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  • 執筆者の写真松田学

今次中東紛争の真相と衰退するグローバリズム~ユーラシアパワーへの世界秩序の歴史的変動と日本の危機~

「変化の流れを掴み取るための一丁目一番地は経済です。経済、経済、経済…」これは10月20日からの臨時国会での所信表明演説の一節ですが、岸田総理はその経済について「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から「賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革を強調しました。ただ、支持率低迷の中で「増税メガネ」の汚名を返上したい岸田総理が最も強調したいのは、話題の「税収増分の国民への還元」でしょう。


他方で、減税を匂わせながら迎えた10月22日投開票の二つの国政補選の結果は一勝一敗、勝ったほうの選挙も辛勝と、どうも支持率上昇に「還元」は結びついていないようです。よく考えれば、税収増とは昨年度の税収が伸びた分のことのようですが、国に入った収入は税収であれ国債収入であれ、どこか金庫にたまっているのではなく、何らかの形で既に必ず支出に回っています。見込み以上の税収があっても補正予算の財源か国債の償還に回りますし、国債の償還ですら、国債保有者に対する財政支出として国民への還元です。


もとより財政状態が悪い中での還元の定義があいまいな上、岸田総理が決めた政策の中で、防衛増税と子育て予算倍増に伴う負担増が遠くない将来に待ち受けているのですから、一時的に一人数万円のおカネが手元に来ても、有権者にとっては、増税の前の国民へのご機嫌取りにしか見えないのではないでしょうか。これまでも減税を総理が言い出すと、たいていは「迷走」が起こり、かえって支持率が低下して政権が窮地に追い込まれてきたものです。国民の人気取りのためにと、為政者として安易に飛びついてはいけません。


それでも減税を目玉にする総理はやはり、衆院解散を意識しているのではと、メディアや永田町の関心は早速、その時期に集まっています。ただ、岸田総理が言明するように臨時国会で補正予算を成立させるなら、日程的に年内解散は12月初め、投開票日は12月17日に限られてしまうようです。補正予算未成立のまま11月解散に踏み切るとの説も一部にありますが、6月解散を総理に思いとどまらせた自民党の独自調査の最新の結果は必ずしもよくないようで、党事務局からは年内解散はあり得ないとの見方が流れているようです。


ならば、年明け?ただ、中東情勢が炸裂し、これから起きようとしている国際情勢の大変動の中で、日本には総選挙などやっていられる余裕が当面、ないかもしれません。


実は、ハマス-イスラエル戦争の勃発により、日本は安全保障面で戦後最大の危機に直面しようとしているようです。それは、近代を支配してきたグローバリズムが弱体化し、世界秩序が新たな枠組みへと歴史的な変革を遂げる中で起きる危機。それこそ「変化の流れを掴み取るための一丁目一番地」は外交・安全保障政策のほうでしょう。これは岸田政権が営んできた国家路線を180度転換させるだけの見識が政治に問われてくる大課題です。


松田政策研究所chでは10月19日に軍事専門家の矢野義昭氏との対談を生配信しましたが、その内容は、今般の中東紛争の真相に深く斬り込んだだけでなく、現在の国際情勢をパノラマの如く俯瞰しながら、世界が迎えている文明の歴史的転換の実相にも迫るものとなりました。今回は以下、そのポイントをご紹介したいと思います。


●国際的なバックなしにはできない組織的攻撃…イラン、ロシア、北朝鮮、中国…

10月7日に起こったのは、ハマスがかつてない規模のロケット弾の集中射撃。25分間で3,000発か。アイアンドームでほとんど撃ち落されるとされていたが、今回はそれを超える密度の弾数、飽和攻撃。それで撃ち漏らしが出てイスラエルに被害が発生した。無人機の攻撃もすごかった。イスラエル側の国境警備の通信網の中枢にドローンが集中攻撃。


第一線のハマス封じ込めの現場には自動警戒システムがあるが、作動しなかった。空軍のエアカバーも機能せず。ハマス側の数百名の精鋭部隊がイスラエルに入り込み、一般人を拉致。かつてない大規模な用意周到な戦闘になった。使用する物量、組織性、巧みな戦術…イスラエル側には、ハマス側は準備が整わず、その気もないとの情報戦も。


そこには組織的な組み立てがあった。単なるテロ組織ではなく、国際的なバックがないとできない。ハングル文字のロケット弾も。北朝鮮製らしいとされている。無差別攻撃には精度が荒くても使える。無駄タマをアイアンドームに撃たせて、撃ち漏らしを出す。相応の被害にもなる。ウクライナ戦争の教訓も活かされている。北朝鮮からのロシアへの弾薬の一部が何万発の規模でロシアからハマスへ。ロシアが使用している中国のドローンも。イランのドローンも数千機の単位で流れている可能性。しかも安価で。


イスラエルの諜報機関のあのモサドは事前に察知していただろう。情報網がある。米国もイスラエルから情報を得ていたはずだ。問題は、最終的に政治的な決定をする側の評価である。そんなことがあるはずがないと相手を侮っていると、奇襲される。来たら反撃で相手を一気に殲滅するという戦略判断もあり得る。しかし、今回は相手を侮って、準備は整っていないだろうと、戦力も過小評価していたのではないか。あえて奇襲させている?


●ガザの闇は地下、ロジスティクスは十分…地上戦はイスラエルにとり長い苦しい戦いに

ガザ地区の問題は地下施設にある。ロケット弾の備蓄と分配のロジスティクスが重要だが、そのルートをイスラエルは追っているものの、闇は地下。衛星でも地上でも見えないし、中の構造はごく一部の人しか知らない。これでてこずったのがウクライナのマリウポリ。


今回はそれ以上の規模で、20万人が立てこもるかもしれない。街を瓦礫にできるが、市街地が瓦礫の山になると戦車が入れない。歩兵が隠れて背後から、ゲリラ戦、歩兵対歩兵の闘いは守る側が有利だし、地下には人質がいる。ものすごい時間を要し、大被害に。


市街地は避けるのが第一の戦術だが、最初から瓦礫化した市街地に数万人が立てこもり、それをイスラエルは包囲網で。しかし、相手が死ぬまで戦う集団で最後まで戦うと、こちらの犠牲も大きく、地上戦は数か月かかる。水や電気も彼らは貯めている。そうでないと籠城戦はしない。外部との連絡も、海も港もある。ロジスティクスの問題が大きい、イスラエルは苦しい戦いになろう。


●威信失墜の米国は火消しに必死、中東和平は頓挫し強硬派に利益、絶妙なタイミング

バイデンとブリンケンがイスラエルに飛んだが、米国はかなり焦っている。火消しに奔走。紛争の真っただ中で米大統領自ら出向いて、敵性勢力のアラブ諸国も回って説得するなど、普通はあり得ないこと。これが病院爆撃で断られことで、米国としては世界の秩序を維持する大国の威信が失墜。トランプが早速、バイデンの失政と批判。バイデンはイランに囚われていた人の解放のため60億ドルの凍結資産の凍結を解除、それがハマスにも流れている可能性がある。米国内でも失策と批判。


ただ、分かっていて資金を流して、最初に撃たせ、一気にやる。相手にテコ入れして自信をもたせてわざとという可能性もないとはいえない。しかし、それがこういう形で出てくるとは計算違いなので、米国は火消しに回っている。


イランがバックにいるのは間違いないが、重要なのは今回のタイミングだ。イスラエルとサウジの間で軍事協力の話が進んでいた。米国はサウジに原発を提供し、その使用済み燃料棒からはウランがとれる。サウジは核保有が可能に。イスラエルはサウジにアイアンドームを提供。サウジが頭を痛めているのはフーシ。ロケット弾を撃ち込んでくる。サウジの軍事的な目玉だ。今般、それも破綻した。イランとサウジの国交は中国が仲介し、それに対抗してアブラハム合意。バイデンも中東和平に乗り出していたが、出鼻をくじかれて出来なくなった。中東和平の動きにそっぽ。


こうした点で、ハマスの奇襲は計算されつくされたタイミングだった。和平が固まりそうになると。事が起こされてきたのが常だった。5~6年に一度。そうしてテロやインティファーダになる。今回もアブラハム合意で盛り上がった和平の動きを潰す。


それで利益を得るのは、過激派、イスラエル側でもネタニヤフやリクード。ネタニヤフはかつての政権時代に闇でハマスに資金提供していた。野党側が、同氏が首相になる前にばらしている。ネタニヤフは『一国論』。野党側は国家として分離しろと。これはアッバス議長の暫定政府と一致している。しかし、ヨルダン西岸もガザもイスラエルにというのが極右。和平調停で分離独立されては困る。


●日本は欧米追随外交を控えるべき、米国のパワーは一正面が限界、ウ戦争とも連動

では、日本のスタンスは…イランに対しては伝統的に欧米とは一線を画してきた。石油が重要だ。イランには幅を持った外交をしてきた。今回も一歩、間をとって、人道支援はやるが、直接的な欧米追随型外交は控えるべき。今回一番得するのはロシアと中国。米国は画策はしつつも、追い討ちを受けた。ウクライナでも大変であり、弾薬も尽きかけているのに、今回、ダメ押しされ、ウ支援もできない。サウジも動けない。


米国は二正面を抱えることになったが、現在の米国の軍事力、国力は一正面が限界。今回の東地中海への空母派遣は、二正面を一正面でやろうとするもの。イランへの警告が空母派遣の趣旨だが、黒海やロシアを睨んでのけん制でもある。米国としてはギリギリのところになっていて、今般のウクライナへのATACMS供与など、出せるものは全て出し切っている。その間に冬季に入り、ロシアは一気に攻勢に。それとの戦略的連携もある。


●ウクライナは壊滅状態、ロシアの攻勢が冬季に本格化、ウ戦争は停戦に

ウが6月から4か月半をかけて行ってきた攻勢は失敗した。転換はウ側も認めている。NATOも弾薬が尽きかけていると。ウ国防省側も予備戦役が尽きかけていると。ウは継戦能力を喪失している。米国は出さないと言っていたATACMSまで出した。F16も訓練に最低半年かかり、来年春まで戦力化しない。この10月でタマも切れる。なけなしをいま、つぎ込んでいるが、これから泥濘期で動きがとれなくなり、その後の冬季となると、ロシア側が圧倒的に優勢。


もともと軍事的に優勢なロシアは、わざとだらだらと戦争を長引かせて西側を疲弊させる作戦だったという話があるが、この春まではプーチンは短期間決戦を考えていた。現状では、堅固な陣地帯が数千あり、1,000キロに及んでいる。数千の警戒陣地があり、ウはやっとそこに到達したが、そこには大規模地雷原があり、攻めあぐねている。


泥濘期は動きがとれず、狙い撃ちされる。いまから、ロシア側が本格的に反撃に出る。マリウポリだけでなく、バフムトもほぼ陥落。各地でロシア側が反撃に出ている。ウが死守していた地帯が次々とロシアの包囲体制のもとに。今までは陣地戦で火力消耗戦だったが、ウ側の戦死者が40~45万人、90万人以上の死傷者、手足をもがれた人が6万人、お墓が急に増えている。衛星でわかる。ウは悲惨な状況。


ウがとった領土よりもロシアがとった領土の方が広く、戦争が続けばウ側の被害が拡大し、領土を失うだけ。停戦へ。新しいウの国防大臣は軍事には素人。ロシアとの捕虜交換交渉で成功して有名になった対ロ交渉の専門家で、ウズベク人でイスラム教徒。トルコを仲介役に停戦交渉をする布陣ではないか。


●圧倒的に軍事優勢のロシア、ウ復興資金は日本が…泥船のバイデンとともに沈むなかれ

弾薬が不足していないロシアが弾薬補充のために北朝鮮に接近しているとされているが、なぜか?タマはあればあるに越したことはない。弾薬生産能力は、NATOは100万発の増産がやっとだが、ロシアは200万発。去年に1.200万発を作っている。NATOは複雑な兵器システムは2~3年かかる。今は残ったタマを出せるギリギリ。今後、弾薬などは時間とともに格差が開いていく。それがいちばん開いている冬季に、オデッサ辺りを取るのが、ロシアの最終的な戦争目標だろう。


西部ウクライナは元々はウクライナ人の土地。ロシアがそのような敵地にまで侵攻するだろうか?もともと領土拡大の意思はないとプーチンは侵攻当時から言っている。核戦争の危機になる。それはロシア側としても避けねばならない。あくまで恫喝しているだけだ。本音では避けたいし、そこまでしてやるほどの価値を、ロシア側もNATOも側も、お互いにウクライナには置いていない。西部ウへの侵攻はしないだろう。ゼレンスキーを退陣させて、中立的な政権を立てるとか、ミンスク合意のようなものに持ち込むか、中間ラインを立てるとか、国連を入れるなどの帰結となるのではないか。


敗戦後のウクライナの復興資金は、やはり日本に出させるのだろう。日本はNATO側についてウを応援していたが、部隊は派遣しておらず、控えめな支援だった。韓国の戦車1,000台の表明とも違う。いつものパターンで、戦後の復興は日本がカネを出せとなる。地雷の処理などは大変なリスクとカネがいる。しかし、これをやらないと農耕にも土地が使えない。インフラ、電力、水なども…。


G7のうち5か国は直ちにハマスをテロリストとして非難したが、日本は日米安保があるので米国の同盟国としてNATOに準じた外交スタンスを採らざるを得ない。ただ、今のバイデン政権も米国内で批判が高まっており、既に大統領選に入っている。その行方もある。トランプ政権になると、逆の方に政策転換する。あまり今のバイデン政権に、沈みかかった泥船で一緒に道ずれになってはいけない。お付き合いだけして、深入りしないほうがいい。その判断の基準となるのが日本の独自情報だが、日本には国家レベルの情報機関がなく、いいようにとられたり、利用されたりしている。


●腐敗国家ウへの支援がハマスの武力の向上に…全体主義国家グループが新しい国際秩序

そもそもウクライナへの支援はどこに?国際刑事警察機構が昨年、警告。これ以上ウに武器援助をすると、テロリストや国際犯罪組織に流れるので出すなと勧告した。武器は実際に現場には3分の1しか届いていないと言われる。おカネで流れているのは、着服や賄賂に。色々な物資は軍ではなく、極右の武装醜聞に横流しされ、それが転売され、テロや犯罪組織に回っているとも。中国やアフリカに流れ、中東やアフリカの紛争を激化させる要因になるのではないかと懸念されていたが、今回のハマスはまさにその懸念が現実になった。彼らの武力水準が上がった。アフガンに置いてきた米軍の兵器も、タリバンからイランへ、そこからヒズボラやハマスへと。まさに西側が自ら招いた事態だ。


武器はウクライナ自体、管理などをやる国ではなく、おカネになって売れればどこにでも売る国。北朝鮮→ロシア→ハマスのルートもある。中国はドローンだけでなく砲弾もロシアに。全体主義グルーブが連携関係。金融経済ではBRICsであり、グローバルサウス。世界で140~150ぐらいの国が反欧米で、新しい国際秩序をリードすべく存在感が高まり、欧米が既存秩序を維持できなくなっていく。


●ロシアの北朝鮮への接近はロシアの東方拡大戦略、軍事協力で北朝鮮の脅威も増大

ロシア国内の状況は…軍需産業関係者は実質賃金が昨年、17%も上がった、軍事景気でロシアは景気がいい。庶民の食料もエネルギーも元々は資源国。制裁受けてもインド、中国。ユーラシア大国間の交易で十分に賄える。プーチンも欧米は相手にしないと、これからは北と南と東だと。北は北極圏航路、南はインド中東等、東とは中国と朝鮮と日本。


東の橋頭保としてロシアが握ったのが北朝鮮。弾薬よりも大きな地政学的観点で北朝鮮との関係を密にしている。ミサイル支援。ICBMを撃っても、目標への誘導は衛星システムがないと意味がない。通信衛星の打ち上げに北は失敗して壁に直面。小型化に成功しても、火の玉の熱に耐えて起爆するかどうか、信頼性が乏しい。ロシアの技術が入れば飛躍的に高度化。金正恩が質量ともに高度化と述べている。


北朝鮮がミサイルを連続発射してほとんど失敗しないのは、もともとが完成したものを入れているから。ロシア製が殆どではないか。だいぶ前からロシアと組んでいる。


元々はウクライナだった。ソ連崩壊後、ウクライナの技術者が家族を連れて数千名、北朝鮮に入り、ミサイル開発。ウクライナのロケットエンジンなどを使用している。これが2019年前後に、ウクライナはNATO側に行くということでロシアに切り替わった。その後はロシア製に。それから盛んに打つようになった。このように、ウは日本への脅威を高めていた国だった。中国にも遼寧など。これから日本にとっては北朝鮮の脅威が高まる一方だ。

日本が依存していたG7秩序が弱まり、ユーラシア秩序強化の流れになる。


●ピークを過ぎて戦時体制に移行する中国は台湾でなく尖閣侵攻で短期の成果を狙う

では中国は…経済面ではピークを越した。人口構成も少子高齢化、2015~6年がピーク。対外対内投資も減少、経済が縮小して世界経済から取り残された閉鎖経済に。習近平がそれを助長する政策。市場経済への挑戦状、国家計画経済に。その中で不動産バブルの崩壊。社会的にも言論などの統制強化。これらすべてひっくるめて、戦時体制への移行である。


そのほうが軍需生産への特化などには管理しやすい。民間だとコントロールできない部分が多くなる。党の管理下というのは統制経済への吸収。李克強も失脚してイエスマンばかり。軍需生産をいま強化し、備蓄もしている。野戦病院を増やし、軍事演習も増やし、予備役の強化も。習近平はどこかで軍事的成果をあげて自分のカリスマ性を上げる野心を持っている。闘える軍隊にと。世界一流の軍隊をと。


これをやらないと、主席三期目にした意味がない。領土統一を成し遂げるのが至上命題。台湾だけでなく、核心的利益には日本の尖閣も入っている。尖閣をとらないと国土統一にならない。台湾侵攻は習近平も確信が持てない。軍の腐敗、頼りにしていたロケット軍が最も腐敗。国防相が斬られた。ロケットの燃料の質が劣悪。潜水艦の性能も設計どおりでない。まともな装備が整っていない。そこで軍を新体制への立て直しに。


それでも武力統一の看板はおろしていない。歴代の指導者は軍事的冒険で成果をあげている。その時の闘いは、確実に勝てる戦いに短期決戦で勝つ。台湾はまだリスクが高い。4,000m級の山脈も。上陸地すべてに基地。傀儡政権を作っても、若い人の台湾人のアイデンティティが強い。彼らが闘う。山岳地域でゲリラ戦。米軍も支援、長期抵抗に。そうなると、本国で軍自体がこれ以上闘いたくないと反乱を起こす。これは歴代の中国の王朝の倒れ方。そのリスクがある。


●世界大戦か…極東での力の空白と日本の危機、中朝とのパリティで米国は日本を守れず

台湾は厳しいが、尖閣なら短期決戦で成果をあげられる。米国は極東まで三正面はとんでもないことで、力の空白が今回の中東紛争でさらに広がった。日本にとって、ひとごとではない。北朝鮮でさえ、ロシアの技術が入ると実践に使えるミサイルとなると、米国も動けない。北が日本と韓国を核攻撃した場合は、1,100万人の死傷者が日米韓で出るというシミュレーション結果がある。それは精度の低いミサイルを想定。ロシアが入るともっと損害が大きくなる。中国はそれ以上だ。今では米中はパリティーに近いところに来ている。


ハマスで始まった今回の事態は世界大戦?そのリスクは否定できない。中印紛争も。東部ドンバスと同じ面積をインドは失い、5万~6万の兵力をいまも…。これもいつ火が噴くかわからない。インド太平洋といっても、インドは非同盟中立だ。植民地支配のトラウマがあり、欧米は信用していない。


●蜜月化するロシアと北朝鮮は中国離れへ…ロシアとの関係修復は日本の死活的国益

ロシアの動き…米国を押さえる点では中国と利害が一致。蜜月を演出。しかし、金正恩のロシア訪問の話が出ていて、大きな転換。今までロシアはウ戦争になってからは、中国との密接な関係を米国へのけん制として進め、中国に様々な譲歩をした。ウラジオストックの港湾使用権を認めたりもした。中国はその間、一帯一路でロシアの裏に割り込み、中央アジアから中東まで豊富な資金投下で、インフラ整備で影響力、支配力。海洋でも。


これに対して、プーチンは東方経済フォーラムで、これからはもう欧州には戻らない、一番重要なのは東だ、中国の裏の本拠地である朝鮮半島にくさびを打ち込むという逆のコースに出て、中国の裏庭の極東に出るとしている。一面では中ロの経済関係が緊密になるともとれるが、北朝鮮との関係を緊密にしたということは、北は中国に依存してきたのがロシアに入ることを意味する。中国よりロシアの方が資源国であり、ロシアの資源や武力は中国より上だから。


北朝鮮は周辺の大国の中で自分に最も利益になる国にすり寄る国だ。中国は最近調子がおかしい、経済大国でもなくなるということで、ロシアに方向転換した。ロシアは中国けん制と極東・東アジアへの橋頭保として北朝鮮。そして、ロシアも北朝鮮も中国離れへ。


実際に、一帯一路で利益が出ていない。投資が焦げ付いている。一帯一路は失敗だった。ロシアは太平洋を睨んでいる。南下政策。日本は三正面に敵を構えるのは、外交としては愚策。ロシアとはいい関係を持つべき。ロシアとの関係を修復するのは日本の死活的国益。米国がカバーできる状況ではなくなっている。尖閣のために米軍が動くなど期待できない。


●グローバリズムの時代の終焉、旧文明の再興と海洋国家から500年ぶりにランドパワーへのシフトへ

来年は、米国で大統領選挙。バイデンは支持率低下。今回の中東紛争は現在の対応ぶりをみると、予期に反する奇襲、予想外にイスラエルが被害、米国が火消し、しかし、米国への風圧が強まっている。数だけでいえば140~150か国。欧米の植民地支配を受けてきた国々は、欧米の正義や価値観を受け容れることにはならない。今までは経済パワーで抑えられたが、その限界が見えてきて一斉に反旗。


グローバリズムの劣勢化が明確だ。グローバリズムの時代は終わった。500年以来の変革。近代の崩壊。これから旧文明の時代に。植民地化してきた旧文明が再興する時代に。イスラム、インド、ロシア、ユーラシア各国が力を持ってくる。


近代の覇権国は海洋国家だった。海を用いて植民地として支配して潤う。海洋国家が覇権国が変わっても支配。今は、数十センチで宇宙から把握できる。安全な海はもうない。海上の利益を享受できる時代は終わった。ランドパワーが地下に要塞。地面の下の隠れ家は所在つかめず、破壊できない。海より大地の方が優位。ロシアは侮れない。


●日本に必要なのは綱渡り外交に必要な情報力、報復能力としての原潜、各地域の防衛と国を守る国民の意識の醸成

まずは情報だ。そのためにはスパイ防止法など体制固めが必要。日本は石油のこともあるので、アラブを敵にできないし、イスラエルとも…外交で綱渡り。そのためにはどこまで情報を持てるか。衛星などもあるが、本物の情報は人を介したヒューミントが重要。今回のイスラエルも情報機器だけでは無理だったという教訓になる。人的ネットワークづくりは10年がかりだ。戦争している相手の国とも常に話し合いのパイプが必要。そうでないと、休戦交渉もできなくなる。敵として関係を断絶するのはダメ。相手の動きがつかめないと、対応を間違う。


アイアンドームなど核攻撃の無力化が重要とされ、電磁波という意見もあるが、強烈な核による電磁波パルスでこっちが機能しなくなると意味がない。核弾道はシールドをかけている。お手上げ。百発百中で狙えるものはない。迎撃不可能。


ただ、シーパワーとしてのメリットもある。国土防衛を考えると、群島国家なので周囲の海域に全島防衛、全島から目標特定してハリネズミ攻撃ができる。報復はやはり原潜(SLBM)だ。これが抑止力に。国土防衛は予備役制度で。せめて他国並みの密度で。日本には米国の倍の海岸線。どこからも入れるから拉致問題。だから、地域防衛が必要。


自分たちの地域は自分たちで守る、決め手は地域の人たちが守ること。防災の機能も兼ね備えている。そうした自己責任、そういう体制を国全体で。国民一人一人が国を守る意識を持たねばならない。

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