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  • 執筆者の写真松田学

10万円給付金、デジタル化、国会議員の「文通費」、そして尾身クロン~メディア世論とは異なる視角で~

先週は臨時国会が召集され、岸田総理の二度目の所信表明演説と各党代表質問が行われましたが、立憲民主が新代表のもとで提案型野党への脱皮を印象付けようとしました。これまでのスキャンダル追及から政策論の舞台へと国会論戦のレベルが上がれば歓迎すべきことですが、それは維新が「や党」でも「よ党」でもない是々非々の「ゆ党」として追求してきた路線。では、立憲民主がいかなる立場で「ゆ党」としての差別化を図れるのか…。


消費税の減税や廃止を言えば野党も票を伸ばせる…これが選挙の定石だと言われてきたものですが、どうも先日の総選挙は様子が違いましたし、最近の世論調査では、10万円の給付金には反対が賛成を大きく上回っていました。ある選挙アドバイザーの話では、負担を直視しない政党は信用されなくなった、痛みを乗り超えようというメッセージも必要な世の中になったようです。しかし、消費減税を掲げた立憲民主にそんな決断ができるか…?


バラマキや減税は、将来、自分たちの負担になる、そんな意識は昔から若者世代にはあり、自民党の得票にもつながりましたが、矢野君の論文がだいぶ影響しているのかもしれません。だからこそ、積極財政に踏み切れるようになるためには、これが将来の国民負担増にならない仕組みを実現できる「松田プラン」が必要…参政党の主要政策に入れました。


ただ、こうしたトークンエコノミーに必要なのがブロックチェーンの共通基盤の整備。デジタル庁には未だにデジタル社会の全体ビジョンがないようです。これを政府に提言することも、私が代表理事を務める(一社)デジタルアイデンティティ推進コンソーシアムの役割かもしれません。さもなくば、デジタル人民元の発行で西側に先行する中国が、世界のブロックチェーン共通基盤の運営者に…これこそ「中国が主宰する世界秩序」です。


これは何としても避けなければならない事態。世界がブロックチェーン革命へと向かうなかで、事は急を要します。国会で「文通費」に領収書をつけるかどうかが重要問題になっていられるほど日本は安穏としていられない…。今回は、この文通費問題と、同じく国会で論戦になった給付金の配り方や日本のデジタル化について取り上げたいと思います。


もう一つ、話題のオミクロン…この新株はひょっとすると、新型コロナ人災パンデミックを収束に導くことになるかもしれません。今回はこのことにも触れたいと思います。


●喫緊の課題であるブロックチェーン共通基盤の構築と「松田プラン」

マイナンバーカードはもう取得されたでしょうか。東京都世田谷区に住む知人から聞いた話では、申し込みから取得まで8か月もかかったそうで、これでは取得するなと言っているようなもの。これも日本のデジタル化の遅れによるものでしょう。そんな思いをしなくて済むよう、最初は我慢ですが、ぜひマイナンバーカードを取得してほしいと思います。


政府はこの「マイナ」普及に1・8兆円を今回の補正予算案に計上し、1人最大2万円分のポイントを配布する計画…これはマイナンバー取得をおカネで釣るようなものですが、そうでなく、利便性で釣ってほしいもの。数年のうちにそうなります。私たちの昨年の提案で、来年度中に皆様のスマホにマイナンバーカードのアプリが装着されるようになります。前記のコンソーシアムが政府と連携しつつ、その民間でのユースケースの拡大に乗り出す予定です。そうなれば、政府発行デジタル円の「松田プラン」まであと一歩…。


このプランは、日銀保有国債を、マイナンバーと結びついた政府発行のデジタル円とスワップする形で償還し、このデジタル円をプッシュ型サービスとも結びついたトークンという新しい法定通貨にするもので、国債はおカネに変わります。ですから、少なくともインフレ目標が達成されるまでの間は、後顧の憂いなく財政出動が可能になる仕組みです。


すでに通貨の世界ではデジタル化が進んでいます。来年から中国で導入されるデジタル人民元や各国で検討中のCBDCの動きもありますが、そこまでいかない安直な?動きとして、エルサルバドルはビットコインを自国の法定通貨にしました。同国は「ビットコインシティー」の建設計画まで発表。財源として「ビットコイン債」を発行するそうです。


日本でも民間の動きとして大手銀行がブロックチェーン上で発行する「DCJPY」というデジタル通貨で74社の企業決済プラットフォームを来年にも実用化するようです。但し、預金通貨がバックなので本質的には電子マネーであり、官民が提供する様々なサービスとの結びつきや、国全体としての共通基盤という面では限界がありそうです。


他方で、日本政府は…どうも、9月に発足したデジタル庁の動きが鈍いようです。ブロックチェーンなどは、未だに視野の外…。「危機にすくむ、デジタル化拒む本能、使い勝手よりも組織優先」、こんなニュースも聞こえてきます。


確かに、同庁に日本のデジタル社会の全体ビジョンがあるようには見えません。私どものコンソーシアムとして、この面からの提言も進めていきたいと考えていますが、その上で、私たちが開発したセキュリティの問題解決は大きな推進力になるかもしれません。


いずれにしても、日本にブロックチェーンの共通基盤を創っていくことは、色々な改革を一挙に進める上でも喫緊の課題。そのためにも「松田プラン」を提唱していく所存です。


●いたずらに複雑化している給付金の配布方法

こうした基盤を欠いた日本の現状では、デジタル対応は混乱ばかり…国会では早速、10万円の給付金の配布方法が論争のテーマになりました。国会審議を通じて修正されていくかもしれませんが、政府が当初に計画した配布方法は結構複雑です。


まず、追加経済対策の目玉である18歳以下への10万円相当の給付ですが、このうち、来春支給する5万円分のクーポンは、自治体が開設した通信販売専用のサイトで利用できるポイントを付与する形式が検討されています。過去の給付と同様に紙のクーポン券も用意し、実務を担う市区町村が域内でどちらを使うかを選択できる仕組みになるとのこと。


5万円分のクーポンについては、来年夏の参院選も念頭に、その直前となる来春の入学シーズンや新学期に合わせて対象世帯に郵送するそうです。用途はベビー用品や育児サービスなど子育て目的に限定され、有効期限も設定して消費喚起につなげたいようです。


通販サイトを利用する場合は、ポイントを付与したIDカードが配布され、インターネット上で商品やサービスを購入できるとのこと。紙のクーポンの場合は、市区町村の公募に応じた小売店で商品やサービスを購入できるそうです。


その一方で、先に配る現金5万円は、児童手当の仕組みを活用して、親の銀行口座に直接振り込める0~15歳には年内から支給されます。申請が必要な16~18歳の高校生世代に対しては、親の年収確認などを行ったあと、年明け以降に順次支給するようです。


10万円給付の対象は18歳以下の約1,800万人で、この事業費は、5万円の現金給付とクーポン配布がそれぞれ9,113億円ですが、現金給付の事務費は280億円、仕組みが複雑なクーポン配布の事務費はなんと967億円と、事業費のうち1割も占めています。デジタル化の遅れが、いつもコスパの悪い対策を強いているといえます。


●マイナポイント配布も参院選対策?~スマホでの公的個人認証が必要な理由~

もう一つは、マイナンバーカードを取得した人が最大2万円分を受け取れる「マイナポイント」の配布。その付与時期は、カード新規取得者向けの最大5千円分については来年1月から、カードを健康保険証として利用登録した人向けの7,500円と、公的給付金受取り用に口座を事前登録した人向けの7,500円分については5月からとなるとのこと。


うち新規取得者向けのポイントは、すでに昨年9月から実施されている現行事業と同じ仕組みのため、新たに始める保険証登録や口座登録のポイントよりも早い来年1月から付与が始まる見通し。一方、口座登録のポイントは、カード所有者専用サイト「マイナポータル」での口座登録受付け開始が3月になる見通しですが、システム開発の遅れなどで付与開始が7月までずれ込む可能性もあるとのこと。結局、マイナポイントは来年1月、5月、7月と3段階になるかもしれないようです。7月といえば参院選の投票日が7月10日になりそうですから、これではカネ(ポイント)で票を釣る…?


このマイナポイント事業は、カードの普及促進のため、カードの新規取得や保険証などカードの活用方法の拡大を通じて、キャッシュレス決済の電子マネーとして使えるポイントが付与される仕組みです。新規取得者向けポイントは、スマホのQR決済の「PayPay」など、事業者を一つ選んで、いくらか入金すると、事業者から利用額の25%(最大5千円分)が付与され、5千分までは繰り返し利用できます。


保険証登録者向けポイントは、マイナポータルやカードリーダーのある病院でカードの保険証利用登録後、マイナポイントの専用アプリで決済事業者を選ぶと、各決済事業者のアプリに付与されます。口座登録者向けポイントは、マイナポータルで口座を登録後に、選択した決済事業者のアプリに付与されます。高齢者には分かりにくく使いづらい…。


政府はこのマイナポイント事業で、現在までに4割程度に上昇したマイナンバーカードの普及率を2023年3月末までに、ほぼ全国民に引き上げることを目論んでいますが、この時期はちょうど、私たちの提案で可能になったマイナンバーカードのアプリがスマホに装着される時期。それさえなされれば、スマホによる公的な本人確認機能が高いセキュリティ水準で実現しますので、スマホで何事ももっと簡単で便利…そんな世の中が実現します。


少なくとも、マイナンバーと結びついたサービスは、例えば給付金が所得階層別に瞬時に入金されるなど、プッシュ型で提供されることになるでしょう。政府発行トークンの形をとれば、スマホ上に法定通貨を供給できますし、提供するサービスに応じて消費期限や特典にバリエーションをつけるなど、様々な政策目的に応じた設計も可能になるでしょう。


●デジタル化でむしろ高まるアナログの価値~個々人の人間力が問われる時代に~

こうして否応なしに進むDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、あるアンケート調査によると、コロナのもとで進んだテレワークの継続を今後も望んでいる人が大半だということです。若者たちの間には、上司に気を遣う飲み会などを忌避する傾向まで、リモート化のなかで強まっているとのこと。


ただ、何事もデジタル化していくだけで本当に良いのでしょうか。古代ギリシャ語の「シン」(ともに)+「ポジス」(酒を飲む)がシンポジウムの語源になったように、酒を飲んで人間同士が直接接触するところから知恵が生まれる…これが古今東西の真理。私のように音楽をやっていると、人間は五感以外のところでコミュニケーションをしていることが痛感されます。リモート化はかえってアナログの価値を高めていくと思います。


将来、6Gの世界になると、まるで「どこでもドア」…遠隔にいる人間同士がまさに目の前のリアルな存在になるとされます。そこまで行けばバーチャルとリアルが一体化するのかもしれませんが、それでも伝えきれないものがあるでしょう。少なくとも、現状の技術水準でコミュニケーションをリモートに頼ると、本物の価値は生まれないと思います。


そもそも何のためのデジタル化か…原点を忘れてはいけません。これまで人類は人生の時間の大半をルーティンワークに費やしてきました。何度も氏名と住所を書いて本人確認をし、時間と労力をかけて手続きの真正性を証明し、細かい数値計算やデータの処理や書類の管理に明け暮れてきた。これらは何も人間でなくてもできること。自動処理や信頼性の高い自動管理に委ねて人間がここから解放されることで、浮いた時間やエネルギーは人間にしかできない人間らしいことに割くことができるようになります。


これがデジタル化の本当の意義。ここで問われてくるのは人間力です。自分だけの人間としての価値は何なのか、それを追求する人間らしい生き方と、そうした人間どうしが結びつく絆が、人生や社会の中心的なテーマになる。デジタル化の進展によって、まさにアナログの価値が見直されるようになるのではないかと思います。


●すべての領収書を公開すれば不当に制約されてしまう活動がある

ただ、世界に冠たるアナログ国家を営んできた日本では、ルーティンワークのデジタル化自体が、実現の遠い課題のようです。特に政治の世界はデジタル化がまだまだ…。


政治資金収支報告書を提出する際、国会議員関係の政治団体は総務省のオンラインシステムを使うことが努力義務とされていますが、本年の利用率はたったの2・7%…。政治団体側からは「書類をスキャンする作業などが煩雑で、使い勝手が悪い」、「領収書を1枚ずつスキャンして電子化し、システムに1枚ずつ登録し、その上で対応する収入や支出に一つ一つひも付ける作業が大変だ」といった声が出ています。


領収書といえば、最近、永田町に関して盛り上がっている話題が、各国会議員に毎月100万円が支給される「文書交通通信費」。領収書無しの100万円一括支給など、まさに旧アナログ時代の残滓を思わせるものがありますが、支出の全てについて領収書をとるべきかどうか、橋下徹氏と維新の足立康史・衆議院議員との論争が注目されました。


確かに、情報公開と透明性は政治の信頼性を確保する上で根幹をなすものです。しかし、それを前提としても…国には領収書を公開できない性質の仕事があるのは確か。例えば、犯罪捜査、外交機密、軍事機密に関わるものなどがそうです。


私がかつて財務省で密輸摘発の仕事の責任者をしていた当時、情報公開法の施行を前に、捜査費や報償費にまで領収書を取らねばならないということになると、犯罪摘発が著しく困難になるとして、霞が関の犯罪捜査担当課長どうしで大変心配していたことがありました。犯罪摘発に最も有用なのがナマ情報ですが、情報を持ち込む人は命がけです。領収書を出せなどということになると情報提供は無理でしょう。官邸にも機密費があるように、国の仕事の中には情報公開することのできない性格のものがたくさんあります。


恐らく、米国では公開できない機密費が膨大にあり、有権者もそのことを理解しているのではないかと推察されます。国家にはそういうものがあることについて有権者が理解することも、民主主義の成熟かもしれません。何といっても、国民が選んだ政府がきちんと機能してくれないと困るのは国民そのものなのですから。


国の仕事に関わる国会議員についても、このことが全くあてはまらないとは言えない面があるように思います。実際に国会議員を経験した者なら、機密扱いとせざるを得ない支出が政治活動に伴って生じ得ることは理解できるものだという指摘もあります。政治活動の自由も保証されねばならないでしょう。もちろん、透明性への配慮が必要ですので、一定の枠の中で領収書不要の支出をどう認めていくか、現実的な議論が必要だと思います。


例を挙げてみますと、国会議員も議員外交を活発にしてほしいものですが、例えば、台湾との関係強化の活動のために支出をしたいが、表向きは中国との良好な関係も無視できないと考える議員がいたとした場合、台湾関係の支出だと分かる領収書も公開されるとなると、台湾との関係強化にひるんでしまうことにならないか…。


国会議員が有償で情報を得ている特定の情報源について、他の政党に知られるとまずいことになると判断される場合がないとは言えないのではないか…。これらも公開なのかどうか、国会議員にきちんと国政の仕事をしてもらうという観点からも検討すべきでしょう。


●オミクロンがパンデミックを収束に導く可能性~コロナへの正しい認識に向けた試金石

最後に、いまの旬の話題は何といってもオミクロン。「尾身クローン株」などとも言われていますが、その感染力の強さに世界じゅうが大騒ぎ。しかし、考えようによっては、この新株は新型コロナ人災パンデミックを収束に導くことになるかもしれません。


なぜなら、社会的な行動規制などで感染を防げるなどという、ウイルスに対しては大変失礼な?甘い考えで事態を悪化させてきたのは、世界中の人々の新型コロナに対する間違った認識でしたが、これが正されるかもしれないからです。いよいよ新型コロナが普通の風邪になる(と認識される)日が近づいてきた…ただ、未だバカ騒ぎが続いている政府やメディアの現状をみると、ちょっと無理でしょうか…?


いつもお伝えしているように、新型コロナでは、感染拡大のたびに集団免疫が確立され、それで波が収束しては、人間との共存をめざして変異を続けるウイルスの側で、変異によってより感染力の強いウイルスが誕生し、それが支配的になって、前よりも高い感染の波が訪れるものの、人間の側で免疫訓練が重ねられていくため、重症化率は低下していく…。


世界的にあまり重症化の事例が聞かれない今回の尾身クローン株が、この法則を最も分かりやすく人々に示すことになるかもしれません。


世界一の厳しい鎖国令を出した日本の総理は、「岸田は慎重すぎるという批判は、私が全て負う覚悟だ」と述べましたが、本当に批判しなければならなくなる…?私がいつも井上正康先生や上久保靖彦先生から伺ってきたことを踏まえれば、外国からどんどんオミクロンを入れて国内で暴露させ、無症候感染を増やした方が収束は早く達成されるはずです。


これまで、人為的に行動規制を厳しく実施した国(米国では州)ほど、免疫形成が遅れ、感染者や犠牲者が多かったこともよく考えねばならないでしょう。


これも冷静に異説を排せずに、事態を俯瞰的に観察する理性が問われている問題だと思います。


オミクロン株をどうみるべきかについては、井上先生からの医学的な見解も含めて、今号のメルマガの最後にある「3.松田学 政策発信」でもご紹介しているブログ記事に記載しました。こちらからもご覧になれますので、ぜひ、ご一読ください。

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