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ワイドショー番組と「PCR真理教」~ここがおかしい、新型コロナのテレビ報道~

  • 執筆者の写真: 松田学
    松田学
  • 2020年8月23日
  • 読了時間: 13分

世はコロナフリーズ。恐怖を煽って経済も日本国民の精神までも破壊しているのはテレビのワイドショーとニュース。最近では日本人の間に差別まで生み出しました。お盆休みの地方では「県外の方、お断り」、「来るな」…。ただ、国民は視聴数獲得のテレビフォーマットに振り回されているだけのようです。最近では「PCR真理教」という言葉まで…。


いまやメディアよりもネットのほうが信頼される時代になりました。私のチャンネルでも過日、私がテレ朝のモーニングショーをニュース解説で取り上げたところ、先週末時点で視聴数が48万回と、「日本は集団免疫状態」を発信した上久保靖彦先生との対談番組(同69万回)に迫る、最近の当チャンネルヒット作品?になりました。その上久保先生も昨日、テレビタックルに出演。松田政策研究所の努力が実り、テレビも少しは改善に向かうか…?


●地方で広がる差別と魔女狩り…日本人のモラルはどこに行った?

例年は帰省していて今年もお盆休みがある方の66.0%が、今年は「帰省しない」…これは日本トレンドリサーチが今年の8月5日~7日に行ったアンケート調査結果です。郷里の状況を聞いて直前に帰省をやめた方もいたので、実際にはもっと多かったと思います。


某ネット記事には、ある仙台出身の方が、「震災のときにあれだけ世話になったのに、都合の良い時だけ『来るな』って、そんな恩知らずなことがあっていいのか」と郷里に疑問を呈していました。あの3・11の際に世界が称賛した日本人の連帯と利他の精神はどこに行ったのか…。前回のコラムで私は、大東亜秩序で日本がめざしたのは、差別のない、利他と協調、調和のアジア秩序だと書きましたが、いまの日本人はどうなってしまったのか。


自分のお店がコロナの発生源になっているという誹謗中傷を受けた方、コロナ感染を言いふらされ引っ越しを強いられた方、他県ナンバーであるために自動車に傷をつけられた方、看護婦の妻を持つ男性が職場から退社を迫られた、店員がコロナに感染しているというデマを流された…差別と村八分の実例は枚挙にいとまがありません。地元テレビ局のTwitterアカウントがコロナに感染した学生の学校名やアルバイトしている店舗を詳細に紹介…大衆の不安を煽ったり不満のはけ口を用意すれば、報道は注目されますが、報道された個人の生活やプライバシーはどうなるのか…。田舎では噂はすぐに広がるので、その家に卵や石を投げる、落書きされる…。まるで魔女狩り。暗澹たる気持ちになります。


3月にコロナが深刻化した頃から、攻撃的になったり精神の安定を失った人も多いとされます。「コロナが怖いというよりも、村八分の誹謗中傷のほうがよほど怖い」との声も。感染が拡大しているのはコロナよりも「コロナ脳」かもしれません。


私のチャンネルの上久保先生との対談動画をご覧になったフランス在住の日本人女性から届いたメール、「こちらではコロナになった人を差別するのではなく、みんなで励ましています」。日本よりも人口当たり死者数が数百倍も多い欧米では連帯の精神が芽生えているのに、ほとんどの人がコロナを現実に身近な脅威とは実感していないはずの日本がこうなのは、何か国民の認識を狂わせているものがあるからだと考えるしかありません。


それは間違いなく、特に地方在住の方の多くが100%正しいと信じる傾向の強いテレビ報道。東京の夜の街でクラスターが発生した、感染者が最多…とだけ聞けば、ほとんどの都民が地方と同じ状況にあっても、都民=コロナ、と「コロナ脳」が働くのかもしれません。


●悪い数字だけを出して「さいた、さいた、ならんだ、ならんだ」

以下、このテレビ問題を斬るために、先日、ITジャーナリストの宮脇睦氏と行った対談の内容を、私のコメントを加えてまとめてみました。


テレビにはフォーマットがあります。それは、視聴者を怖いだろうと不安がらせることで、不安を感じた人が次の情報をみたくなるようにすること。テレビはこうして視聴者を固定客へと取り込んでいます。他方、ネットで情報を得ている人々は、かなり冷静です。


数字をみると、現時点で実効再生産数はずっと1を切っています。しかし、テレビでは怖い数字だけを出し、数字も入れ替えています。ニュースも同じ手口。ニュースは網羅的に報道はしますが、そのなかで視聴者を煽る部分だけを取り出しているのがワイドショー。


最近では、取り上げる対象も「新規感染者」から、「死亡者」、「重症者」にシフトしています。問題のところだけに焦点を当てる。ちなみに、上久保先生が指摘するように、6月18日の厚労省のお達しで、本当の死因や重症化の要因を問わず、PCR陽性だった場合は「コロナで死亡、コロナで重症」と報告するようになっています。


現に、SNS上には、あの大阪府について「8月1日~21日までの死者数35人の内訳をみると、基礎疾患がなく新型コロナウィルス感染症が死因として報告されているのは80歳代の2人だけ、33人は他疾患名が死因となっているか、基礎疾患がある方」との声も…。


本来、PCR検査とは遺伝子があるかどうかを調べるだけのもので、体に害があるかどうかは別です。「感染者」ではなく、正しくは「陽性者」。7月に東京都は増えましたが、報道は、陽性者を「新規感染者」として「最多を更新した」。それは3~4月の大変な時期を捨象しての「最多」であり、緊急事態宣言解除後での「最多」でした。そして次は、100人超え、200人超え…。「最多(さいた)、最多、並んだ、並んだ」、まるでチューリップ…。


実効再生産数が1を割り込んだというのは、もう増えはしない状態のことです。8月18日時点で0.8程度。これは朗報なのに、テレビは伝えません。良い情報を伝えると視聴率が取れないからです。民主党政権時を除けば、政権批判がワイドショーのフォーマット。ずるいことに、政府は何も言わないと読んでいます。PCRが良い例。日本はほぼすべての数字で世界の中で最も良い部類に入りますが、唯一負けているのがPCR検査数です。テレビでおなじみの青木理氏は、政府はやる気ないとして、この検査数を挙げています。


そもそもPCRは検査に過ぎず、治療方法ではありません。これで負けていて何の意味があるのでしょうか。テレ朝のモーニングショーで玉川徹氏が繰り返しているのは、PCRは世界で159位だ、アフリカの「後進国」にも負けている…。これがとんでもないことならば、死亡者数が増えていなければなりません。日本ではそれは抑え込まれています。これは論理的には、PCRが少なくても問題ないことを示しているものといえます。


ワイドショーが「世田谷モデル」と言っている保坂区長の「いつでもだれでも何度でも」のPCRの考え方の背景にあるのは、東大の児玉龍彦名誉教授の参議院での「来週になれば1日5万件検査する、これを10日間やれば問題個所は全部検査できる。」との発言。ならば、50万人をどこに隔離するのか。まず、これが無理です。さらに「来週にはとんでもない数字になる、来月には目を覆わんばかりの事態」と述べましたが、これは7月16日の発言。何も起こっていません。それを受け入れた世田谷区長は、1日300件としていますが、国会では5万件と言ったのに、1か月を経て300件?これら東大名誉教授の発言には論理性がなく、結果が出ていませんが、ワイドショーは頻繁に引用しています。


●テレビのフォーマットで広がる「PCR真理教」

ふじみ野救急クリニックの鹿野晃院長は、かつて次世代の党で国政進出を狙っていた人で、私もよく存じ上げていますが、人物として頼もしい信頼できる医師です。その鹿野院長がある昼のワイドショー番組の取材で、「救急の場合でもPCR検査は検査施設への輸送等の時間を考えると3~4時間かかる、やはり肺CTだ」と述べ、キャスターが「CTなんですかー」と驚いていたのに、その番組で翌日にはPCRを勧めていたそうです。


肺CTといえば、日本は世界で最も肺CTが普及している国。本コラムで何度も紹介している東大医学部卒の私の大学の同級生で某国立大学病院の臨床内科の名医A氏も、患者が新型コロナの疑いがあるかどうかは診ればわかる、その場合、PCRよりも肺CTだと述べていた通りです。その意味で、PCRを医師が必要とした場合に限定している日本は、理にかなったことをしている。なかなか発言しない臨床の医者も、臨床のことなら発言しますが、PCRを勧める話はできないと言ったら、テレビ出演をキャンセルされたとか。


先日、モーニングショーの取材で、キングスカレッジ・ロンドンの渋谷健司教授がPCRについてこう述べていました。「PCR検査は特異度が99.999%なので、感染者はほぼ確実に陽性反応になる。他方で、感度については70%以上なので、感染者でも陰性反応になる場合があるが、これは検査のタイミングの違いで生じる問題。ウイルスが大量に増殖しているタイミングでない場合に陰性反応になる。ただ、検査した段階で大量に増殖していないのであれば、感染していてもそんなに問題はない。」


つまり、PCR検査の精度の問題は考える必要がないという結論です。PCRには精度の問題があると私も何度も指摘してきましたが、海外ではPCR検査を一般の人々にも多用しているではないかという素朴な問題意識に基づく取材にみえました。


この見解が正しいかどうか、「日本ではただの風邪の原因である無数の未確認のコロナ亜種にPCRが交差反応して陽性になっているのが大半である」と100%の自信をもって主張してきた前述のA氏に尋ねてみました。回答は×、間違い。


「特異度については、コロナ亜種を含めたコロナ全体をインフルエンザウイルスと見分ける…という特異度なら99%でしょうが、怖いコロナ(武漢・イタリア)とお友達コロナ(日本土着)を見分ける…のは出来ていない(=特異度が低い)。感度については、適切に採取された検体で測定した時の感度は高すぎる位高い(これが低い定量性にもつながってくる)。ただ、検体採取が難しい(唾液は採るのは簡単だが信頼性ある保証はない)ので、ここで『実効』感度は大きく下がります。」さらにA氏は、「PCRは臨床検査としては、低~中感度・低特異度・無定量性の酷い検査で歴史的誤用」と続けています。


ただ、科学の分野でここまで見解が分かれるというのもおかしな話。A氏によれば…、

「コロナに亜種が沢山あるのは、学術的専門家達も確認しています。彼らは何故か、それらが全て『武漢~イタリアから最近派生した亜種』であって欲しいみたいです。」


「『感染』とは、体内でウイルスが何十万個とかに増えて身体に悪影響を与えている状態ですが、PCRは体外で滅茶苦茶な倍率でDNAを増幅してから検出しようとする方法なので、ウイルスが1個、鼻粘膜にくっついてる『単なる保菌』状態だけで陽性になり得ます。感染と区別出来ません。マスコミはこれを『陽性者でも無症状なので大変怖い』なんて報道しますが、一定頻度存在する『無症候保菌者』に過ぎません。」


結局、この取材もテレビ局としてPCRを正当化できる人を選んでのものだったのか…。


●同調圧力に同調するコメンテーターたち…「全員検査」の論理破綻

そもそも、事実を言うのでなく視聴者の不安をかきたてることしか流さないテレビ局は、あらかじめシナリオを用意し、その通りに発言するコメンテーターを選んでいます。相手が意図通りに発言しない場合は、言わせたいことを言うまで何度でも聞き、仕方ないから言ってあげたら、その部分だけ報道する。まるで自白を迫る検察の取り調べのような…。


逆に、シナリオどおりに言っていれば、何度でも呼ばれます。宮脇氏によれば、「コロナの女王」岡田晴恵氏は医者でも薬剤師でもなく、自分が厚労省にいた頃はと言っていますが、感染研にいただけとのこと。しかも、まだGOになっていないアビガンを飲ませてくださいと繰り返すのは法に触れている…?エモーショナルなのは東大名誉教授と同じ。


日本人の長所であり欠点でもあるのが、人前で堂々と情感を込めて言っている人はウソを言っていないと感じること。「二週間後には」と言っても、二週間前に言ったことを覚えている人はあまりいません。モーニングショーでは「今のニューヨークは二週間三週間後の東京の姿だ」…。そうなっていませんが、テレビだけ見ている人はテレビが真実になります。人前でウソをつく日本人はあまりいませんが、テレビは違う。特に地方の人は、都会と違い、同調圧力が強いとされています。


そもそも政権批判に偏ってきた報道自体が放送法からの逸脱ですが、こと新型コロナは国民の命に関わる問題。公共の電波を使って、こんなことをしていてよいはずがありません。一部情報だけを取り上げ、国民を安心させる情報は取り上げない。なぜかワイドショーは地方自治体も小池都知事も批判しません。自治体に取材できなくなるから…?


玉川徹氏は8月18日の朝に「自分はPCRを1億2千万全国民にとは言っていない」と述べましたが、逃げを打ち始めたのかもしれません。これまで「とにかく全員検査」と言ってきた人です。論理的に考えれば、世田谷区全員検査も全国全員検査も同じこと。つまり、世田谷区で全員検査しても、新宿区に行って戻ってきたらどうするのか。実態は、新宿でもらって世田谷で広まったものです。ならば、世田谷をロックダウンするしかありません。区と区の間には境界線も城壁もなく、結局、全国全員検査しかないことになります。


宮脇氏によれば、8月17日に、このモーニングショーで、これも常連の山口真由氏が実効再生産数に触れており、テレビも少しずつ軌道修正しているのかもしれないとのこと。私たちがネットなどで主張してきたことがようやく奏功?と思いきや、どうも、テレビに最も影響が大きいのはスポンサー企業。いよいよ、民間企業にとっては経済がこれ以上ガタガタしたら困るところまで来ているのか。いずれにしても、いまやネットのほうがテレビを上回るに至ったのが広告収入、その激減がメディアを窮地に追い込んでいます。


●テレビよ、さようなら…いまや信頼と影響力を強化したネットの時代に

国民の多くが真実を報道していないと気付き始めたのがテレビメディア。最近、ようやくネットが社会を動かす重要なインフラになってきたようです。それは発信能力だけでなく、ここ25年ぐらい皆が発信してきた情報の蓄積が歴史を作ってきたことによると宮脇氏は指摘しています。かつてはトイレの落書き的な感もあり、2チャンネルもありましたが、皆が少しずつためた知識経験が積み重なり、いまやメディアより信頼できる情報源に。


確かに、現在では、ネット情報を低く言う人は少なくなりました。テレビでの発言はすぐに消えても、ネットは基本的に消えません。発言者は検証にさらされることになります。


それにひきかえ、テレビはニュースまで酷い…安倍首相が「入院」とテレビは一斉に報じましたが、検査に入っただけ。完全な印象操作といえます。


私自身、松田政策研究所チャンネルをやってみて、ネットで世の中の役に立っていると感じることが増えています。ここにきてネットの力が強まり、ある意味でメディアよりも影響力が大きくなっているとも感じます。新型コロナが、いよいよ国民がメディアにノーを突き付ける時代へと導いているのかもしれません。


ちなみに、上久保先生が出られたテレビタックルでは、私も同様に何度かこの番組に出たことがあるのですぐに分かりましたが、恐らく収録されたであろう大事な部分が相当、カットされていました。テレビの側で、面白い、わかりやすいという部分のみ切り離してつなげ合わせるということをやってしまいます。そのため、上久保-高橋説が単なる仮説ではなく、明確な根拠のあるデータ分析の結果であるということや、欧米との違い、政策的に考えるべきことなどは、視聴者には伝わりにくい番組の作りになっていました。


この点、やはり、見解をじっくりと伝えられるYouTubeでないとテレビには限界がある、詳しく知りたい方は松田政策研究所チャンネルをご覧くださいということになるのでしょうか。上久保先生ご自身が番組放映後、ご自身のフェイスブックに、詳しくはこちらをご覧下さいとして、当チャンネルで私と行った2つの対談番組を挙げておられます。


もちろん、こうして堂々と「集団免疫」をテレビで言う専門家が現れたということ自体、大きな意義があったと思います。いまはマスメディアの危機。この番組では世論を動かすには道は遠いかもしれませんが、今後の影響をみてみたいと思います。

 
 
 

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