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トランプ氏とのディールを日本独立のチャンスに~西半球に特化する米国は媚中の日本をもデカップリング?~

執筆者の写真: 松田学松田学

国会では先週、各党による代表質問が行われ、政治とカネを巡る参考人招致を野党側の多数で決めたことで、衆院予算委員会は来年度予算の審議に既に入っています。やはり国会での論議の焦点は減税と企業団体献金に当たっていますが、減税については、178万円への「壁」の引上げで7~8兆円、多くの野党が主張する消費税率5%への引下げで15兆円の財源の問題がありますので、日銀の利上げ決定で、既に勝負があったと言えるでしょう。


これは、最近、自民党が引き合いに出すようになった「トラスショック」、つまり、英国のトラス元首相が財源の手当てなく大型減税を打ち出したことで英国の金融市場が襲われ、首相辞任に追い込まれた事例をみるまでもなく、日銀が国債増発に包囲網をかけたことを意味します。対外純資産残高が世界一を続ける日本は、大幅な対外純負債国である英国とは状況は異なりますが、それでも1,100兆円の国債残高に対する利払い費増の問題は深刻。


「責任ある積極財政」を本当に実現したいなら、政府の通貨発行権を活用した国債償還で国債を減らす「松田プラン」しか出口はないでしょう。ユーザーからの両替需要に見合う政府デジタル通貨発行であれば、これ自体がインフレの要因になるものではありません。


ただ、もう一つ、国債増発には大きな壁があります。最近、「財務省解体」を叫ぶデモが霞が関の財務省本省庁舎前で行われるまでに至っていますが、消費税収の全額が法律で社会保障給付に充てられているにも関わらず、それでは圧倒的に不足し、社会保障を赤字国債に頼っている現状では、赤字国債発行を禁止している財政法4条がある限り、法律を守るのが使命の官僚にとって、前年度比8・8兆円の税収増も、それを国民への還元でなく、国債発行の減額に充てることを優先せざるを得なくなります。敵は財務省にあらず。


かつて米国金融界発のプロパガンダによる大蔵省解体が、日本の経済植民地化の一環だったことも想起すべきでしょう。敵は法律と仕組みです。この点を見誤っていては、問題の本質から国民の目がそらされるだけです。そして、この財政法4条それ自体が、日本が再び借金によって軍備増強に走ることを阻止せんとしたGHQの置き土産。未だに これに縛られて国民が豊かさを享受できないでいること自体、日本が独立していないことの象徴のようなものです。これを正すことは、法改正ができる国会や政治の責任でしょう。


実は、今年は日本の独立こそが政治の最重要論点になる年ではないかと思います。今週の政界の話題は何と言っても、2月7日予定のトランプ大統領との首脳会談のための石破総理の訪米。「タリフマン」を自称する同大統領が振り回す関税は、もはや核兵器のような威力を発揮しています。これによる脅しが、不法移民の強制送還受入れを拒んでいたコロンビアの大統領まで受入れに転じさせました。日本もディールのタマを出さないと…。


言われているのは、「掘って掘りまくれ」で資源大国になろうとしている米国からのシェールガスの輸入。もう一つは、AI社会の基盤となるデータセンターや発電所への支援。


ただ、日本に本質的に迫られているのは、自国の国防という目的達成のための更に大きなディールであることはあまり知られていません。それは日本自立のチャンスにもなる。


米国はいま、冷戦崩壊後に目指した世界統治から撤退して、南北アメリカ大陸を中軸とした「西半球」を自らのテリトリーとし、その守りに徹する方針に戦略転換しようとしています。トランプ氏のグリーンランドやパナマ、カナダや「アメリカ湾」を巡る発言もその一環。その結果、東半球にある欧州も中東も日本も、米国の軍事介入の視界の外に置かれるだけでなく、そもそも米軍のパワーが大きく低下しており、日本はいざとなれば米国が守ってくれるという前提が消滅するという、戦後初めての事態を迎えようとしています。


日本の答が自主防衛であることは論を待ちませんが、いずれ核武装に向かう韓国が尹政権の崩壊で極左政権に代わると、中ロに加え韓国まで…日本はますます核保有の敵国に囲まれ、最低限、核保有か、それと同等の抑止力の保持を迫られることになります。しかし、日本一国だけでの自国防衛は困難。では、どうするかを、過日、山岡鉄秀氏と論じました。


求められるのは、日本が米国第一主義を鮮明にする米国の国益になる国家戦略を提案する能力でしょう。例えば、米国の防衛領域である中南米への進出が著しい中国に対する抑止の上で、日本がいかに貢献するか。そのプランを積極的に提示することが考えられます。


しかし、決然と対中デカップリングができず、媚中に走る自公政権の現状をみると、このままでは日本は最悪のシナリオを歩むか…もはや、朝鮮半島を捨てようとする米国は日本をも見捨てて撤退し、日本は既に対日侵略が著しい中国の支配下に…。どちらを選ぶかは日本の決断にかかっていますが、それ次第で、トランプ政権は日本が戦後レジームから脱却する上で大きなチャンスにもなるはずです。では、どうすべきか。


今回は以下、この重いテーマで議論を交わした山岡氏との対談の内容をご紹介します。


●米国の国防戦略は西半球防衛に大転換、他地域からは退き、自分でやれ

冷戦終了後の米国の戦略は、地球全体を一国で統治するという、歴史上なしえなかったことをやろうとするものでした。しかし、中東での無理な戦争でつまずき、威信が傷つき、アフガンから惨めな撤退…これは必然でした。そんなことまでやってしまうのが今の米国です。基本的なオペレーションもバイデン政権下でできなかった。やるべきことを実行できない。超大国であっても、崩れるときは崩れてしまうものです。


日本が防衛費43兆円を決めると、米軍需産業が武器を買えと日本に乗り込んできましたた。彼らにとって日本がどうなるかは興味の対象ではありません。供給されるトマホークは在庫処理であり、前々時代の武器。これで同盟国といえるのか…。


冷戦後の米国は次々と戦争を仕掛けました。ブッシュネオコン政権がそうでした。第一次トランプ政権は戦争をしませんでしたが、バイデン政権で惨めに終了。第二次トランプでは、「掘って掘りまくれ」と、自らエネルギー大国となって中東への関与を減らすことになります。NATOには懐疑的で、欧州は自分でやれと。対外的関与から退いていきます。


しかし、トランプの米国は決して米国に閉じこもるわけではありません。トランプ氏は「米国第一」とともに、「偉大なる米国」を掲げています。グリーンランドを取りにゆき、南米権益維持のためにパナマ運河の返還を求めています。自分たちの国力を維持するために必要なことはする。そして、ハワイから東~北米南米大陸~大西洋の中間線まで、西半球を絶対防衛圏にして、自分たちのテリトリーを確立することになります。


この「西半球」という捉え方は、ワシントン大統領の時代からのモンロー主義もそうで、欧州に対する不干渉主義とは西半球のことでした。だから、パナマ運河開通に地道を上げた。それは1914年でした。その先には日本を叩き潰す計画があったとか…。


日本は西半球にいません。太平洋の彼方です。冷戦構造の頃は日本の位置がアドバンテージで、東の共産圏陣営の目の前、米国にとって地政学的に重要でした。そこに隈なく基地を置きました。日本が黙っていても、日本の経済的繁栄がいい、言うことを聞いてあげよう。属国でも相対的に優位でしたが、今度は戦略が変わり、米国はスーと退いていく…。


中国には接近したくても拒否戦略をされます。豪州、ハワイを繋ぐ線まで撤退する傾向が現に出ています。そこで、世界最強の米軍を極東に惹きつけておかねばと言われますが、問題がいくつかあります。


●米軍の能力自体が大きく低下、問われる日本の対米提案能力

一つは、本当に米軍は強いのかという問題です。ワシントンの空港で米軍ヘリが民間航空機と衝突し、トランプ氏は背景にDEIがあるとしました。米軍の士気が低下している。軍としての補給能力も疑問。極東まで出てこれない。艦艇の損失があっても補給できない。


戦争の形態も変化しています。極超音速、衛星、量子コンピュータ、ステルス性のはく奪、ドローン攻撃。今回の大統領就任式の屋内開催もドローン攻撃を怖れたからだとか…。


いまや米軍が強いと言えるだけの抑止力を持っているのか?製造業の海外へのアウトソーシングで部品を国内で調達できず、建艦能力なども低下しています。闘えないし、闘う気もない。最強の米軍がいればいいというのは、もう甘いでしょう。欧州、中東、極東の三正面作戦はとっくにできない。欧州も自分たちでNATOを運営しなければなりません。


米軍の力が低下する。日本のオプションを考えると、「米軍にいてほしい」では力になりません。こちらから戦略を持ちかけて、これでどうですか、と言えなければなりません。高市氏の発言「基地があるから逃がさへんで」ではありません。環境が変わりました。


米国にとってプラスのプランと戦略を、日本側から積極的に提示しなければならなくなりました。バイデン政権だと話のしようがありませんでした。トランプ政権で交渉の余地が生まれますが、こちらの立案、プレゼン能力が死活的に重要になります。それも、スピードの速いトランプ政権のもとでは、すぐにやらないと、空白期間があるとやられてしまいます。トランプ氏の場合、まずガーンとかませてきます。そんなことは米国のためにならない、もっといい案があると。まず交渉のテーブルにつかせるために、トランプはぶち上げていますから、直ちに有効な反論と説得をすることが不可欠になります。


●最悪の朝鮮半島情勢…核武装かそれと同等の選択肢しかなくなる日本

韓国は今回の政変で「共に民主党」の極左政権になるでしょう。他方で、韓国は核を持つことになります。これは最悪です。もう、「核無き世界」などと言っていられなくなります。ロシア、中国、北朝鮮…日本の周りの国々が全部、核を持ち、しかも、韓国が日本の味方ではなくなり、心情的には北朝鮮を向くことになります。


こうなると、核武装以外に日本のチョイスはなくなります。SLBMを持つプランなど、用意が必要です。米国はそうしたシナリオで心配しているようです。もし、核武装をしないとすると、どんなオプションがあるか。数では対抗できません。何百もの核弾頭が日本を向きます。どのレベルで相手を思いとどまらせることができるか。日本のテクノロジーで何ができるか。三峡ダムを破壊できるぐらいの破壊力などが必要かもしれません。。


●米国は西半球への中国の進出を食い止めたい…日本の対米交渉のカードに

元々、在日米軍のミッションには、日本の防衛とは書いてありません。基地を置いておける政治環境の維持ということが書かれています。自分のことは自分でやってくれということになる。日本側がどう交渉すれば良いのか?


今後、日本は自主防衛に舵を切るしかありません。それがないと、基地問題も解決しない。そもそも、この地域の抑止力維持は日本一国ではムリです。では、この点は米国に何を求めるのか。特にシーレーンの確保でしょう。エネルギーも食料も、そのほとんどを海外に依存している日本は、これが止められたら終わります。コラボを前提のプランをもっていき、巻き込んでいくことが必要です。


米国には、中国が西半球に出てきてほしくないという利害がありますが、現状では、一帯一路で中国の南米への進出には著しいものがあります。ペルーに大きな港を確保し、それで中国は南米と結ぶ。パナマ運河も中国の会社が運営しています。ニカラグア運河までつくろうとしている。米国としてほっておけません。


米国としては第一列島線で中国の進出を食い止めたい。そのために米軍基地は必要ですが、攻撃を受けたときに第一撃で米軍としてサバイブできません。いったん逃げる。離陸する前に破壊される恐れがあり、ヤバいと思ったら、豪州、ハワイ、グアムに…。


F16も撤退しています。抑止力は維持したいが、米軍基地を置いていてもかなりの危険にさらすことになります。ではどうやって抑止力を維持するか、米国と膝を突き合わせての議論が必要です。米国は、中国が台湾を侵攻したら関税100%…これは、戦わずしての抑止力。裏返せば、軍事的なコミットメントはしたくない。だから経済を持ち出しています。


●日本の最善のシナリオとは自主防衛への切り替えと米国防衛への寄与への主体的な提案

日米地位協定や日米合同委員会に、これまで手を付けられませんでした。ここでチャンスがあります。日本は自主防衛に切り替えていくと。かつて重光葵は、12年間で完全撤退を要求する交渉をしていました。今度は自主防衛を宣言する。ついては、今の米軍基地や安保条約の在り方を再検証の対象にさせていただくと言えば、それはそうだ、になります。


ずっといて守ってください、と言いながら、この地位協定と日米合同委員会を変えたいと言ってもダメです。自らは軍事的コミットメントをしないくせに、となる。日本が自立的行動をできるかどうか、それができる指導者がいることを示す必要があります。


どこまで自主防衛をするか、どんなタイムスパンでやるのか。その上でのディールでしょう。こちらがそういう動きをすればテーブルに着くのがトランプ政権です。


対中関係では、石破総理が言うバランス外交はあり得ません。中国依存を減らしてデカップリングすることに断固たる姿勢を示す必要があります。安倍氏に対するオバマ大統領の態度が変わったのは、一帯一路に各国がなびくなか、日本だけが行かないとしたことでした。トランプの時も安倍氏がデカップリングを説いていたので、関係がよくなりました。


対中依存度を低めるのは当然のこと。中国の長期戦略は、外国への依存を減らし、外国を自国に依存させようとしているのですから。日本だけでなく米国の防衛のために、と。


悪夢の朝鮮半島の状況下で抑止力を核も含めて自分で考える。その過程で地位協定を見直す。最善のシナリオとは中国のデカップリングでしょう。米国は西半球と言っても、自分たちの安全のための関与はするので、そうした米国の戦略と整合性のある戦略を立て、米国に提案すべきです。それがディールです。米国にプラスの抑止力を考える。建造能力の低下を日本がカバーする。米国軍を世界最強にするには日本の協力が必要ですよと。その中で中国が暴発しなかった、となるのが最善です。


●今のままでは最悪のシナリオ…媚中によって米国に見捨てられた日本は中国になる!

これに対して最悪のシナリオとは、日本の政権がこれらを全く考えず、何もやらないことです。中国に媚びて中国の延命に手を貸す、自主防衛力もない。シーレーンを止められたら終わりです。自給できません。コメの備蓄が1.5か月しかない。対米関係を壊して中国にすり寄り、中国から移民が殺到し、土地を買いあさられる。こうして、2020年代の間に、日本は実質的に中国の支配下に入ることになります。


こうなると、米国は日本を見捨て、日本から離れていく。バイデン時代は、中国と米国による共同統治という概念がありましたが、トランプ政権ですと、日本がダメだとなると、これからは西半球だ、になるだけです。豪州により大きな軍事基地を造るなど、日本無き対中政策に転じるでしょう。


ただ、米国が黙って退いていかない可能性もあるとの指摘があります。ここまで日本を支配して、ただ撤退する?全部壊して撤退するパターンが考えられるそうです。スノーデンの証言では、横田に彼がいる間に、日本の重要インフラにウイルスをしのばせているとか…。マルウェアを起動させて全て停止させる。全部シャットダウンして退く。


日本政府は能登半島を本気で復興させる気がないのかという声も出ているように、インフラコストのかかる過疎地域からは効率重視で「戦略的撤退」を進めている現状があります。地域が衰退して中国が入り込んでくる。米国は間接統治でしたが、中国はガンガンやってくるでしょう。日本が米国と連携できず、中国の配下に入り、住みにくい国土となり、AIで監視カメラで監視される。思想統制、言論統制下に置かれる。日本は中国になる…。


トランプ政権は劇薬にも薬にもなるとの説があります。ニトログリセリン?どっちにも転ぶ。チャンスでもあるのですから、こちらから意思表示することで戦後レジームからの脱却が実現できるばすです。これは日本自身の問題でしょう。ただ、このままなら、上記の最悪のシナリオに。日本はあっさり滅亡し、昔、日本人という良い民族がいた、2000年以上の歴史がありながら。なんて馬鹿なことをしたんだ…と、後世、言われかねません。

 

…以上は、大統領就任式前後に訪米した山岡氏がトランプ政権周辺の要人の方々から聴取した内容に基づく議論なので、信憑性が高い判断だと思いますが、同氏の最後の結論は、「日本人にはできる。米国の方々と話をして、そう感じた。腹を決めるかどうかだ。」でした。


今年は選挙イヤー。目先の減税や政治とカネの問題も大事かもしれませんが、日本の政界の使命は、戦後初めて迫られる日本の真の自立への覚悟と戦略を有権者に問うことではないでしょうか。その上で、トランプ大統領が打ち出す政策とほぼ同じ主張を訴え続けてきたのが参政党であり、日本がディールできる国へと脱皮するためにも、同党の国会勢力の伸長を期待したいものです。

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