿勢で、専門家の方々にきちんとした検討を促すことが目的です。また、武田邦彦先生のように、なかには外出自粛を直ちにやめるべきだと論じる発言者もおりますが、民主主義のプロセスを経て選ばれた政権が率いる政府からの要請に従うのは国民として当然のことです。ここは大人の議論の場だと考えています。


●未解明の土着コロナウィルスにも陽性反応するPCR検査をめぐって

ただ、新型コロナについて私がどんな極論をもご紹介するに躊躇しないことには、理由がないわけではありません。それが、本コラム欄でも何度かにわたってご紹介してきた東大の同級生の二人の専門家たちとの、2か月にわたって交わしてきた議論です。


一人は、東大医学部を出てから日本を代表する大病院の一つで名医と評判の高い臨床医として活躍し、現在も毎日、臨床の現場で闘っているA氏。そんな立場もあって、公言すれば叩かれるような内容を名前を出して世に出せないことから、私がA氏に代わって、批判を覚悟で発信しています。A氏は東大の理三にいた20歳前の頃からの付き合いなので、人物もよく知っていますが、何らの利害や思惑のない信頼できる人物による真摯な現場からの声として受け止めています。そのA氏の見解をあらためてまとめますと・・・、


・医療の現場でみていると、少なくとも日本の場合、PCR検査による陽性反応は、新型コロナではなく、日本の土着コロナウィルスに交叉反応して陽性反応しているケースがかなり多い。その場合、ただの風邪である。このことは100%の自信をもって言える。


・すでに新型コロナの遺伝子構造が解明されているので、PCR検査がそれに陽性反応するのは当然だが、そうした亜種については遺伝子構造が解明されておらず、そうである限り、PCRが亜種に陽性反応していないと断定することはできない。


・・・↑これについては、私の発信記事を見たある医師が、風邪を起こすコロナウィルスは数種類あり、それらにはPCRが陰性反応している旨が証明されており、これは間違いだ、とのコメントをしていますが、A氏が言っているのは解明済みのコロナウィルスのことではなく、我々が共存してきた、まだ未解明の無数の土着コロナウィルスのことです。・・・


・武漢ウィルスが変異を遂げているように、土着コロナウィルスも変異を繰り返している。


・武漢ウィルスは恐ろしいとしても、日本では一応、水際で止められているのではないか。


・日本人全員が今のPCR検査を受けたら、50~200万人位は陽性だろう。もちろん、殆どが、土着型ウィルスの誤検出。重症者も、新型コロナか土着亜種をたまたま保菌しているだけで、重症化が他の原因である場合が相当多い。(ちなみに、あのイタリアでも、専ら親型コロナだけを原因とする死者は十数名との防疫専門家の記事が報道されています。)


・大事なのは一人一人が免疫力を高めること。外出自粛は有害。バカ騒ぎはやめるべき。


…もう一人は、これも東大の同級生ですが、PCRに10年も携わったことのある生物学者で、現在は某大学教授のB氏。彼によると、PCR検査は大変難しい検査で、プライマーの設定のやり方だけでなく、検査をする技師の熟練度によっても結果は大きく変わる、技師たちは生物学の専門家でもないとのこと。PCR検査の裏表を知り尽くしたB氏はA氏の見解に同調し、二人でいくつかのPCR検査改善案を考え出しました。その一つは、異なるプライマー設定を組み合わせて検査すると、精度が著しく高まるというものです。


いまの事態は精度が高くないPCR検査がもたらした大混乱なのだとA氏は主張しています。だからといって、私はPCR検査をやめろと主張しているのではありません。現状ではこれ以外に検査の方法はなく、AB両氏の見解を踏まえて、PCR検査の精度の向上に専門家たちが真剣に取り組むべきだというメッセージを出すことが私の真意です。


●いつまでやる?緊急事態宣言~説明できない欧米との圧倒的な違い~

ここで今回ご紹介したいのは、現在の緊急事態宣言の「出口」を集団免疫の視点から冷静に模索する議論を提起しているアゴラ代表取締役所長の池田信夫氏との対談です。時間がかかる特効薬の誕生やワクチンの開発・普及がない限り、それ以外に真の着地点がないのが集団免疫。残念ながら日本の現状は、「集団免疫」と言った途端に「高齢者を見殺しにするのか!」…で議論もできない。そこには牢固たる「リスクゼロ」神話がありそうです。


池田氏曰く・・・「政府が打ち出しているのは接触率8割削減。その元は西浦博・北海道大学大学院教授の非公式な場での発言だが、それがいつの間にか政府の方針になったもの。東京では2週間後に1万人の感染者と言っていたが、実際には3,000人。日本では普通のインフルエンザの患者数1,100万人、死亡者数3,000人が昨年の数字。新型コロナは今のところ全国で約300人の死亡者で、これはインフルエンザよりもずっと少ない。」


「当初は感染爆発の危険があったが、感染者数も死者数も4月の上旬にピークアウトしていた。85万人の重症者が出て42万人の死亡者が出るとしていた西浦教授の前提は非現実的だったが、これは本人も認めている。」


「欧米と日本とで条件に何か大きな違いがある。100万人あたりの死者では、欧州(伊や英など)では300~500人なのに対し、日本は3人に過ぎない。この二桁の数字の差は、生活習慣等(国民皆保険制度が要因と言っている医療関係者もいますが…)ではとても説明できない。日本もすぐに欧米のようになる?と言うが、実態に合わない。このことを学問的に追求している人たちもいるが、公の前では言えないでいる。」


「日本には中国ウィルスがすでにたくさん入っていて免疫を持っているという説もある。韓国も大邱(テグ)以外は日本と死亡率はあまり変わらない。中国も武漢以外は日本とほぼ同じ。東南アジアの国々も・・・。中国に近い東アジアの国々に共通の免疫があるのか…?他のコロナウィルスで抗体を持っていることが免疫の理由かもしれないが、今のところ医学的な説明が難しい。」


・・・日本の場合、未確認の亜種土着コロナウィルスにPCR検査で擬陽性反応しているケースが多いというのが、私の友人の現場臨床医からの声であるという点については…、

「NY州では20%感染との数字もある(注:抗体検査に関するその後の報道では13.9%)が、日本では広い意味でのコロナに10%感染しているとすると感染者は1,200万人、これに対して現状は300人の死亡者なので、死亡率は0.0000何%ということになる。日本人はすでに弱毒性コロナに感染していて抵抗力が強いのかもしれない。」


「その要因として考えられるのがBCG接種。欧州でも東欧は低く、南米もそうだが、共通点はBCG接種を義務付けている国であること。南米でも義務付けていないエクアドルは死亡率が高い。新型コロナとの疫学的な相関関係はBCGでは100%。スペインとポルトガル(BCG接種国)で死亡率は3倍も違い、同じような国であるイランとイラクでは30倍も違う。東西ドイツもコロナ感染率が3倍違う。東独は2000年代まで接種していた。」


●リスクゼロ神話がもたらしている日本の本当の危機

・・・それでも、医療現場からは、例年になく肺炎患者が増えているとの声が出ています。

「統計的には例年のインフルエンザほどではない。一番の問題は、みんなが恐怖心を持つこと。普段なら風邪ひいた、少し辛抱しようとなるところが、外来に行って、みつかると指定感染症だから入院となる。医療スタッフが対応できない。集中治療室のネックもスタッフ不足にある。救急外来が混んでいる。インフルで3,000人死んでも、いちいち報道していないが、新型コロナについては、国民みんながワイドショーで恐怖を抱くことが医療崩壊の原因。WHOがインフォデミックと言ったように、情報災害。」


・・・『パスカルの賭け』という言葉があります。神が存在するかどうか、人間にはわからない。そのとき、神が存在するとして善行を積めば天国に行けるが、神がもし存在しなくても、善行を積むことは良いことだ、というものです。

「危ないほうに賭けて何事もなかったらハッピーというのは、他のことならよいが、失業、倒産で1998年は自殺者が8,000人増えた。(その後、何年か3万人台で推移しました・・・)何もなくてよかったね、では済まない。その犠牲者の数は桁違い。」


・・・確かに、外出自粛の中で犯罪も増えています。カネづるに困った反社勢力が債権回収で動き回っていて、破産申請しようにも、自粛の中で裁判所が休んでいてできませんし、破産申請ができないので、実際の倒産は統計に現われないようです。1人の自殺者が出れば、一生癒えない傷を心に負う人が6人とも言われます。ある精神病医の奥様から、外出自粛のなかで患者が激増中で、社会は酷い状態だとの声も聞きました。外出自粛がナンセンスだとわかっている現場の医師は多いものの、皆さん、言えないでいるとも耳にします。


本当に困っている人々が急増しているなかで、緊急事態宣言の着地をどうするのか、5月6日までの連休中に官邸で決めることになるようですが、再延長との声が強いようです。


「自民党も菅官房長官を始め、多数派はやめたいと思っているのではないか。しかし、安倍総理や側近たちは『やってる感』を出したい。点数稼ぎになる。そもそも感染爆発している状況ではなかったし、最初は安倍さんも絶対やるというようにはみえなかった。それが、西浦教授の数字を安倍さんは記者会見で使った。あの数字を取り巻きたちが利用した。」


「その前提となっている基本再生産数2.5は、日本では出ていない数字。日本では1前後。東京で1.7。あれは1.7で良かったと、週刊誌で西浦氏自身が述べている。結果として、感染者数は実際はこれぐらいと同教授が思う数字を3倍に膨らませた。警告のための誇張だったろうが、それで全国津々浦々お店が閉まる大変な事態になった。専門家会議は2.5とは言っていない。根拠がない。」


「再生産数1.7で、感染者数を多く見ても、死亡率から計算される死者数は1,000人程度。インフルでは毎年、何千人も亡くなっているのに、新型コロナ対策の何万分の1の負担で済む予防接種は自己負担である。」


「抗体検査を進めてみて、かなりの人が抗体を持っているとすると、これからコロナに罹る人に対する自然の防護壁になる。10%の人々が抗体を持っていて、一応、集団免疫だとすると、ゆるやかに感染を増やしたほうが現実的な選択肢になる。」


●国民合意に向けて安倍総理は政治リスクを伴う決断ができるのか

・・・ロックダウンでは逆に集団免疫ができません。緩和してまた感染が広がってロックダウン・・・を繰り返すことになり、終息に2年程度かかる。経済社会はもたないとされています。


「感染が広がるからと、強制的な法律を作ってでもロックダウンしてウィルスをゼロにする、というのは絶対に無理なこと。これだけ広がると、根絶は目標にできない。では何を目標にするのか?ゼロでなければ何が目標か?…となると、言えない。ある程度、感染を容認すると言うと、政治的に危険なことになる。決断できるかどうか・・・。」


「日本には恵まれた条件がある。感染力は欧米の100分の1。2年ぐらいコロナと付き合うことを覚悟すれば、今の医療資源の限度内でコントロールしながら共存することを考えることが選択肢になる。安倍総理が、こうしたリスクをとることを言わないと、役所もリスクをとれない。集団免疫策をとっているスウェーデンの場合、英国と同じく感染力が強い状況ゆえ、医療資源の壁に突き当たる可能性があるが、日本はそうではない。」


・・・もしかすると、欧米と日本とでは異なる病気なのか…?そんな素朴な質問に対し、池田氏が言うように「そういう研究もある」なのだとすると、そういう声をメディアでなかなか上げられず、国民合意をとれないでいるうちに、自粛期間が長引けば長引くほど、経済も社会も、そして命も・・・、取り返しのつかないことにならないか。


以上の池田氏との議論を、専門家ではない私には自信をもって排除できる術がありません。実証的な議論を専門家にはぜひ、急いで進めていだたければと思います。


一説には、安倍総理の経産省からの取り巻きたちによる、経済や民生への政府介入を強め、通産省の夢を取り戻す画策か・・・。そういえば、「産業競争力会議」や「国家戦略特区」など、アベノミクスの「第3の矢」には、そうした経産省の思惑を強く感じたものでした。


一部の思惑を排して国民全体のために5月7日以降をどうするのか…。リスクゼロ神話や政策的価値判断に基づく建前への思い込みが、とんでもない犠牲を日本にもたらさないよう、まずは、ここでご紹介した議論に対する実証的な検証を行った上で、安倍政権には判断をしていただければと思います。その結果として必要となるかもしれない政治的リスクをとる覚悟が安倍総理にできるのかどうか、このことが問われる局面が近づいています。

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