top of page
  • 執筆者の写真松田学

コロナに始まりコロナで終わる一年…見えない戦争が可視化した一年~日本はどうする~

何もかもが異常だった今年もあとわずかとなりました。コロナに始まりコロナで終わる一年…国民が巣ごもりを強いられるなかで迎える年末年始も異常です。最後には英国からの変種までコロナの話題に加わりました。このコロナ、いつの間にか中国の覇権拡大を助長し、米大統領選をも決定づけ、米国の民主主義やメディアの異常さも世界を驚かせました。トランプは戒厳令に?バイデンまで起訴?…まだまだ混乱は続きそうです。


コロナは各国の財政金融政策を異常に膨張させ、株式時価総額が初めて世界のGDP総額を上回る事態まで招きました。まさにバブル。日本の国家予算も異常に水膨れし、世界中がMMTへと走るなか、その着地点は誰も展望できていません。


日本の政界もコロナに振り回された一年でした。安倍総理の病気をストレスで再発させ、政権は菅政権に交代。菅総理はコロナ禍で解散も打てず、感染者の拡大で支持率は低下…。もう一つ、支持率を低下させそうな事件が、また出てきた安倍氏の「桜」前夜祭問題。さらに吉川前農水相の疑惑…。政界はこれらの話題で一年の幕を閉じそうです。


ただ、安倍氏の「桜」案件は、虚偽答弁?の道義的な責任とか、安倍氏の不起訴を問題視する一部世論も盛り上がっていますが、政界に求めるべき大事な視点が抜けていないか。


松田政策研究所chでは年末に、当研究所とご縁の深い4人の論客に一年を振り返っていただきました。そこでの話題の中心は、やはり伸長する中国によるSilent Invasion。選挙もメディアも気にせずに長期戦略を遂行できる全体主義の強さに対し、日本の政治はあまりに無為無力にみえます。今年は世界的に民主主義の機能が問われた年でもありました。


ここでは上記4名による一年の総括をご紹介しますが、いまの日本に問われているのは大きなビジョンを構想し、提示すること…。日本の政界にはとてもできそうにありません。来年も、松田政策研究所はいまの日本の政治にはできないことをぶつけてまいります。


●安倍氏の責任とは?秘書のほうが罪深い

まずは安倍氏の話題から。ホテルでの前夜祭の費用支出について検察の捜査で問われていたのは、第一に公職選挙法違反でした。しかし、参加者からは5,000円も支払わされた割には料理が少なかったとの不満の声も出ていたとか…。これでは金銭的な便宜供与の認識がないので、選挙のための買収にはなりませんし、毎回、最高の得票率で当選し続けてきた安倍氏側に買収の動機などあるはずもないでしょう。


そこで、もう一つの政治資金規正法における収支報告書記載義務違反ということで、公設第一秘書の略式起訴と略式命令となり、安倍氏は不起訴となった次第ですが、これで国民の政治不信などと騒ぎ立てるのはいかがなものか…。検察からみれば、本件は金額的にも悪質さの度合いからみても、略式起訴すら微妙な案件だったとのこと。告発人側は安倍氏の不起訴に納得せず、検察審査会への申し立ての検討も始めたそうですが、日本は法治国家です。気に食わないから…世論が…で、扱いが変わるなら、まるで韓国になります。


そもそもこの案件では、秘書が安倍氏に報告をしていなかった以上、総理大臣としてすべての時間を国家に捧げるべき立場だった安倍氏ではなく、国会議員が国政に専念できるよう、わざわざ税金を使って補佐役としてつけている公設秘書の側の義務違反のほうが罪深いように思います。一国の宰相が膨大な収支報告書のすべてに目を通してチェックするようなことに時間を費やしているようでは困ります。


総理だからこそ身ぎれいさが求められる、自分の事務所も監督できない人がどうして国家を預かることができるのか?などと言われますが、政治家を身ぎれいにさせる義務を負う会計責任者の責任のほうにも目を向けてほしいもの。安倍氏は国会で虚偽答弁と批判されていますが、知っていて嘘をついたのではない限り、虚偽答弁は言いすぎでしょう。


もちろん、事実と違う答弁をした責任は問われます。ただ、嘘をついてそんな答弁をさせた秘書のほうの責任はどうなのか。公設秘書は国費をもって充てている公的な機能であるはず。その点をより明確にして、国会議員は国政に専念させるべきだという視点があってもよいように思います。こんなことをあえて述べるのは、政治家の責任を問う議論のなかで、国益のために政治をどう機能させるという視点が不足していると思うからです。


●政治家の真の腐敗、民主主義の真の腐敗とは

これはどの民主主義国にも共通の弱点ですが、選挙やカネなどの公正さは大事であるとしても、それに伴う責任を政治家本人に負わせるあまり、有意な人材を国益のために存分に活かすメリトクラシーのほうが忘れられがちです。今年一年、世界で明らかになったのは、いまや全体主義と戦わねば、私たちの民主主義を守れない時代になっているということ。もう少し、国益上の危機感が、政治に対する見方にも必要でしょう。政治の本当の腐敗とは、むしろ、政治がその本来の機能を忘れてしまうことだと思います。


先般、広島3区の自民党の衆議院選挙公認候補者の公募で、安全保障問題では永田町の第一人者だった某・元衆議院議員が最終選考にすら残されませんでした。理由は、最終選考に残すと、公開討論の場で、出来レースですでに公認が決まっていた地元県議など、他の応募者たちとの圧倒的な実力差がはっきりしてしまうからだったとのこと…。これが与党として国家を担う国政公党がやるべきことなのでしょうか?


政党の本来の機能の一つに、国のリーダーとなる人材を発掘して育てることがあるはず。しかし、現在の自民党は、地方の既得権益を前に、国政にとって有為な人材の政界参入を妨害する政党になってしまっているようです。似たようなことは私も経験しました。


「桜」の経理処理で政治不信を招いた?安倍氏の場合、世界的に著名な戦略家であるルトワック氏が、生まれながらの戦略家としてチャーチルと並ぶ存在とまで評したほどの政治家です。インド太平洋構想で世界の戦略地図を何十年ぶりに変えるという偉業を達成した。その安倍氏が現職総理のときに目指した憲法改正を、野党はメディアと一緒になって、「もりかけ桜」で徹底的に邪魔をし、頓挫させたことも忘れてはなりません。


これらスキャンダル問題では、野党が官僚たちを罵倒する姿がテレビで何度も流されましたが、官僚とて、自らの置かれた制約があり、自分がやりたくてやっていることではありません。ご家族も大迷惑。優秀な官僚たちが次々と辞める原因になっているそうです。


メディアの売れ行きや野党のパフォーマンスのために国益が犠牲になっている。これこそが民主主義の腐敗といえるでしょう。その間に、中国は着々と、日本に対してもSilent Invasionを仕掛けています。今年一年、習近平は全体主義の優位性?に高笑いか…。


私は陰謀論の立場はとらない者ですが、米大統領選は、あの米国までもがいかに、メディアもSNSも政界も裁判所までが?中国によるSilent Invasionの餌食になっているかを如実に示したものだったと思います。それは、世界を中国にとって都合の良いように変えている新型コロナまでもが中国共産党の陰謀?とまで思わせる凄まじいものでした。


●今年一年を振り返って…世界は、日本は

さて、今年は皆さん、忘年会を控えられているかもしれませんが、松田政策研究所は決行しました。ただし、議論の忘年会です。今年は歴史上、忘れられない年になりましたので、「忘年会」にはなりませんでしたが…。2020年とはどんな年だったのか、21年はどんな年にしなければならないか、今年一年、松田政策研究所で世界を斬っていただいた多数の論者のうち4人の有識者たちが思い思いに総括しました。今回のメルマガでは、これを中継した一時間番組をご紹介しています。


結局、今年はコロナであれ大統領選であれ、中国による世界覇権への動きが本格化した年であり、見えない戦争が可視化した年だったといえます。そんななかで日本に問われるのは、米国に頼らない自律的な戦略であり、大東亜で目指されていたはずの新たな国際秩序に向けた大きなビジョンの構築でしょう。いまの政治家では無理なのが最大の問題です。

以下は、各人の発言の要点です。


【宇山卓栄氏】コロナの功績は中国が悪い存在だとの認識を世界に定着させたこと。日本は対中包囲網での多国間連携をリードすべし

「コロナは一体誰のせいなのか。日本政府はどういうわけか、中国に対して責任追及していない。米国はその構えをしていたが、日本ではその発信もしない。その中で日中往来を決め、王毅外相に反論しない。日本は中国に何を気兼ねしているのか。財界の影響力を政界が無視できないのだろう。」


「経団連は中国とのビジネス再開を要望していた。二階幹事長を切ればよいはずだが、経団連が中国とズブズブの中で、二階さんを親中派議員たちが応援している。ズブズブは続けざるを得ない情勢だ。日本は簡単に中国切りができない。」


「もし上久保先生のおっしゃる集団免疫説が有効なら、政府は国民にきちんと説明すべきだった。政権は国民とのコミュニケーションをしてこなかった。不安だけがいたずらに増幅された。ただ、コロナには良いこともあった。それは、世界中の人々が中国のでたらめを認識できたこと。情報を隠ぺいしたからコロナが世界に広がった。中国は何とかしなければいけない、との意識を覚醒させた。」


「中国が悪い存在、有害な存在だとの意識を共有しながら、日本は多国間の連携を進めていくべきだ。インド太平洋、クアッド、日米同盟…等。ダンピング輸出で金を稼ぎ、技術を窃盗して…。許さないとの発信のリーダーシップは日本だからこそとれる。バイデンが親中派なら、彼を反中の陣営に引き込んで正しい道を進めさせるのも日本の役割。反中を進めたトランプの実績を日本は引き継ぐべき。その責任を全うすべき。」


「菅政権については、評価する部分は、東南アジア外交で中国とのデカップリングとサプライチェーン再編を進めていることだが、他方で、二階さんに支えられた親中ではないか。いつまでも二股外交は続けられない。旗幟鮮明を菅さんができるかどうかだ。」


「皇位継承を来年こそはしっかりと議論すべきだ。天皇陛下とともに2,000年間歩んできた日本国民。宮家の復活へと皇室典範の改正で、政治が音頭をとるべき。安倍政権はやると言って道半ばだった。その意思を菅さんが引き継いで、男系継承を守っていき、日本民族のアイデンティティと、皇室を中心とした日本人の団結を。2021年はそんな年に。」


【山岡鉄秀氏】米国に対するSilent Invasionがここまでも…日本は根本的なカルチャーチェンジを

「今年は危機の始まりだった。構造的にあった危機が顕在化した年だった。カレンダーでは今年は終わるが、危機の構造は続いていく。問題は日本政府に能力がないこと。米国があのような状況では多国間の連携が必要だが、では、それはどうするか。具体的には集団的自衛権の行使にほかならない。」


「日本は豪州とは軍事同盟の関係になった。しかし、『日豪円滑化協定』が日本側の説明。安全保障の意味はごまかしている。集団的自衛権で軍事同盟を説明しなければならない。ファイブアイズやインドとの連携も視野に入ってくる。そのための法制も整備する必要。ここで集団的自衛権を行使できないと言ったら、馬鹿になる。戦後、ごまかしながら温めてきた考え方や、わけのわからない解釈から抜け出して、旗幟鮮明にできるかどうか。それが日本のチャレンジだ。戦後の洗脳からの脱却が迫られている。」


「Silent Invasion、あれだけ豪州はやられた。豪州はよく反中に舵を切れた。米大統領選で目の前で見せられているのが、まさに米国に対するSilent Invasion。ここまでやられていたのか。基本的なシステムが機能しない。司法で裁くこともできない。最高裁も判断から逃げる。メディアやSNSまでコントロールしている。中国は従来はウォールストリートを介して米国政界に働きかけてきたが、トランプの出現でできなくなった。そこで、トランプを排除して使いやすい大統領へと、中国は全力を傾注した。」


「Silent Invasionにさらされているのは日本もそうだ。日本が反中へと旗幟鮮明にできないということがそれだ。いまは豪州やインドと連携している。米国はあの状態。米国が機能停止したときに、何をされるかわからない。台湾も領空侵犯。集団的自衛権を本当にしなければならないときに、日本は王毅外相の尖閣トンデモ発言にまで『謝謝』だ。」


「菅総理には国家観も世界観も戦略的思考もない。そういう人が総理をやっている。すべてが中国にとって都合がよいようになっている。」


「外務省の方々とも話をしているが、今回のドイツでの慰安婦像については、現地の区議会で参照された資料は一つしかなかった。それは河野談話だった。外務省のHPでは、しょっぱなから、河野談話を継承…と。政策的整合性を考えずに、なんでもオンパレードだ。あのHPをみたら、民間が反論してもどうにもならない。強制連行を認めていないといっても、『筆舌に尽くしがたい…』、『癒しがたい傷…』、英訳したら、日本が拷問八つ裂きをしたかのように見える。外務官僚にとっては責任を取りたくない。この訳文では、責任元もはっきりしない。すべてが曖昧だ。表現も指揮系統も。」


「日本は根本的なカルチャーチェンジが必要だ。そうしなければ、国際社会のなかで足手まといな日本になり、米中の両方から挟まれて沈んでしまう。自分たちの発想ではなく、誰に発信しようとしているのか、それを考えながら対外発信をする必要がある。」


【新田哲史氏】煽るテレビ、数字も読めないメディア、分断するネット論壇

「日本が先送りしていた分野の問題がコロナで一気に噴出した。コロナとトランプでメディアは壊れた。コロナではテレビの煽りが続いた。本当の専門家ではない人が『女王様』に。3・11のときにはメディアから自省の声があったが、同じことの繰り返しになった。リアルな情勢分析、不都合な真実の認識が日本は苦手。コロナでは数字を読める人間がメディアにいない。統計が読めない。医者もそうだった。メディアのコテコテの文系人間。」


「日本人は何かを変えることに臆病になりすぎだ。都構想すらできない。大阪の政令市を4つに分けるぐらいのこともできない。」


「ネットメディアもマスメディア化し始めた。マスメディアに負けないぐらいの発信力になった。マイナーなメディアもマスと同調し始めた。そこがリベラル左翼と相性が良い。局所的に発信する右側と大きな媒体で発信する左側の間で分断が起こっている。


「安倍政権の8年の間に、SNSが普及し、世論の作られ方の構造が変わってきた。分断の本家本元は米国だが、プラットフォームのところがGAFAによる規制を受けている。言論の自由が保障されていない。プラットフォームに関する議論が、これから日本でも起こってくる。YouTube側からの規制は、プラットフォームにジャッジする能力があるのか。彼らも墓穴を掘る。従来のプラットフォームとは別のパーラーが米国では台頭。ツイッターに代わるもの。SNSに新しいものが出てきた。それがさらに価値観を分断していく。ネットのマスメディア化という状況を受けて、あるべきルールの在り方を考えるべき。」


【西村幸祐氏】日本は言論の自由のプラットフォームをつくり、世界に大きなビジョンを提示していくべき

「いまは日本にとって逆にチャンスだ。もう、日本も悲観論ばかり言っていっていられない状態になった。米国に民主主義を教わったのは真っ赤なウソだった。日本の普通選挙は1925年から。日本のほうが進んでいた。これが今回の大統領選でわかった。日本は戦後、停滞していた。眠っていた。50年前に三島由紀夫が書いていた通りの、からっぽの経済大国に。いまや経済大国ですらなくなった。」


「日本は大きなビジョンを出すときだが、既存の政治家にはできない。大東亜の考えがポストコロナで大事になる。クアッドの地図をみても、それは大東亜共栄圏と同じ。独仏英も加わってきた。ロシアと中国以外が大東亜に加わる。大東亜のようなビジョンこそ、いま出すべきビジョンだ。日本の意思表示として。」


「去年の12月に中国はコロナを決めていた。ウイルスを放出したのが年末か1月、春節が始まる、どんどん世界に行ってくださいと言っている。意図的に撒いたのは間違いない。トランプを潰すのが目的だった。ペンス演説は宣戦布告だった。いまは見えていないという特徴があるが、第三次世界戦争は以前から始まっており、それが可視化した年だった。」


「中国製造2025は軍事目的。遺伝子操作まで含めていろんなことを考えている。来年は中国共産党100年。デジタル人民元のプラットフォームもできてくる。」


「バイデン政権になると、日本は自立しなければ危なくなる。大変なことになる。中国が主宰する秩序がこのままだと形成されかねない。日本が針路を指し示すことが必要だ。」


「日本には世界一の言論の自由がある。米国にはなくなった。言論の自由のプラットフォームを日本は作るべき。米国の大学では言えないことも日本では言える。」


「新しいプラットフォームの動きを、日本で誰かできないか。新しいスキームが必要だ。これだけのインパクトのある年はなかった。必要なのは、まっとうな国家としての仕組みと自立だ。米国に頼れない、我々こそが世界のビジョンを出していく。」


…大きなビジョンは、私が出していく所存です。


今年一年、毎週、メルマガをお届けし、松田政策研究所チャンネルでもリアリズムに基づく数々の政策論を配信してまいりましたが、少しでも皆さまのお役に立てたのであれば光栄です。来年も、松田政策研究所の活動をさらに充実してまいる所存ですので、引き続き、よろしくお願い申し上げます。


よいお年をお迎えください。

閲覧数:162回
bottom of page