日本では総選挙で与党が大敗し、昨日の首相指名で発足した第二次石破政権は少数与党として綱渡りの不安定な国会運営を強いられることになる一方で、米国では11月5日に行われた大統領選でトランプ氏が大勝、上院も共和党が多数を占め、下院も多数となればトリプルレッド、トランプ大統領は思い通りの安定した政権運営ができることになります。
大統領選について米国メディア(日本の報道も)は最後まで、ハリス氏ややリードとの世論調査を流し続けましたが、これは同氏が勝った際に民主党側の不正による勝利との批判をかわすためだったとの穿った見方があります。司法もメディアもトランプ氏を悪玉に仕立て上げる様々な工作を展開しましたが、そうした妨害を跳ねのけてのトランプ氏勝利は、米国民が報道にとらわれずに本質を見抜いていたことを示すものでしょう。
真実をゆがめて報道するメディアに対抗して、いまやSNSが政治を動かす存在に。日本でも、都知事選での石丸氏や自民党総裁選での高市氏は、当初はメディアが無視していた存在がSNSの力でフィーバーにまでなったもの。総選挙では、メディアが無視し続けてきた参政党の存在が選挙戦で有権者に広く知られるようになり、3議席を獲得しました。
国民の気付きが草の根から政治を動かす…この新しい動きが日本の政治を本格的に変えていくことにつながるかどうかですが、この点でもう一つ注目すべきは、現在真っ最中の兵庫県知事選かもしれません。「パワハラ、おねだり」とメディアでさんざん叩かれた斎藤前兵庫県知事。いま知事選でぐんぐん支持が伸びているようです。
それは、報道されてきたこととは全く異なる真実がSNSで拡散されているから…どうも真相は、前の井戸知事までの時代に出来上った様々な利権関係を改革しようとした斎藤前知事が、それら勢力からバッシングを受けることになったことにありそうだ…そう考えて取材に入った報道アナリストの新田哲史氏が、マスコミが隠す事実を語ってくれました。
例えば、パワハラが原因で自死したとされる幹部職員は、実は公用PCで「愛人日記」…この事実を議会もメディアも隠蔽。問題は、特定の思惑からか、「報道しない自由」を謳歌するマスコミにあります。国民が事実を知らされなければ民主主義は成り立ちません。これは「大手メディアvs草の根SNS」の闘いだ…知事選の結果を見守りたいと思います。
さて、私がこのコラムでかねてから指摘してきたように、世界の政治にも大きな潮流変化が起きています。それは、これも草の根の国民運動が支える反グローバリズムであり、その立場を明確にしてきたトランプ氏の大勝は、この流れを決定づけるものといえます。
冷戦終了後、米国一極支配のもとで米国という国家を使いながら、90年代からは金融、21世紀入り以降は戦争利権(ネオコンと軍産複合体)、そしてITや環境(脱炭素)、さらにはコロナパンデミックで正体を現した医産複合体が、国家よりも上位に立ち、国家主権や民主主義を軽視しつつ、国境を超えて自らの利権を拡大してきた構造がグローバリズム。
彼らに支配された米民主党政権や主要メディアは彼らに都合の良いプロパガンダ情報を流し続け、それをそのまま垂れ流す日本の報道に洗脳された日本国民は、グローバリズムが引き起こしたウクライナ戦争の本質が見えないままロシアのみを悪と決めつけ、諸外国が既に接種をやめている新型コロナワクチンに疑問を持たずに海外製薬利権に奉仕し、もはや転機を迎えた脱炭素がエネルギー政策の至上命題と信じ込まされています。
グローバリズム勢力はDS(ディープステート)とも呼ばれますが、この言葉を使用する者には「陰謀論者」とのレッテルが貼られてきました。DSこそ敵だと公言するトランプ氏が国民に支持されたのは、もはやこれを陰謀論として片付けられない現実に直面した諸国民に気付きが広がった証左でしょう。同様の現象が欧州でも、未だメディアによる「極右」とのレッテル貼りのままの「愛国国民主義」の台頭で、政治情勢が激動しています。
実は、トランプ氏の政策は、ウクライナ戦争の即時停戦も、前大統領時のWHO(バンデミック全体主義)からの脱退も、行き過ぎた脱炭素の見直し(同じくパリ協定から脱退)も、日本の国政政党の中で唯一、反グローバリズムに立つ参政党の立場とほぼ同じです。その意味で参政党は、世界の新潮流を日本で体現する唯一の政党ともいえるでしょう。
「アメリカファースト」とは、どの国もグローバリズムに支配されることなく「自国ファースト」であれ、その上で、各主権国家が独自性を尊重し合うことから調和のとれた国際秩序が生まれる。世界の新潮流とは、この当たり前の常識を取り戻すことでもあります。
今回の総選挙における保守層の自民党離れは、日本国民の間にも気付きが広がりつつあることを示していますが、トランプ氏が大統領に就任する来年は、日本にとって戦後80年の節目の年。そろそろ戦後の歴史認識を見直し、長年にわたるグローバリズムによるプロパガンダから国民が脱却して国家意識を取り戻すべき時期であり、国際的にもその必然性が高まっています。そうしなければ、日本は世界の潮流からも見放されることでしょう。
そのためには、日本の戦後の構造が「米国製日本」であることや、近年の世界を動かしてきた力学と日本との関係について、日本国民自身が知識を深めねばなりません。今回は以下、本テーマについて議論を整理した山岡鉄秀氏との対談の内容をご紹介します。
●総選挙での与党大敗の原因は安倍氏暗殺以降の日本の左急旋回…戦後保守は対米追随
過日の山岡鉄秀氏との生配信対談では、歴史的な流れも含め、戦後日本が置かれてきた構造についての整理がなされました。戦後の日本が採った対米隷属路線と国連中心主義はもはや破綻しています。日本が日本らしい新しい国づくりに向かうために、この内容を多くの方に共有していただければと思います。以下が同氏と私が論じた内容です。
「自民党の急な左旋回が、総選挙での与党の敗因。増税路線に対する減税、『手取りを増やす』ということもあったが、本質は安倍氏を支えた岩盤保守層が大きく離れたこと。」
「自民党内の保守派でなんとかできないかとの希望があった。そこで高市氏が決選投票に。高市総裁なら敗けることはなかったことが分かっていたのに高市潰しをした。これを最優先した。なりふり構わず後先考えず、国民の意思を無視、これがあきれ返られた。」
「左急旋回は安倍氏暗殺以降のこと。なぜこのタイミングで?米国という国が完全に極左化。それとトランプ時代にはなかった戦争が関係する。その背後にあるネオコンの思想自体が極左的。トロツキー以来の世界同時革命思想。極左グローバリズム。」
「日本の左急旋回は岸田前総理の対米追随によるもの。米国が作った戦後日本国。米国的民主主義を維持継続するのが自民党のミッション。それを肯定するのが日本の保守になっている。ネオコンを陰謀論とし、米国製日本国を維持。その日本国とは、グランドストラテジーを考えるのをやめて、対米追随と国連中心主義になった日本である。」
●弱体化し極左化した米国をコピーしている自民党政権と国家意識を喪失した日本国民
「しかし、米国は国連の承認を取らずに国際法を無視して戦争に突っ走る国になっていた。ソ連崩壊を契機に、単独覇権主義。そしてネオコン思想が台頭。21世紀は戦争の世紀に。ネオコン的帝国主義に米国という国が支配された。」
「フセインにクェート侵攻をそそのかしたのも米国。広告宣伝会社が自国民を騙して戦争に。そして、大量破壊兵器という嘘で戦争に。米国は国連の承認ではなく、有志連合という形で侵攻。対米追随と国連中心主義が日本にとって矛盾するようになった。」
「しかし、対米追随に走ったのがブッシュ追随の小泉総理。米国がどんな国になろうとひたすら追随する国になった。国際法を無視してでも。経済面では構造改革を抵抗なく受け入れ、強かった日本の形を破壊。属国の日本が強くなってはいけないと日本弱体化。ウォール街が日本の資産をコントロール。日本は自身を喪失する行為を90年代から始めた。」
「日本解体、日本徹底従属路線に。しかし、このことを日本人自身が認識していない。ソ連が崩壊したときのエリツィン時代と同じ道。プーチンが元に戻したため、西側から彼は悪魔化された。だが、単独覇権主義で米国も消耗した。アフガニスタンから惨めな撤退。」
「弱体化する米国が極左化した。LGBT、移民大量受け入れ、麻薬の流入。日本は、極左化した米国に付き従うことで、自国の国民が困窮しても知ったことではない。米国に言われたらカネを海外にばら撒く。ウ戦争も一方の立場に。LGBT理解増進法を無理やり通した。今の移民急増も米国と同じ。極左化した米国をコピーしているのが自民党。」
「これに気付く国民は増えてはきているが…。米国が書いた憲法をそのまま。それが恥ずかしいと思えない。国民の意識の中から国家意識が消滅。高市保守派潰しに嫌気して自民党の今回の惨敗につながった。自民党がいかなる性質の政党としてこんにちに至ったか、ここを踏まえて大統領選後の日本を考える必要がある。」
●国民が意識を変えねば日本は永遠の属国に…戦後の「米国製日本」からの覚醒が必要
「世界の動向をみると、反米のBRICS会議に36か国が参加。産油国が入っている。そこでは新通貨と決済システムが目指されている。米ドルに依存しない体制を。相対的に米国の国力が中長期的に低下している。トランプが勝利しても、移民が武装化し、アンティファ、BLMと結びついて混乱を起こす可能性がある。」
「トランプは、日本にいい加減にせよという立場だろう。『核を持てと晋三には言った』とされる。憲法を変えろといえば、日本は即座に追従するだろう。自民党ではできない、自分では国を守れない。トランプに言われてようやくなら、恥ずかしいこと。属国の証し。」
「その時に、日本の保守派が覚醒してトランプショックを活用して日本をまともな国にできるかどうか。それができないと永遠の属国。国民がそういう意識になるかが問題。」
「日本側が安倍氏なら、トランプ氏は自分で考えろとなるが、石破では、こうやれと。マッカーサーメモの如く。それに伍する政治家がいるか。今回の選挙は、その方向に国民が動いていることを示してはいるが、よほど自覚を持たねばならない。」
「今回も国連は、天皇について滅茶苦茶なことを言ってきた。国連中心主義も破綻している。戦後の日本の二大ドクトリンの両方とも無理になった。ここで戦後の米国製日本国が崩壊し、新たな日本国を創らねばならない。国会議員にはその自覚が必要だ。」
●日本保守党vs参政党=マスコミ支配の戦後レジーム保守vs反グローバリズム国民保守
「メディアは日本保守党は取り上げるが、参政党は無視してきた。米国製日本国のお先棒を担いでいるのが日本保守党だが、参政党は逆の立場であること、参政党が反ワクであることなどが要因か。米国は対日占領でメディアをコントロールした。プレスコード。それから時を経ても、主要新聞社に米ソ両方からエージェントが入り込んでいたことが暴露されている。日本の大手メディアは米国のプロパガンダ機関に。」
「日本保守党は『保守』とは言っても、LGBT反対とか無秩序な移民に反対するのは真っ当だとしても、歴史観や国家観で従来路線を踏襲するのか、見直すのかで参政党とは大きく異なる。ここで『革新的保守』という言葉を提案したい。これは既存の米国追随ドクトリンを見直し、革新する立場。日本の保守派に求められているのは米国が作った日本を見直し、自分自身を取り戻すこと。グローバリズムから国民中心の国家を取り戻すこと。」
「そもそもグローバリズムを認識している国民が少ない。それを概念として認識できないと、既存の概念で生きていくしかない。歴史観、国家観を見直す。ただし、ナショナリズムという言葉には偏狭なイメージがあるので、『愛国主義』と言うべきか。」
「日本のマスコミが支配されている。読売、産経もそうだ。戦後レジーム保守の背後には、今の米国を支配するグローバリズム推進勢力。歴史観の見直しを陰謀論者とする。ゆえに、既存勢力からすると参政党は邪魔な存在。日本保守党は自民党の保守派と違わない。」
●同時有事発生の来年に備え対米依存から脱し、ロシア、インド、BRICSに食い込め
「来年は同時有事発生の年に。米国が動けない中で、中国が台湾を封鎖。北朝鮮が韓国を攻撃。ロシアも日本が資産凍結していると引くに引けなくなり、習近平に言われると動かざるを得ない。ワグネルが上陸。礼文島占拠。北海道が半分ぐらい落とされる?」
「在日米軍は戦闘部隊というよりも、ロジスティックスを重視。後方基地の役割。中国は第一列島線より西に近づけさせない。戦術核兵器には通常兵器の不均衡を相殺する能力がある。米国が圧倒的軍事力というが、東アジアに展開できる軍事力がどのぐらいか?戦術核を持つ国に対してどれだけ有効か。」
「トランプ氏は、台湾有事があれば関税を引き上げる、武力行使は必要ないだろうとしている。ディールで。裏返すと軍事力の行使は避けたい。在日米軍司令部が市ヶ谷に。海上自衛隊は完全に第七艦隊に組み込まれた存在。陸自や空自は劣化した武器・装備を高く買わされる。台湾有事は海自が中心だが、そうなれば米軍と一体で闘わざるを得なくなる。」
「起死回生の策は?トランプ氏は反戦であり、ウ戦争が終われば、日本は、しれっと、ノーマナイズ、正常化すべきだ。ロシアとの緊張関係を一気に緩和する。三正面は戦えない。これは、ロシアに対する好き嫌いではない。戦争が終わったなら、もう全て終わった。全てを正常化し、敵対関係を即座に解消すべし。」
「これで中ロに楔を打ち込む。BRICS、インド、ロシアと良い関係を。力による現状変更は許さないという論理も、戦争が終われば終わりだ。日本が何を言っても変わらない。ウクライナはこれまで通りには存続しない。東はロシア、真ん中は米系企業の飛び地、西はポーランド。ゼレンスキーはカネをもって海外へ。日本は対米追随ではなく、ロシア、インドを梃子にしてBRICS、グローバルサウスに食い込むべし。」
…果たして石破政権にそれができるでしょうか。石破氏をアンチ安倍と見るトランプ氏は、大統領選後の各国首脳との電話会談が概ね20分以上だったのに対し、石破氏とはたった5分だったとか。強いアメリカを標榜するトランプ氏は強い指導者しか相手にしません。
政権基盤が弱く不安定な石破政権が日本にとってさらなる不幸の始まりにならないよう、日本ファーストの政治潮流をいかに伸長させるか。これからの日本の命運を決めるのは、戦後80年の来年に行われる参院選において、「SNS政治」の時代に覚醒しつつある日本国民がどのような選択をするのか、なのかもしれません。
Comments