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  • 執筆者の写真松田学

台湾侵攻は秒読みになった?いまこそ本物の国防論を~戦争を回避するために歴史が伝える教訓とは~

習近平の三期目入りが決まった先日の中国共産党の5年に一度の党大会で、衆人環視のなかで胡錦涛氏が壇上から退場させられたシーンが世界に衝撃を与えました。この場面を見た多くの識者が感じ取ったのは、中国による台湾併合の時期が早まることでした。


胡錦涛氏は大事な人事が載った書類を覗き見ようとして制されたようで、これは長老の影響力を排し、もはや独裁者が何でもできる体制が確立したことを象徴するもの。習氏の終身体制は台湾併合によって正当化されるものでもあり、もはや軍事侵攻は秒読みか…?


多くの軍事専門家たちが遅くとも来年には台湾侵攻ありうべしと言い始めましたが、もちろん、Silent Invasionが常態化したこんにち、併合そのものが軍事力以外の手段で行われる可能性も否定できません。上海には台湾人が100万人居住する地域があるともされる現在、国民レベルでは中台が一体化しているなかでの軍事侵攻は、下手をすると同胞を殺すのかとの反発を中国人民の間で惹起するリスクもあります。ただ、日本としては最悪の事態を目前の問題として認識すべき切迫した状況になっているのは事実でしょう。「台湾有事は日本の有事」。旧統一教会問題で国会がヒートアップしていられる事態ではありません。


ウクライナで西側の武器在庫が尽きている現時点こそ、侵攻の絶好のタイミング。二正面作戦に対応できない米国は台湾有事では軍事介入どころか、グァムまで撤退するという説もあります。では、日本は有事にどう備えるべきかといえば、戦争がないことを前提に戦後77年を過ごしてきた日本の状況は誠にお粗末。台湾有事では尖閣占領、先島諸島など沖縄方面ではミサイル着弾…住民はどうする、欧州や韓国では当たり前のシェルターは?


もう一つ、世界が懸念しているのはウクライナ戦争でのロシアによる核兵器の使用。プーチンとしては4州の併合をもって停戦したいのが本音ですが、この4州を奪還するまで西側は戦争の手をゆるめません。弱いはずのウクライナがここまで善戦しているのも、米国の近代兵器やイーロン・マスク氏が提供しているような高度なITシステム。では、西側が目指すようにプーチンを徹底的に追い詰めるとどうなるか。彼としても引けません。


ロシアには「ポセイドン」という「最終兵器」があることが最近、噂されるようになっています。これは潜水艦から発射する核魚雷のことで、高さ300~500mの核物質入りの津波を起こすとか…。例えばニューヨークに海中から撃ち込めばエンパイアステートビルも飲み込み、内陸数百kmにわたって到達する津波が核汚染を広げる。日本はG7と一緒にロシアを敵国に回してしまいましたが、これを東京湾に打ち込む可能性もゼロではないとの見方もあります。そうなると、関東平野全体が数十年にわたって人が住めなくなるとか…。


やはり、核抑止の鉄則である「やられたら、やり返す」を本格的に考えないと日本国民の命が守れなくなっているように思います。自民党は「反撃能力」を議論していますが、核による反撃を前提としないなかで、それがどこまで有効なのか…?


では、そもそも戦争はなぜ起こるのか。その根本原因を追究するのが参政党です。これについて、今回は、「戦争と平和の世界史」を上梓された茂木誠氏が松田政策研究所CHで語った内容をご紹介します。ヒトには生来、暴虐性があり、人類社会で戦争を防ぐことはできない、だから、その被害をいかに小さくするかに人類は知恵を絞ってきた。それが主権国家であり、国際法なのですが、結局、重武装をしなければ自国の平和は守れないというのが、歴史が示す冷徹な真理のようです。徳川幕藩体制「パックストクガワ―ナ」の平和も、日本が当時、世界一の鉄砲保有国、世界有数の軍事力国家だったから実現できた。


こんにちの戦争の原因はウクライナ戦争を西側が引き起こしたことが示すように、マーケットと投資先の争奪であり、やはりグローバリズム勢力の思惑といえそうです。かつては中国マーケットを巡る英米、日本と米国を戦わせたソ連のコミンテルン、現在はグローバル資本(→ウクライナ)、中国共産党もグローバリズム…。


だからこそ、グローバル全体主義こそが真の敵とする参政党の立場は、やはり正しい。今回は、私が考える「国のまもり」の要諦についても述べてみたいと思います。


●戦争の被害を減じる知恵としての主権国家概念と日本の重武装幕藩体制のもとでの平和

まず、茂木誠氏が述べたところによると…「戦争の根本原因を考えるとき、①そもそも人間というものが暴力性をもっているのか、②元々は平和を求める存在なのに誤解があって戦争が起こるのであって、誤解がとければ戦争にならないということなのか、①性悪説と②性善説がある。残念なことに、歴史で起こったさまざまな戦争を調べてもみると、性善説にはならない。人間にはもともと暴力性があって、それをさまざまな理屈で戦争を正当化しているに過ぎない。人間は猿のようなものから進化した。類人猿が殺猿?チンパンジーの群れは殺しもするし、権力闘争もする。これがヒトの遺伝子に組み込まれている。」


「戦争をとめることは不可能、ゆえに、その被害をいかに減らすかのルールをつくることを2,500年間、ずっとやってきた。ここはいいが、ここはダメだと。それでできたのがウェストファリア条約。それまでは各国が正義を掲げて戦ってきた。自分たちはキリスト教という正義を世界で実現するために、邪教であるイスラム教を弾圧する。キリスト教の中でも教皇けしからんと…疲れ果てた。30年戦争を経て、『正義』と言うのはやめよう。各国は対等。戦争の最低限のルールを作ろう。最初の成果がこの条約だった。」


「国ごとにバラバラに法律があるが、それを調停するものがないので、その上に国際法というものをグロチウスが提唱した。中世の神に代わって国際法になった。」


「戦争をしても他国のように残虐なことをしないとされる日本でも、宗教戦争は違った。例えば一向宗。阿弥陀様のために戦っている、極楽寺浄土のために…と。大阪の本願寺は戦国大名並みの軍隊となり、これを信長が潰す。延暦寺もそうだった。日本の宗教戦争を終わらせたのが信長だった。宗教戦争の怖いのは、皆殺しになること。」


「そして、秀吉と家康が日本型のウェストファリア体制を作ったのが幕藩体制。参勤交代や土木事業で疲れさせる。当時、日本は凄まじい軍事強国だった。江戸の初期は鉄砲保有数で世界ナンバーワン。鎖国が可能だったのは、日本が『重武装中立』だったから。秀吉の朝鮮出兵で20万人動員、当時の欧州の30年戦争は数万人に過ぎなかった。欧州の軍を東アジアにもってくるともっと減ることになる。どうやって日本を攻略?東南アジアをものにできた欧州は、日本をどうにもできなかった。」


「主権国家の概念で、最高の主権は国家となり、国家どうしは対等となった。主権国家とは、いずれの国も他国に頭を下げなくて良いということ。その原則を創った欧州が19世紀後半から植民地支配を強め、帝国主義化した。では、アジアアフリカの主権は?主権国家のルールは文明国に適用する、野蛮国には適用されないというご都合主義にした。」


「その中で日本にペリーが来た。あのままだと日本は侵略のターゲットになりそうだった。軍備増強と同時に、欧州人の論理で日本も文明国であることを示したのが明治維新だった。鹿鳴館も文明国であることをアピールするため。それが東南アジアよりも一歩先に日本が行っていたこと。日清日露戦争でも日本は完璧に国際法を守った。結果、条約改正に成功して日露戦争後、日本は文明国の仲間入りをした。」


●20世紀の戦争の原因はマーケットと投資先の争奪、そしてソ連のコミンテルン

「かつては宗教が正義だったが、19世紀半ばからはマーケットを求める戦争になる。市場を閉ざす国は敵だ…そのターゲットはまずは中国。アヘン戦争での英国の目的は領土ではなかった。領土は香港だけ。マーケットだった。日本はアヘン戦争を見ていたので、とりあえずマーケットを開いておこうと考えた。その後に産業を興していこう。私たちの先達たちは世界情勢をよく見ていた。」


では、二度の大戦は…?「日本が文明国の一員になって、日本独自のマーケットを作り始めたのが日露戦争後だった。中国のマーケットを巡って米国としのぎを競い始めた。米国にとって日本は邪魔な存在になる。中国の門戸開放にとって日本は邪魔。」


「モノづくりから、輸出代金を投資して金融へと変わっていったのが19世紀後半だった。投資先として途上国を抱え込んでいこう。植民地の争いが20世紀の戦争の最大の原因。日本は白人社会からみてアジア人なのに、そんなはずではなかったと目障りな存在になる。」


もう一つ、20世紀の戦争はコミンテルンが引き起こしていたのではないか…?「ロシア革命の影響が大きい。20世紀の歴史とは、共産主義と西側がどう対峙するかだった。資本主義陣営内でも競争が激化した。そして、どの国とソ連が組むかの組み合わせが重要になった。日本としては、ロシア革命が日本では起こっては困る。そこでソ連が敵となった。」


「しかし、米国が日本を叩いてきたので、米ソ両国とどう対峙するか。ソ連は、日本にも米国にも手を突っ込んできた。スターリンとしては日米をぶつけて自らは生き残る。日本の開戦に持って行ったのはソ連の息がかかった連中だった。日本と中国も戦わせた。最大の利得者はスターリンだった。日本は米ソのバランスを考え、スターリンは松岡洋石を大歓迎したが、これは裏切られた。」


●グローバリズムとナショナリズムの拮抗…理念は無力、力なくして平和は維持できない

では、ウクライナの教訓は…?「これも、マーケットと投資先の争奪の一環。西側はソ連崩壊でロシアをこじ開け、そのあとロシアが中国のようなおいしいマーケット、資源供給元ならよかったが、プーチンが出てきて国営化した。かつての大日本帝国と同じようにプーチンが叩かれている。グローバリズムとナショナリズムの拮抗という面は大きい。」


「確かに、プーチンのやり方はまずかった。国際連合の枠組みのもとで、ウクライナも主権国家だ。ただ、プーチンを追い詰めたものは…プーチンは、『ソ連崩壊が20世紀の惨劇、あのあと西側の植民地になり、ロシア人が塗炭の苦しみ』と演説。動機は理解できる。」


「グローバリズムにどう向き合うか。20世紀前半と似ている。当時は国際連盟が機能していなかったが、現在も国連などの国際機関が機能していない。むき出しの暴力状態。」


では、日本はどうすべきか…?「今は米国と中国が大国の時代だ。日本はかつて米ソ両大国を敵に回して亡国となった。二度と亡国にしてはいけない。ということは、米中を同時に敵に回していけない。米国はグローバリストだが、日本は現在も米国の占領下にある。独立国家は名ばかりだ。」


「実は、世界の中でも本当の独立国家は数えるほどしかない。ほとんどはいずれの国の保護国。西ヨーロッパはNATOで米国の保護国、東南アジアは中国の保護国。米国けしからんはその通りだが、占領されているので、対等に話ができるためには、米軍に撤退してもらって核武装するしかない。プーチンは核を持っていない国は相手に出来ないと言っている。理念ではなく、力を持っていないと平和を維持できない。」


「当面は、宗主国の米国のお許しを得ながら、少しずつ防衛力を強めていく。今世紀の半ばには米国も世界帝国ではなくなり、撤収する。そのときに、慌てずに、ありがとうございます、待ってましたと自国の防衛力を強化する。今からその時に備える。その時に日米は対等に。良かったら、フィリピンとグァムは日本が守ってもいいですよ、と。」


●「アジア最前線」となった日本…戦争をしない手段としての武力と核戦略

ただ、米国の「撤収」は今世紀半ばを待たずに起きるかもしれません。日本の国防政策をどう組み立てるかについては、以下、私の考えを3点に分けて述べてみたいと思います。


第一に、日本をとりまいている状況ですが、今回、経済制裁で日本はG7と一緒になってロシアを完全に敵国に回しました。日本は中国・北朝鮮・ロシアという「核保有国三兄弟」がすぐ隣にいるという世界で一番、危い国になっています。中国の人民解放軍が昨年、ユーチューブで、「台湾有事で日本が手を出したら日本を核攻撃する」と流しましたが、米国では大問題になっても、日本では報道されませんでした。日本の主要都市は、中国の核ミサイルの標的として照準を定められています。東京が実際に核攻撃されると数分で完全に崩壊するというリアルな現実があります。


現在、「自由で開かれたインド太平洋」に欧州まで加わってきました。中国の暴挙を抑え込もうとして、世界の地政学が大きく変わっています。そのようななかで、日本はどういう位置にあるのかを考えなければなりません。


私がかつて、西ドイツに住んでいた頃は、米ソ冷戦構造のもとで、同国が「ヨーロッパ最前線」と言われていました。核ミサイルがちょうど、西ドイツ国内に配備された時期でしたが、日本は今、米中対立のもとで「アジア最前線」として、当時の西ドイツと同じような状況にあります。しかも、自由で開かれたインド太平洋のなかで、日本が一番、「弱い脇腹」になっています。日本がしっかりした核戦略を持たないと、他の西側の自由主義国家にとって迷惑になるとも言われている状況があります。日本の核「戦略」は、現実から突き付けられた課題になっています。


もう1つの現実は、武力というのものは、昔は戦争するための手段でしたが、今は戦争をしないための手段になっているということです。「やられたらやり返す」ということがあるからやられない。戦争のためではなく、平和を維持するために保有するのが、今の武力。頭をそちらへと切り替えなければなりません。


●国防の要諦は国を守る「国民の決意」…だからこそ「創憲」を

第二に、国防の基本は国を守る「国民の決意」にあるということです。今、中国の「静かなる侵略」というのは豪州だけでなく、むしろ日本の方に対してこそ行われています。土地や企業の買収もそうですが、そこで、ちょっと待てよと言えなければなりません。確かに中国に売ればキャッシュが手に入り、コロナで疲弊した地方の中小零細企業は助かるかもしれません。武力によらず、日常生活や経済活動において受ける侵略だからこそ、一人一人の国民が国を守るという決意を持たなければ国は守れません。


参政党はこのリアリズムを踏まえ、国を守る決意を含めた国民合意を創っていこうとしています。創憲と言って、日本人の手で戦後初めて憲法そのものを書きあげる。「改憲」より「創憲」だというのは、それが、日本が自国の国益を守り、どのような国づくりをしていくのか、できるだけ多くの国民に考えていただく契機となるからです。


そのなかで避けて通れないのが、条文上、自分の国を守るための交戦権をも否定している憲法第9条2項をどうするかです。自衛のための武力行使は国家主権の根本です。いかなる国もその権利は保有していますが、日本だけは憲法で自ら否定しています。


加えて、日本が核攻撃を受けたら、日本が撃ち返すことをしなくていいのか、米国に頼ってばかりでいいのかという問題があります。中国は米国向けICBMを保有するようになっており、米国としても自国が中国から核の報復を受ける危険をおかしてまでも、日本のために中国を核ミサイルで報復してくれるとは考えにくいでしょう。


その時、日本は自分で自分の国を核兵器に対して守らねばなりません。一つの考え方として、核アレルギーの強い日本では核兵器を国内に持ち込むことは困難であっても、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)なら、遠い太平洋から撃ち返すという選択肢もあるかもしれません。これも国民合意が得られるかどうか、議論を尽くさねばならない課題です。


前述の「核戦略」には、もう一つの選択肢があります。専門家の指摘では、日本の原子力技術やプルトニウムの状況に鑑みれば、日本は核武装をしようと思えば、数日でできるそうです。日頃から核兵器を持たずとも、米国の了解をとって「日本はいざとなればすぐにでも核武装する」というメッセージを流すことも一定の抑止力になるかもしれません。


●もう一つは「政治家の決意」…平和を侵す真の敵はグローバリズム全体主義との認識を

第三に、では、当面、どうするかです。それは「政治家の決意」です。「敵基地攻撃能力じゃなくて反撃能力だ」とか、そんな議論をしている場合ではありません。「やられたらやり返す」ことができる状況はつくらねばなりませんし、防衛費GDP2%を「5年以内に」と言っていますが、2%にするのは来年でも良いぐらいです。国のまもりは、それぐらい差し迫っている問題です。財源はどうするかという問題がありますが、国債を発行すれば良いでしょう。そのためにも国債発行を問題ではなくする「松田プラン」があります。


先だって安倍元首相が暗殺されましたが、それまで安倍氏の存在自体が日本を守っていた側面があります。それがガタガタと壊れています。問われているのは政治家の決意です。


もっと根本的なことを言えば、戦争はなぜ起こるのかを議論しようというのが参政党です。1つは軍事利権があります。アフガニスタンが終わって武器が売れない。グローバリストたちはプーチンをおびき出してウクライナ戦争に持ち込みました。次のマーケットはどこか。ペロシ下院議長は台湾に飛びました。これから台湾でも武器は売れます。さらに日本はGDP2%まで軍事費を増やすと言ってくれています。


もう1つはグローバル資本です。ウクライナ戦争は、ロシアの天然ガスや石油を握っていたグローバル資本が、これらを国営化したプーチンから自分たちの手に取り戻すという狙いもあります。グローバル勢力がバックにいることに注目しなければなりません。


敵はグローバリズム全体主義です。私たち日本国民は、まとまってこれと戦わなければなりません。敵は国内分断工作を不断に仕掛けてきます。世論戦、情報戦もそうです。


安倍氏国葬儀に対する反対意見の盛り上がりで日本は「分断」などと報道されましたが、国際社会のなかでは恥ずかしいことでした。日本国民はテレビメディアを信じやすく、日本には簡単に政治まで操作されてしまうという脆弱性があります。だからこそ、国を守るという国民意識が重要です。


参政党は各国のナショナリズム勢力と連携しながら、軍事だけでなく、さまざまな国際利権を握っているほんの少しの人々の利益のために圧倒的多数の世界の人々が奉仕している構造を突き崩していくことが大事だと考えています。それが究極的には世界平和につながることになるのは、茂木氏が示唆している通りだと思います。

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