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  • 執筆者の写真松田学

今年一年を振り返ると、ゴジラ-1.0&自民党崩落~112兆の来年度予算では「いい日本、興せないな」~

今年も年の瀬、今号が年内最後のメルマガとなります。年末といえば恒例の来年度政府予算案が先週22日、閣議決定されました。日本が「大蔵国家」とも言われた時代の予算編成は年末のお祭り騒ぎでしたが、今では、そして今年も、予算案は静かに決まりました。


思い返せば、かつての予算編成ではクリスマスの頃に大蔵原案が提示、その後、復活財源の分捕りで、事務折衝(課長補佐クラスの主計局主査vs要求側省庁の課長)→局長折衝(課長クラスの主計官vs同じく局長)→次官折衝(主計局の次長vs同じく事務次官)と予算が少しずつ復活し、折衝を担当する査定側の大蔵省は相手省庁より2ランクぐらい下の官僚、まさに「我ら富士山、他は並の山」…大蔵省の権威が演出されたものです。


そして大蔵大臣室での大臣折衝となり、初めて相手省庁と同格の大蔵大臣が出てきて(主計局長が同席)、最後は華々しく首相官邸での総理と自民党三役と大蔵大臣による政治折衝…そこに至るまで復活した予算が年末は連日のように大きく報道され、整備新幹線の調査費復活!等々、新聞の一面を賑わせたものです。当初は厳しい査定結果を示し、復活折衝の過程で相手省庁や政治家の顔を次々と立てる、政治家は厳しい財政事情の中で俺が予算を取ったと地元選挙民に誇れる、まさに皆が納得する日本型意思決定のプロセスでした。


復活折衝といっても、その前に、どの段階で誰に花を持たせるか、そのシナリオは予め課長補佐レベルで握り合っていたものです。近年ではこんなバカらしい劇はやめろということで、財務省のパワーの低下とともに静かな予算編成になりましたが、その分、国民の予算に対する認識も薄まっているようです。そして、いつの間にか膨れ上がる国家予算。


ちなみに来年度予算をみると、その総額は112兆0,717億円。過去二番目ですが、前年度に新型コロナや物価高対策で計上した予備費5兆円を1兆円に圧縮したことが前年度より減った原因であり、実質的には過去最高規模、二年連続の110兆円台です。


特徴は、高齢化に伴う社会保障給付増で膨らむ社会保障費が37兆円台乗せとなり、市中金利の上昇予想から国債想定金利を1・1%から1・9%に引き上げたことで国債費が27兆円と総予算の4分の1に迫るまで増えたこと。両者は固定費。そのシェアは併せて58%と6割近く。これに、これもその額が基幹税の一定率で法定の地方交付税交付金を加えると74%と、予算全体のほぼ4分の3を裁量性の薄い硬直的な義務的経費が占めています。


目玉の異次元の少子化対策では、「こども未来戦略」として2026年度にかけて年3・6兆円の予算追加措置を講じますが、その財源の一部は社会保障の歳出改革で賄い、その際に「実質的な追加負担を生じさせない」(負担は増えるが所得増の範囲にとどめ、負担率は上げない)と岸田総理は繰り返しています。私の後輩である現財務次官は、歳出削減がこれからの勝負だと先日、言っていましたが、社会保障の歳出削減はそのまま実質的な国民負担増ですから、いずれにしても負担増は負担増。「増税メガネ」との批判は図星でしょう。


もう一つ、将来に向けて心配なのは国債費です。金利が正常化すれば、来年度末の普通国債発行残高は1,105兆円ですから、金利が1%上がる度に毎年度の国債利払費(来年度は9・7兆円)は単純計算で11兆円ずつ増えることになります。将来、国債金利がかつての5%台となると、来年度の1・9から3%上昇ですから、利払費は33兆円も増える!大増税は不可避?やはり、日銀保有国債を政府発行デジタル円で償還する「松田プラン」で国債を根っこから減らしていかないと、財政も経済ももたないでしょう。


かつては予算の決定とともに大蔵省が一般会計予算の語呂合わせを発表したものです。その最初は1959年度予算。予算規模1兆4,192億円について「1兆良い国」。私が大蔵省に入省した81年度の予算は46兆7,881億3,000万円で「世論成って早い再建」。96年度予算の75兆1,049億2,400万円「なにごともまず良い暮らし日本の世」をもって語呂合わせの発表は恒例行事でなくなりましたが、では、来年度2024年度予算の112兆0,717億円は…?


これでは「人々(11)に(2)、おカネ(0)、無いな(717)」、これでは「いい(11)日本(2)興せ(0)ないな(717)」…といったところでしょうか。


今年が殊更に静かな予算編成に見えたのは、年末にパーティー券裏金問題が噴出して報道の陰に予算が隠れてしまったからでしょうか。直近のニュースでは「これだけ政権中枢の事情聴取が行われたのは初めて」…。この2023年も色々なことがありました。


大きなニュースをざっと並べるだけで、まず国際社会では、なんと言っても10月6日のハマスによるイスラエル攻撃から新たな戦争が始まったこと。他方でウクライナの敗色が濃厚になったことや、ロシアでのワグネルの反乱、金正恩とプーチンの会談や、米国でのトランプ氏の支持率上昇なども重要ニュースでした。中国関係では不動産大手の破綻懸念や、ゼロコロナ終了、61年ぶりの人口減、米領土への偵察気球の侵入が挙げられますし、災害関連では、トルコ・シリア大地震やハワイの大規模山火事も今年の出来事でした。


日本関係では、政治面では、韓国が元徴用工の解決策を提案して日韓首脳会談では両国関係正常化で一致したことや広島G7サミットなど外交面で評価を上げた岸田内閣の支持率が、6月のLGBT法成立という大事件で急落し、解散総選挙が先送り。前述の政治とカネの問題で支持率は最低にまで落ち込みました。加えて、新型コロナの5類移行、8月の原発処理水放出開始、夏の平均気温が過去最高、相次ぐマイナカードのトラブル、10月からのインボイス導入なども特筆すべき出来事でしょう。


その他、株価が33年ぶりの3万3千円台、ガソリン価格が過去最高、生成AIの急速な普及、クマ被害の死傷者過去最高、ジャニーズ事務所事件、ビッグモーター保険金不正請求…等々、今年の漢字が「税」になったことも挙げられるかもしれません。


今回は、二人の著名な有識者、西村幸祐氏と門田隆将氏がこの年末に松田政策研究所CHで語った「今年を振り返る」を以下、ご紹介します。キーワードは日本の植民地状態を象徴する「ゴジラ‐1.0」と政局を象徴する「自民党崩落」といったところでしょうか。


ゴジラ-1.0が象徴する「占領状態から独立していない」現在の日本

まずは西村幸祐氏、話題の素材は、いま全米でも大ヒットの映画「ゴジラ-1.0」でした。西村氏曰く…「びっくりした。想像以上の映画。日本のいま置かれた状況を終戦時を舞台に設定して象徴的に浮かび上がらせた。」


「怪獣が出ても米軍はソ連を刺激してはいけないからと、軍事行動をしない。軍が解体されたから日本軍もない。旧軍の有志が集まり、主人公が戦争中は特攻隊、特攻を忌避した人、不時着したその島にゴジラが出て何もできなかった。敗戦のトラウマと戦争から逃げた自分に罪悪感、そこから彼は変わっていき、最後は戦争のときはやらなかった特攻を日本を救うためにやろうと。米国でその部分がすごく受けている。2023年で最高の傑作だと称賛されている。アカデミー賞の候補となる勢いだ。」


「描かれているのは、今の日本と同じ。占領されたまま独立していない。独自に何もできない。昨日も尖閣で日本の漁船に出て行けと、中国海警局の船から…。人民解放軍の将官から、我々は戦争も考えていると言われても、大きなニュースにならない。」


「連日連夜、パーティー券裏金、安倍派ばかり。いまの異常な報道の根底にあるのは78年間、主権回復ができていないこと。宏池会岸田政権が清和会を潰すためのパフォーマンスのような気がする。バックには財務省や米政府と勘繰られても仕方ない。結局、去年の7月8日の暗殺から裏金問題まで、全部つながっている。背景に核の問題。ゴジラは水爆実験で変異した怪獣。核の脅威の象徴でもある。それにどう立ち向かうか。」


「世界中にこの映画が拡大。100~200億円で映画をつくることへの皮肉、それが日本は22億円でこの映画を作った。ハリウッドの基準からはものすごく安い。米国では『ゴジラがハリウッドを核攻撃した』と。ハリウッドはポリコレが前提でないと映画が創れなくなっている。この映画にはその要素がないことも受けている理由。これ自体、病的な現象だが、それが日本に襲い掛かっている。親に内緒で性転換して、とんでもない悲劇になる。」


日本の核戦略と中川昭一氏の不慮の死と安倍氏暗殺…パーティー券に繋がる一本の筋

「核の問題はかつて、田村秀男氏がスクープし、06年の産経新聞の一面トップに。核弾頭試作品は3年以上かかかる等の政府内部資料、2,000億円の費用、と。2010年に謎の死を遂げた中川昭一氏が政調会長のとき、第一次安倍政権のときだった。北の核実験を受け、日本の核保有にどれだけの時間とカネがかかるか経産省に命じて作られた。」


「その極秘文書を田村氏がスクープした。それがあるので、日本も核の議論をと中川氏が発言した。あのときメディアから総スカン。ゴンドリーザ・ライスがブッシュ政権の国務長官、日本に飛んできた。この文書を作っていたことを米国は知って、抑えに来た。米国の核の傘は万全だと言いに来た。対北朝鮮で六者協議をやっていたとき、六者協議は北の核開発を止めるのが目的ではなく、日本の核保有を潰すのが目的ではなかったか。」


「昨年、安倍氏が暗殺される2か月前に安倍氏がテレビで、米国の核の傘、拡大抑止を確かなものにするために、その手順を日本は確認しなければならないと5月に言い、その少し前に核シェアリングを議論すべきだと言っていた。」


「中川氏の不慮の事件、謎の死、その8か月前に、財務大臣としてリーマン対策のためのIMF総会、09年の酩酊記者会見、仕組まれたとみられている。風邪薬とお酒でという解説があったが、会見の前にそんな状況なら会見に出さないでしょう。担当の財務省の方がその後トントン拍子に出世した。」


「ローマのあの会見の前、08年、財務大臣がG7で集まって、田村秀男氏が中川氏に頼まれて通訳、その会合の前に北のテロ支援国家指定をブッシュ政権がやめて、中川氏が怒ってブッシュのところに。ブッシュは慌てた。私が決めたことではなく、彼女だとライスを指さした。日本は米国のキャッシュディスベーンサーにはならないと、中川氏は明確に述べた。そのあとのローマでの会見…。」


「そういうことが繰り返されたのが安倍氏の暗殺。同じことがまた起きた。いまの安倍派潰し、安倍政治を全面的に壊す。戦後体制の継続が、今年はさらに如実になった。」


自立を考えるべき局面へ、国家の軸を立て直す政治を

「ゴジラと戦おうと日本人が立ち上がった映画のあのシーンが米国では拍手だった。そういう日本を引き継しいで行くべきというメッセージだった。今年を締めくくるためには、この映画を見て、その背景を感じながら来年に備える。」


「日本は絶体絶命の状況。検察が動くのは信用できない。ロッキード事件と同じ。田中角栄が有罪に。起訴された証拠の一つが、証拠にしてはいけないものだった。米国の議会証言、コーチャン証言。戦後78年経って自立を考えるべき局面、これは逆に参政党にとってのチャンス。国家の軸を立て直すという政治が来年できなければ、日本は本当に危機だ。」


官僚統制主義国家を復活させた岸田内閣はもう砕け散った

次に、門田隆将氏が日本の政局について、門田節を炸裂してくれました。「もう回復不能です。ここまで支持率が落ちて回復した例はないし、自業自得のところがある。岸田氏が国家の領袖としてふさわしくない、国家観がないこともわかっている。」

「官僚統制国家が突き崩された安倍さんの時代、そのことを保守岩盤支持層が支えた。有効求人倍率の奇跡を成し遂げ、若者が支持した。若者の安倍内閣支持率は平均で57%、その若者層は今、岸田内閣への支持率は10%。5・7分の1。砕け散った。」


「日本は自由主義の国なのか、社会主義の国なのか、いや、官僚統制主義の国だ。これを安倍氏がこの7年8か月で突き崩した。その復活のために出てきたのが岸田さん。内閣人事局にぐちゃぐちゃにされて、官僚たちは岸田さんに陳情を続けた、その岸田さんがついに政権に。だから、総理としてやりたいのは『はい、人事です。』だった。」


「彼は財務省や官僚の言いなりで、せっかく普通の国へと突き進んでいたのに、もとに戻す人。今年のLGBTの強硬な通し方。ふだんの『けんとうし』が何も聞かずに。女性と女児の命の危険の法律でなぜ、そんなに突き進むのですか。性自認を利用する犯罪者がいる。6,400万人の女性を守るのが政治家の役割のはず。」


「こう自分が言ってきたことにだんだん理解が進んできて、女性が声を上げ始めた。命と人権の問題に国民が気づいて岸田氏の支持率が急落した。良かった。」


「減税で財務省を怒らせて梯子を外されて…。パーティー券問題は本来は直撃。派閥とは人事とカネで面倒見る、その代わり、俺を総理に押し上げてよという集団。」


「今までも噴出。河合杏里氏も党からカネが出ている。派閥と言う党。159億円の自民党への政党交付金、政治資金が渡され、1.5億円が河合陣営に、しかし溝手さんには1,500万円しか来ない。それで爆発、党内での内部告発。ノルマ超えのキックバックは議員側からは当然。売るに売りまくったのに何もないのでは、と。収支報告書に書けばいいだけのこと。問題はパー券を買う人たちを優遇する政治が行われていること。それが狙われてくる。」


予算が利権中抜きで膨らむ政治からの脱却へ、「保守現実派」の連携を

「今や110兆円の国家予算。国民の税金を自民党の議員も官僚も野党もたかってたかって、それで私たちの国民負担率が50%を超える。江戸時代の享保の改革の五公五民。こんな腐った政治は許せない。中抜き構造を仕組みから変えないと負担の議論にならないはず。お金を出した人たちのために動くのは国会議員ではないはず。国のためにのはず。」


「うわべだけの似非ジャーナリズムの陰でSNSでいろんな議論が流れている。情報を得ることができる。いま地上波とテレビだけの人は情弱、自ら北朝鮮状態を作っている人たち。『公金チュウチュウ』がなぜ大賞をとらないのか。『増税メガネ』が減税を決めさせたように、SNSで政策が変わる時代が来た。」


「高市さんの講演に人々が押し掛けた。中国に対峙できる、日本を守れるのは高市さんしかいないからと、みんなSNSで。オールドメディアでは高市さんは無視されているが、SNSでは次の総理は7~8割が高市さん。テレビ新聞では『小石河』だが。」


「岸田の次の総理は誰に?主流派、麻生派、岸田派、茂木派、彼らは派閥の長だから、配っている本人だから直撃のはずなのに、どのメディアも安倍派と二階派だけ、非主流派ばかりやっている。清和会は安倍さんもおらず、派閥の長がいないところばかりやっていてはだめですよ。主流三派をスルーしたら特捜部の名前が泣きますよだが、主流派は固まって、茂木で固まろうと。三派で150人、圧倒的。国民からの支持率が1%しかない人に。」


「それで茂木氏が総理総裁になった場合、次の総選挙で皆さん、ただの人になりたいですか?茂木さんで解散したら自民党は壊滅。9月までに岸田氏が辞めさせられた場合は、党員投票がないので。これで親中派政権に。元は田中派、それと大平派。日中国交正常化をやった人たちが、移民大国にして日本の文化も壊されて、そんな政権を望むんですか?」


「それ以外なら、安倍さんも推した高市さんしかいない。自民党で安倍さんが亡くなるまで最大の力を持っていたのは安倍さん。そういう人が指導者だった場合は、保守現実派の政策、だから六連勝した。自民党分裂というより、内部で本当の岩盤支持層が支持するのが望ましい。積極財政派では高市さんしかいない。」


「LGBT問題で日本保守党が出てきて安倍さんを引き継いで、そして参政党、維新にも期待。大阪維新と国会議員団の維新は全然違う考え方。国会議員団は台湾派。親中派の大阪維新とは違う。中国に対する厳しいスタンス。これら保守現実派の人たちが固まって力を発揮してほしい。自民党のこういう人を落とさねばならないというなら、乱立せずに、連携を。フレキシブルな連携をぜひ、お願いしたい。」

 

…門田氏からは対談中に、保守連携に向けて色々とけしかけられましたが、「私はもう代表でないので」と返すと、「この参政党の問題、もう一時間、対談やりますか?」…簡単にそのひっかけには乗れないのがつらいところです。私のチャンネルの視聴数は増えても、いま、党員のため、日本のために、党を壊すわけにはいきませんので。ただ、個人としては、門田氏の政治に対する見方は私も共有しています。


今年は参政党でも色々なことがありました。私は意に反して代表を降りることになり、その後、神谷代表のもとで武田邦彦、吉野敏明の両先生、赤尾由美氏の3人が党籍を離脱するに至り、この党を国政政党へと押し上げたゴレンジャー体制が分裂となりました。


この一連の騒動がネットでも話題になり、参政党もより多くの人々に知られる存在になりましたが、「悪名は無名にまさる」と言っているわけにはいきません。来年は党と日本の再生・発展に向けて、さらに全力を尽くしてまいりたいと思います。


今年一年、本メルマガをご愛読いただき、誠にありがとうございました。


良いお年を迎えられることを祈っております。

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