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  • 執筆者の写真松田学

ここでも世界の非常識…日本の新型ウィルス対策~健康な人は心配不要~

感染者や死者の数字からニュースが始まるこの頃ですが、エドガー・アラン・ポーの「赤死病の仮面」という短編小説をご存知でしょうか。この、あっと言う間に人々が感染して次々と死んでいく疫病を恐れるが如く、日本が採っている隔離政策…、世界のプロたちの常識とは乖離しているようです。クルーズ船への対応など物笑いの対象。専門家の冷静な見方によれば、健康な人は新型コロナウイルスを恐れる必要はないとのこと。


中国発の新型コロナがこんなに騒がれている一方で、米国では現在、インフルエンザに何千万人もの人々が感染し、死者数も新型コロナをはるかに上回っています。そもそもコロナウィルスとは、風邪を起こすウィルスで、通常の風邪の4割近くがコロナによるもの。そのコロナからときどき、かつて流行ったSARSのような変わり物が出てくる。初めて流行るときは、人々に免疫がないため、流行りやすいのが通例だそうです。


最初は動物からうつり、そこから人から人にうつるようになるのですが、私が長年、親しくしている医師の上昌広先生(医療ガバナンス研究所理事長)によれば、今回の新型ウイルスの特徴も、発症者が出てから2か月たち、ある程度わかってきたとのこと。一つは、うつりやすいこと。もう一つは、なんと、健康な人は心配しなくてよいということ。


確かに、中国でも武漢市以外の上海市などではそれほど死者は出ていませんし、世界でもそうです。インフルエンザは毎年、日本でも流行り、大体、1~2万人が亡くなっています。亡くなるのは概ね、高齢者や糖尿病患者やがん患者。武漢でも多くは、そういう方々が亡くなっているそうです。妊婦も気をつけるべきですが、それ以外は気にしなくてよいとのこと。初回の感染なのでインフルエンザ並みですが、病のベースはそれほどでもない。


以下、上昌広先生が松田政策研究所チャンネルで語ったことに基づいて、もしかすると日本政府がピントのずれた過剰な対応で事態を悪化させているかもしれない新型コロナウイルス騒動について、少し冷静な視点から再考してみたいと思います。


●横浜港の大型クルーズ船対策が世界の非常識である理由

まず、横浜港に停泊中の大型クルーズ船。上先生は福島の被災地での医療活動に携わってきましたが、たとえば飯館村では脳卒中や肺炎で多数の方々が亡くなったそうです。船に閉じ込められた乗客の多くは高齢者ですが、高齢者が家に閉じこもると、持病が悪化して感染して亡くなりやすくなるとのこと。武漢でも同じことが起こったそうです。


そもそも検疫とは、一般に水際の役所を指すCIQのうちQが検疫ですが、英語ではquarantine。これはイタリア語のヴェネツィア方言quarantena(40日間)を語源としているように、かつて、1347年の黒死病(ペスト)の大流行以来、疫病がオスマントルコなどから来た船から広がることに気づいたヴェネツィア共和国当局が、船内に感染者がいないことを確認するため、疫病の潜伏期間に等しい40日の間、疑わしい船を港外に強制的に停泊させるという法律があったことが由来とされています。


日本での検疫は、明治維新以後、ベストやチフス対策として始まりましたが、150年しか歴史がありません。クルーズ船の文化も、19世紀後半から20世紀にかけて、地中海の暖かいところでと、英国の船会社が始めたもので、日本では10~20年の歴史しかありませんが、クルーズ船では色々な病気が発生するもので、欧州はそれに慣れているようです。今回もイタリアでは12時間で、香港では4日で船から乗客が解放されています。


横浜港に停泊中の船は戦艦大和の2倍。歴史的経験の浅い日本が検疫のことがよくわからないまま、最大の検疫を始めてしまったようです。そもそも検疫は航空機では無意味で、潜伏期間の間に通ってしまいます。WHOは、いかなるものであれ人の移動を制限するのは認めないとしているようです。クルーズ船から病人だけ降ろしても、潜伏期間の人からまたうつる。だから、世界では折り合いをつけている。日本では病院船をつくるとか、14日間やるとか言っているが、日本の水際対策はナンセンスというのが上先生の意見。


では、降ろした人たちはどうするのか。日本では、ここで隔離ということが出てくるのですが、すでに国内で流行ってしまっているなら、家に帰しても同じ…。


米国による中国人の入国拒否や、豪州での島への隔離など、日本よりも厳格な水際対策を講じる国があり、日本は手ぬるいとの声も出ていますが、そもそも水際作戦の前提は、国内でまだ流行っていないこと。上先生によると、日本ではすでに新型コロナが流行っている可能性が極めて高いということです。中国の感染症研究所が、人から人に感染しているとの論文を出したのが昨年12月半ば。その後、日本は1か月間、ノーガードでした。


中国から大勢の入国が続いてきた国でありながら、水際対策をするには遅きに失し、この時点で水際対策をしても、経済面や人権面でのダメージが大きい一方で、医学的な効果はなかったとの結果になるようです。もう少し早く、方向転換をすべきだった…。


●必要なのは誰もが受けられる検査体制と通常のインフルエンザ対策

いま何に対策の重点を移すべきかといえば、誰もが検査ができる体制の整備と、私たちが日頃やってきたインフルエンザ対策と同じことを徹底すること。相手は、現段階では感染が速いだけの、要するにインフルエンザなのですから。


上先生は、現在は中国からの帰国者や重症者にしかクリニックで遺伝子検査をできないことが問題だとしています。国民がみんな不安ななかで、本当は、風邪で心配な人を真っ先に検査すべき…。検査キッドを早く開発して国民に配るべきだとの声があり、政府もそう発言していますが、これもバカげた説明だということです。中国で感染がわかったときに、スイスの製薬会社のロッシュ社は、すぐに遺伝子検査を開発、数日で完成させ、これを武漢に無償で提供、中国のマーケットを押さえにかかったようです。これから中国では一大公共事業が始まるとのこと。


日本でもたとえば、民間のSRLは一日に20万件、検査対応ができるそうで、最初から、その体制を組めばよかったことになります。日本で独自開発となると必ず時間がかかるようですが、臨床開発のプロはファーマ(巨大製薬会社)であり、一両日で開発したと海外メディアが報じているのに、日本では報じられなかったとのこと。


クリニックに行って検査をすれば、感染の恐れがありますので、理想は遠隔検査。検査キッドを郵送で取り寄せ、鼻水をとり、これをクリニックに送れば、翌日には検査結果がメールで届く。ところが、初診診療は対面を要するとする厚労省の規制がネックになっています。規制緩和をすれば、国民は安心だし、感染は広がらないのに、未だにやっていない。回避すべきは、元気な感染者がウイルスをまき散らすこと。自分がどうなっているかがわかることが大事です。また、かかった人が治ったとなると、国民も安心でしょう。


インフルエンザの人が無理して会社に行くと、通勤列車でウイルスをまき散らすことになります。1人の感染者から10日間で10万人に広がるとも言われます。本質は風邪に近いのに、感染者は隔離するということになると、多くの人が隠すことになり、それがウイルスを蔓延させますし、入院させると、無菌室であっても、がん患者にうつしてしまいます。陽性反応が出れば、通常のインフルエンザと同じく、会社に出ないでくれ、家の中でも他の家族とは最小限の接触にする。こうして民間でうまくインフルエンザ対策をしてきたことが、政府による強制隔離で台無しになっているというのが、上先生の指摘です。


中国の国内対策が批判されているなかで、私が上先生と対談をして意外だったのは、実は、SARSや二度の鳥インフルエンザなどを経て、ウィルスパンデミック対策が今回で5回目となる中国が、対策では手慣れているということです。診察はWeChatで遠隔検査、医師が必要と判断すれば、配車アプリで連れていかれ、陽性の重い人は別の建物に入れて、他の患者と分けているとのこと。


●恐るべきは国際社会での風評被害

いま、新型コロナに関しては、中国を始め世界が徹底的な情報開示をしているそうです。医師にとって大事なのは、医学論文を出すことであり、中国もネイチャーなどに論文を出しており、それらが日本ではあまり報じられていないとのこと。世界の医学界をリードしているのは、米国と英国の医学誌の編集長であり、ここに載った論文が世界的に報道されるそうですが、その医学誌の一つ、英国のランセット(The Lancet)も日本政府は読んでいないのかと、世界で失笑を買ったようです。「ダイヤモンド・プリンセス号」のことは、海外メディアが、これは監獄かと取り上げてきました。世界のプロたちの間では、人間関係で一次情報が流れるようですが、このネットワークに入っていない日本の記者クラブと役人と周辺の学者たちの世界では、適切な対応は無理なようです。


上先生と20年前に知り合うきっかけとなった社会システムデザイナーの横山禎徳氏が言うように、プロフェッショナルとは世界共通のプロトコールと専門家としての使命感を共有し、グローバルに結びつく人的集団。ところが、2年程度でコロコロと異動を繰り返すキャリア官僚たちも、上先生が日頃指摘しているような現場知らずの医系技官たちも、その拠り所は組織の論理です。上先生との対談を通じて痛感したのは、優秀とされてきた日本の官僚機構が、実は、真のプロフェッショナリズムに欠けているということ。


もう一つ、別の観点から痛感されるのが、やはり、国家としての危機管理能力の欠如でしょう。意味ある水際対策に必要だったのは、事態の発生を受けて、感染者の流入を徹底的に阻止するために、強権をも行使する即時の緊急対応でした。遅ればせながら採られた措置も、人権を制約するに必要な法的根拠は必ずしも十分ではありません。やはり、憲法に緊急事態条項を盛り込む必要があるのではないか。この点については、松田政策研究所チャンネルでも宇山卓栄氏との対談で論じているとおりです(後掲)。


さらに、上先生が指摘するように、もはや日本に新型コロナが蔓延してしまっているのならば、これから増えていく感染者数などの数字が心配です。新型コロナは、かつて欧州の人口を半減させた黒死病(ペスト)でも、感染して30分で死に至るようなポーの「赤死病」でもありません。


恐いのは、国際社会での風評被害。日本が中国と並ぶ汚染国とのレッテルを貼られてしまっては、大変なことになります。それによって、どれだけ日本の国益が失われ、どれだけ人権が侵害されることになるか…。そうした事態を回避するためにも、一人一人の国民が報道に過剰反応することなく、日常的なインフルエンザ対策を冷静に励行し、少しでも感染者数を減らすことに注力することが何よりも問われていると思います。


以上、上昌広先生の所見については、下記の動画でご確認いただけます↓

宇山卓栄氏との対談は、下記をご覧ください↓

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