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  • 執筆者の写真松田学

今年から本格化し始めた日本の危機の構図~情報・言論空間の劣化こそが最大の敵~

臨時国会は統一教会で始まり、寄附などを規制する新法の可決をもって統一教会で終わりました。メディアが火をつけた国民のけしからん論に応えるあまり、よくみると、宗教団体のみならず政党やNPO・NGOまで法人全般が規制の対象に。政府が寄附税制で促進してきた「新しい公共」はどうなる?寄付したが自分の考えとは違った、返還せよ、これで広く市民からの寄付で担われる社会貢献活動の財政基盤が不安定化することをどうカバーするのかなど国会で十分な議論があったのか。唯一参政党が質問主意書を出しただけでした。


政党であれ非営利活動であれ、およそ社会啓発活動は広い意味での「マインドコントロール」ですし、特定の宗教に批判が向かえば宗教弾圧はいとも容易に…憲法で保障された信教の自由との関係など深みのある議論はどこまで行われたのか。いつの間にか、全体主義に向けてさらに一歩が進められたような感がなきにしもあらずです。志の低いところに目線を合わせて規制を作る度に、高い志まで縛っていくことがまた繰り返されました。


こうした言論空間の狭さ、浅さが最近は目立ちます。安倍元総理の暗殺についても然り、国葬問題も然り、コロナやワクチン問題然り、情緒的なロシア憎し論も然り。グローバリズム全体主義に言及すれば「陰謀論」とされることもそうです。これこそが日本の危機の本質にある。海外勢による日本国民のそれこそマインドコントロールはいとも容易…。


今年は例年になく、日本人にとって戦後の世界では考えられなかった事態が続出した年になりましたが、日本にとっての危機はまだ序の口。台湾有事を前に、ようやく防衛費GDP比2%や「反撃能力」などの安全保障政策の転換が政府与党で合意され、臨時国会終了後は年末に向けて、さらにその具体的な中身が決められていきますが、時すでに遅しだったかもしれません。ミサイル反撃能力を獲得したところで、中国のミサイルはそれが届かない内陸にありますし、いざ核攻撃となった場合の米国による拡大抑止など期待できません。


やられたらやり返す、だからやらなくすることで戦争そのものを起こせなくする。一部の論者が遅まきながら、これまでタブーだった核武装論を唱え始めました。通常戦力のレベルでも、中国の台湾支配に伴う米軍の撤退を考慮すれば、43兆円では足りないとも…。


先週は、その財源論が与党内でも活発化しましたが、岸田政権の方針は歳出削減、剰余金の活用、税外収入で当面はしのぎ、数年後からは1兆円の増税。国債は安定財源でないとして退けられました。しかし、政府が挙げるこれら財源こそ不安定そのものでしょう。


大きく削れる歳出はもう、高齢化で膨らむ社会保障給付しか残っていませんし、言われている法人税などは景気変動に左右される不安定財源。歳出でいえば、60年償還ルールで毎年度国債発行残高の60分の1を国債の元本償還に充てる債務償還費が今年度は16.1兆円もあります。日銀保有国債を満期時に借換債で償還するのではなく、永久国債に乗り換えていけば、その分、国債償還は不要になるので、この債務償還費は防衛費に回せるはず。


さらにいえば、国防とは主権国家を永続させるための経費なのですから、それこそ永久国債、少なくとも超長期国債が財源として最もふさわしいでしょう。日本の対外純資産残高は世界一を30年以上も続けているのですから、4,000兆円にのぼる金融資産を活用して原資とする国債こそが最も安定した財源ではないでしょうか。


私は参院選のときに、自民党が大勝すれば岸田内閣は確実に、選挙で黙っていた増税メニューを次々と繰り出すと警告していましたが、その通りになりました。国防の次は炭素税、そして少子化対策予算の倍増…。大きな構想を欠いた目先の財政運営しか視野にないままでは、日本の危機は乗り切れません。政府に借金を禁じた財政法4条は、憲法9条とともに、日本を二度と独立国にしないために米国が押し付けたものとの見方すらあります。


いまこそ、官僚が敷く戦後体制のレールを超えた構想力が政治に問われていますが、それを岸田自民党にはとても期待できないことこそが日本の危機といえます。官僚というよりもグローバリズム勢力による支配こそが本当の危機。今回は日本の全般的な危機の様相について、危機管理コンサルタントの丸谷元人氏と行った議論をご紹介します。


●ウクライナ戦争の現実が報道とは全く異なることに気づかない日本人

以下、丸谷氏が述べたところによると、まず、今年はどんな年だったか…「日本人が嫌でも目を覚まさざるを得ない、目覚まし時計が鳴った年だった。色々なことがあっただけでなく、日本の言論空間が閉ざされたことが明らかになった年だ。日本の泰平の世が終わった。危機は序の口。これからまだ来る。」


今年が異常な年になった幕開けは2月のロシアによるウクライナ侵攻でしたが、この戦争についても日本には専ら西側メディアによる偏った情報が入り、戦争時には当然にして起こるプロパガンダに日本人の認識が染め上げられたという意味でも異常でした。


「これからウクライナは冬になるので、ウクライナ軍側にとって厳しい。ロシアは歴史的に、冬に敵を撃退してきた国であり、守りに入った。これは冬に向けた準備。今はどろどろ。地面がぬかるむが、1月になるとカチカチに。凍れば戦車が走れるのでロシアに有利。」


「戦争を仕掛けた側の米側が戦争を煽り、ロシアに撃たせた。ここまでロシアが粘り強いとは米国は思っていなかった。ウクライナへの巨額の資金も高官の懐に…スイスに豪邸、キエフに高級車。ロシアは勝ちを急ぐ必要がない。米側も戦争する必要なし。このまま米側が戦争を続けていてウクライナ国民をさらに苦しめていいのかという問題になる。しかし、戦争で儲けたい人もいる。ロシアが撤退する可能性は低く、しばらくは長引く。」


「ロシアは目的を完全に達成している。ウクライナ全土征圧などとロシアは言ったことがない。全土だとロシアにとってかえって大変。東部と南部だけ。東部はバッファーゾーン。ロシア系住民に武器をとらせたほうが安全。南部はクリミアの水源を護る必要。ロシアはもう戦争をやめてもいいし、新司令官は極めて常識的な闘いをしている。」


「ロシアがへルソンから兵を引いた?ウクライナ軍が力でロシアを撃退したことはない。キエフもロシアが自分で退いた。最初は陽動作戦でキエフを攻めただけで、その後、兵力の再配分をしただけのこと。へルソンもロシア側が引き揚げたもの。ウクライナが勝ちまくっているという報道があるが、戦況を毎日見ていると、どうもそうではない。」


「ウクライナが自力でロシアを押し返していないのが現実。報道だと見誤る。3月にロシアには弾薬がないとか、経済制裁で精密誘導ミサイルがないなとど…しかし、昨日の朝もミサイルが飛びまくっている。西側の報道は現場を見ると全然違う。ウクライナの方が大変なことになっている。西側の戦意高揚の情報だけ見て伝えているが、日本人が将来、ロシアと事を構えた場合のことを考えると、こんなにひ弱でいいのか。厳しい現実を、まさかこんなはずはない…では、かなりよろしくない。」


「米国の戦争研究所がいきなり出てきた。トップはケーガンという女性で、旦那は有名なネオコンの研究者。2014年にマイダン革命を工作したヌーランドのファミリー。そのビジネスのシンクタンクの言うことを聞いてどうする?米国防省ですら、ロシア軍は撃退していないと言っているのに、退いていると。日本はそこの情報で書きまくっている。」


「戦況分析の前に何人死んだとの情緒的な情報が流れるのもいかがなものか。愛と憎しみを情報分析に持ち込んだら敗けである。事を将来構えたときのロシアの動き方を今、見ておくべき。アントニオ猪木がんばれではない。」


「グローバリストとの闘いが今年は出てきた。ウクライナ戦争は、プーチンとグローバリズムとの闘いでもある。LGBTQもそうだ。グローバリズムがあらゆる局面に入ってきていて、わけのわからない世界が出てきた。過剰な反応はワールドカップもそうだった。」


「常に外国から来るものに対する反発でナショナリズムが刺激される中で、向こうがグローバリズムをほおりこむほど、一般大衆が感じていなかったナショナリズムが台頭する。相克があらゆる面で出てきて、対立が終わらない。グローバリズムであんなものを世界中にバラまいて、従わなければだめだというのは明らかにおかしい。気付かねばならない。」


「日本の情報空間がいかに偏っていて工作機関としてしか機能していないか。日本の指導者や専門家たちも思考が浅く、感情的だ。議論するのも馬鹿らしい。昔は学者同士の議論のレベルはもっと高かったが、今は好きか嫌いでかで、子どもの喧嘩のようなもの。つい最近まで、日本人にとってはウクライナがどこにあるかすら知らなかった。ウクライナは北朝鮮のミサイルも、中国の空母の遼寧も、人民解放軍のエンジンも提供している国だ。それが急に親日に?どこが親日?親日と言われた瞬間に、何でもOKになってしまう。」


●習近平の動機は政敵潰し…中国内でのグローバリズムvsナショナリズムの対立軸

「中国では、習近平が三期目入り、胡錦涛の退場、江沢民も死去。それで軍事独裁に向かうとされるが、中国は三国志で三つの勢力がいつも喧嘩してきた国。今は太子党、上海閥、共青団。きれいにしても収まらない。収まったと思ったら、今度は辺境が出てくる。同じことを繰り返している。ただ、兵器の射程が長くなったので、周辺への迷惑が大きい。」


「習近平のモチベーションは台湾ではなく、国内の政敵を退治すること。三期目でも習近平は盤石ではない。ゼロコロナも反対派への締め上げだ。気付いたら、上海閥は台湾系と仲が良い。動機は、『中国の夢』の前の政敵潰し。その中で台湾や沖縄に来るかもしれない。我々に関係ないところに彼らの行動原理があるのが危ない。」


「江沢民一派は米民主党系と前からがっちり組んでいた。習近平はこうした利権からあぶれたが、上手くナショナリズムとつながった。一帯一路とかアフリカなどは、中国は欧米とは違って、経験したことがない。広げ過ぎて、過去の日本のようなことになろう。」


「グローバル勢力が、こうして弱くなったところを叩いて内乱を起こす可能性もある。それを習近平がナショナリズムを利用しながら徹底的に叩く。中国でもグローバリズム対ナショナリズム。それが権力争いとして続き、混乱していく。」


「中国は太平洋にも出ていこうとしている。米豪の利害とどこでぶつかる。中国の野望は成功しない。中国の失敗が分かるのが来年か、5年後か、20年後かはわからないが、それまでに日本が中国の影響下に入るかもしれない。危機はこれからどんどん来る。」


●台湾をめぐる日本にとっての本当の危機とは?…両国ともいつの間にか中国の従属下に

「台湾侵攻は、三期目で権力で乗っているときであること、三期目の正当化、半導体が米国にやられていることなどから、台湾を早く抑えたい。台湾財界が江沢民系とつながっているので、乗っ取りたい、破壊したい。しかし、それが大規模な武力攻撃なのか。」


「台湾軍の大佐にお金を払った話があったが、先日の台湾地方選で与党がいきなり負けた。水面下の政治工作、いつのまにか台湾が中国の自治区になる可能性の方が高い。それは香港ほど厳しくない。それで良いとして飲む勢力も。もともと国民党系は外省人、外から来た、お墓は中国にあるという人たち。産業界の儲けのこともある。戦争をやるよりは、ある程度の自由を保証してくれればと思っている人たちもいる。台湾は親日国家だと100%信じると、台湾とて生き残りをかける。蓋をあけたら日本はショックになりかねない。」


「武力でなくても、こうして台湾が中国の支配下に入ると、防衛線は第二列島線にまで後退する。既に在日米軍は、空母が近海に来ず、グァムが線となっていて、それに日本人が気付いていないだけ。しかも、バイデンはこれだけウクライナに関わっていて、台湾を相手にしている余裕がない。ウクライナに軍事力を送りすぎている。さらにカネがかかることをするよりは、キッシンジャーと周恩来のときのように、いつのまにか中国と手を握っているということもあり得る。日本には中国と仲良くしろやと…。」


「ただ、日本にとってはシーレーンが妨害されまくることになる。石油価格、食料価格、レアメタル、日本には死活的な問題となろう。」


では、中国とどう向き合うのでしょうか…。「遅すぎた。防衛費倍増と言っているが、弾薬庫さえ沖縄方面にない状態。何ができるか。戦争になるよりは、一時的にでも中国の配下になっても、これも悪くない。既に太平洋を米中で二つに分けよう、そういう話になってきていて、米国自体が内部分裂している。日米同盟も米国が内戦になると吹っ飛ぶ。」


「だから、日本の選択肢はほとんどない。一兵まで闘うか、支配を受け容れるかしかない。中国の手方次第ではそうなる。中国は佐渡島や北海道周辺の島を基地にして北極海航路を作りたい。だから、本気で取りに来る。」


●異常なのは日本の情報・言論空間のレベルの低さ…情緒論を排したリアリズムを

「日本はこれまで何も知らなかったはずのウクライナで、数か月で固まった。マスコミの情報によって操作されやすいのが日本人だ。数か月から半年で日本の世論が変わる。台湾も中国に行き、日本も…ということになりかねない。ウクライナ戦争について、猪木だ、ブッチャーだと言っていると、こういうことに対処できなくなる。」


「危機管理とは、厳しい現実を見ること。習近平の悪口を言っているだけではダメ。待ったなしになる。中国による日本支配は視野に入ってきている。実際に土地は買われまくり、技術はとられ、情報はだた漏れ。政治家は媚薬におかされ、マスコミは何も言わない。」


「グローバリズム全体主義を批判すると、レイシストだ、陰謀論者だと言われる。そうなると、何も言えなくなる。武力の前に戦えるのは言論だが、その言論のレベルが下がっている。これでは戦えない。せめて参政党だけはがんばってほしい。」


「安倍総理の暗殺、そして統一教会に関心が。これは異常。情報空間の問題。テレビと新聞が言えば、国民が信じてしまう。それまで統一教会など誰も気にしていなかった。これも、なぜ?というと陰謀論者と言われる。国民がメディアを信用しすぎていて、権威が言うと全部そちらに流れるが、それは結局、スポンサーだ。スポンサーが気に食わないことは報道もさせてもらえない。そして、みんながウクライナの専門家になった。」


「日本人は学習能力がすごいが、それがゆえに、みんなが右といえば右に行く。これはお盆のようなもので、左右に傾けると真ん中の豆は…もう少し大人になってほしいもの、識者の中に大人がいない。ワイドショーと同じレベル。」


「敵は陽動作戦で煙に巻く、煙が消えれば赤い中国の旗が…。統一教会も気付いたら自分の首を絞めていたことにならないか。野党は甘い甘いというが、法人も団体も全部に規制するのか?感情的に過ぎる。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。寄付して後で気に食わなかったら後で返せ、寄付して領収書だけもらって戻してもらうようなことが起きる。日本の言論空間はこんなにしょうもなかったのか。」


「信教の自由との関係もある。組織が違法行為をしていたら取り締まるとして、世の中にはいろんなものを信じる人がいる。それをすべからく…宗教弾圧だ。旧統一教会ではなく普通の宗教団体にも、国民がカッとなって、やっちまえになると、法理を超えて感情だけで決めて集団リンチになる。法の支配、近代法の原理を踏みにじっている。それは我々のレベルが下がっているということ。宗教もスポーツもマインドコントロールだ。長島の3番だってそうだ。カイシャでの朝礼で頑張れもそうだ。」


…我々にとっての真の敵はグローバリズム全体主義だと私は論じてきましたが、もしかしたら、最大の敵とは、私たち日本人自身の認識力や自立的思考力の低下なのかもしれません。ここから日本を立ち直らせるために、国民に「おはよう」を呼びかける参政党の役割は、日本の危機が深まるほど大きくなる一方だと思います。松田政策研究所CHとしても、情緒論を超えたリアリズムに向けて、引き続き日本国民に警鐘を鳴らし続ける所存です。

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