• 松田学

新春を迎え、今年を希望の年に転ずるために~本格化する人類文明の転換と日本新秩序~

あけましておめでとうございます。コロナで始まりコロナで終わった昨年は、何もかもが歴史的異常…の一年でした。世の中が巣ごもり状態のこの年末年始をどうお過ごしでしょうか。今年は何よりも「コロナ脳」からの脱却が日本の課題。いったん集団免疫を達して国民全員がワクチンを投与したに等しい日本では、真に恐るべき敵は「感染」ではなく、免疫力の低下。私たちが毎年、2月のピークに向けて風邪やインフルエンザと闘ってきたのもこれです。緊急事態の再宣言より、免疫力強化国民運動を…と言いたいところです。


もう後戻りできない…これからの成長分野のみならず、人々の価値観やライフスタイルまで大きく変えようとしている新型コロナは、人類社会そのものに訪れている文明の大転換を象徴しているように思えてなりません。では、世界はこれからどこに向かって進むのか、このなかで日本は、どのような営みをもって人々が生き抜いていく国になるのか。


誰もまだ明確な答をもっていないこの問いに何らかの道筋をつけていく。禍転じて福と為す…今年2021年が日本にとって、そうした希望の年になれる可能性が見え始めたのも、昨年の世界の動きだったと思います。21世紀に入ってから世界が20年の紆余曲折を経た今年2021年を、「日本新秩序」がスタートする年と位置付けたいと考えております。


●人類文明の転換期としての21世紀

21世紀は大きな文明の転換期だと言われます。文明法則史学の説くところでは、文明の中心が東と西で800年ごとに入れ替わる「800年周期説」があります。13世紀以降、世界の文明をリードすることになったのは西洋でしたが、それから800年を経た21世紀に、文明は西から東へ、つまり西洋からアジアへと、その中心が回帰していくとされています。


そうした転換期を象徴するかのように、21世紀の最初の年の2001年には9・11、すなわち同時多発テロが米国で起こりました。これは、それまでの軍事的な力による覇権というパラダイムがノーを突き付けられた事件だったといえます。2008年にはリーマンショックが起こりましたが、それは、膨張する金融主導の資本主義では人類社会の問題解決にはならず、もう少し別のパラダイムを模索すべきであることを示したものでした。


そして2011年には、3・11、すなわち東日本大震災が日本で起こりました。


その直後に被災地を訪れ、荒涼たる文明の破壊を目にした私の脳裏に浮かんだのは、これは、今までとは異なる考え方の人類文明を創らねばならない、その担い手は日本である、日本民族にはそのような歴史的な使命があるのだという神からの啓示ではないかということでした。爾来、私は「日本新秩序」を政治理念として掲げてまいりました。


このように、21世紀に入ってからすでに予兆が出始めていた人類文明の転換を決定づけることになったのが、昨年からの新型コロナではなかったでしょうか。これからは新しい世界秩序を本格的に模索する時代に入ると思います。


●拡大する中国の覇権

しかし、これも文明法則史学によれば、文明の転換期にはとんでもない覇権国が現れるそうです。昨年はまさに、「見えない戦争」が可視化した一年でもありました。Silent Invasionとも言われますが、これだけ中国が脅威であることを世界が認識するようになった年はなかったのではないでしょうか。米国の大統領選をみても、メディアやSNSでの規制、そして選挙結果も、中国にとって都合の良いものになっていると指摘されています。


ジョージ・オウエルが「1984年」で表わした監視社会を中国が情報技術で進めています。

これが単に中国国内だけでなく、世界をユートピアとは逆のディストピアへと向かわせているのではないか、今年は放っておくと、これが拡大することが懸念されています。


私たちは言論の自由、全体主義に対して自由という価値を守っていく使命を自覚しながら事に当たっていかねばならない、そのことを痛感させられています。


特に昨年は、米国が国際社会から後退している間に、RCEPの合意、習近平によるTPP参加表明など、アジア太平洋を中国が主宰する秩序にしようとするかのような動きがありました。デジタル人民元のインパクトについて、日本のエスタブリッシュメントたちの理解は未だにお粗末ですが、すでにCIPSという人民元建て決済システムが2015年から稼働し始め、これがRCEPで拡大し、そこに、昨年に入ってから実証実験にまで急速に進んだデジタル人民元が導入され、さらに人民元建てオンラインバンクも海外で現れる。


こうして色々なものが組み合わさることでできるのが、中国が主宰する国際通貨プラットフォームです。これがいったんできてしまうと、中国が世界一のプラットフォーマーとして「デジタルドル」や「デジタルユーロ」、「デジタル円」まで発行する事態も予想されています。先進各国も急いで中央銀行発行のデジタル通貨の研究を始めましたが、これを発行したところで、中国が用意したプラットフォーム上でということになりかねません。


中国が先行して技術基盤を整備してしまうと、こういう事態も予想されます。デジタル人民元こそ、中国の世界覇権を完成させるものだとも言われます。


●世界的な価値軸の転換と日本が創る協働型コモンズ

しかし、私たちが考えるべきことは、文明の中心が東洋へと移行しても、その担い手は中国ではないということです。転換期に世界を激震させる国は、いずれ内部崩壊する。これも文明法則史学が説くところのようです。そこで問われてくるのが日本の存在です。


日本が遅れていたデジタルトランスフォーメーション(DX)がポストコロナで本格化すると言われますが、多くの人々がリモート化を経験して感じたのは、逆に、アナログの大切さではなかったでしょうか。確かに、リモートでも仕事やコミュニケーションはできますが、やはり、人と人との接触や、デジタルではないアナログなくして、人間は人間らしく活性化しませんし、私もチェロ弾きとして音楽を営んでおりますが、同じ空気のなかで人間どうしが直に皮膚感覚でコンタクトしなければ、文化的な創造も不可能です。


DX化と同時に、これと対極をなすようにアナログの価値が見直されてくるのが、これからのもう一つの潮流ではないでしょうか。アナログこそは日本の得意分野。ここにおいてさまざまな価値を創出することも、日本新秩序のメニューの一つになっていくでしょう。


さらにもう一つ、コロナで決定的になったのが格差の問題です。拡大する格差への取り組みは経済政策の次元でもさまざまなことが考えられますが、日本が古来から営んできた平等や利他の精神、協調や調和という価値が、これまで以上に世界が求めるところとなってくるのではないでしょうか。アダム・スミスが明確に理論家したような、利己心と競争によって導かれる予定調和という西洋型の概念だけでは、人間は幸せになれないことを先進各国はより強く意識するようになっていると思います。


コロナ対策で主要国は未曽有の財政金融出動によって、まさにMMT(現代貨幣理論)を実行するに至りました。今回のように家計や企業の存続を政府の無償資金で支える姿は、国家介入の最たるものでしょう。特に米国で台頭しているのは、サンダース現象でも露わになっていた社会主義の潮流です。コロナは、雇用創出を専ら民間が担う新自由主義から、国家機能の拡大へと、経済のパラダイムを転換させる契機になったかもしれません。


経済成長の中心軸がITとなった近年では、雇用創出力の弱いIT産業に代わって雇用を生み出していたのはサービス産業でした。しかし、この部門がコロナでやられ、雇用吸収の担い手として国が前面に出てくる可能性があります。


しかし、それ以上に大事なのは、人々が自立しながら協調して多様な価値を創り、ともに支え合う社会の形成だと思います。ここで登場するのが、私がかつて上梓した拙著「いま知っておきたい『みらいのお金』の話」でも提唱した「協働型コモンズ」です。


資本主義と併存する形で、もう一つ、「いいね」感覚で生み出されるユーティリティ・トークンという新しいお金が、人々の協働を支え合う。これは情報技術の進歩が可能にしている新たな社会基盤となるものです。日本でも若い方々の中には、ブロックチェーン技術を活用したトークン・エコノミーの実現に、すでに取り組み始めている方もいます。それが多様な地域づくりやコミュニティづくりを支えていく。


これからキーワードになるのはコミュニティであり、人間どうしのアナログな接触で生み出されるコミュニティをデジタルが支えていく。デジタルとアナログの新しい融合の形を日本が生み出していく、日本はそのような位置づけの国になれるのだと思います。


●日本新秩序の舞台としての「自由で開かれたインド太平洋」

今回のコロナパンデミックで、前述のような日本的な価値観を世界が求める時代が到来しようといるのではないかと私は考えています。よく戦争賛美と誤解されるのが「大東亜」という言葉ですが、これは本来、平等や利他の精神、協調という価値を、日本が世界に対して提唱したものでした。「八紘一宇」とか「八紘為宇」と言われていますが、それは人類がそれぞれ互いに協調して連帯しながら調和を創っていくこと。白人支配の植民地秩序ではなく、多大なる犠牲の上に、人種差別のない平等な戦後秩序へと導いたのは日本でした。


これを現代に置き換えて考えれば、軍事や経済的な支配力といったハードパワーではなく、ソフトな影響力で、世界中が、あれをやってみようという形で自然に伝播していくことで形成されるという意味での大東亜であり、八紘一宇的な考え方になります。


昨年は「自由で開かれたインド太平洋」が具体的な進展をみせた年でもありました。これは日米豪印の4か国から成る、主として安全保障を趣旨とする「クアッド」の本格稼働とも軌を一にするものですが、この中身を固めるのが東南アジアであり、これら4か国にこの地域が加わることで形成される繁栄のプラットフォームといえます。


習近平の中国が極端な政策をすればするほど自然にまとまっていくのが海洋同盟です。これは世界的な戦略家であるルトワック氏が松田政策研究所チャンネルでも述べていたことで、GDPを足し合わせると、あの中国よりも巨大な地域がシーパワー連合としてまとまるという事態を招いているのは、中国自身だともいえます。


そして昨年は、このインド太平洋シーパワー連合に欧州も加わることになりました。フランスはジャンヌダルクを、英国はクイーンエリザベスを東シナ海にまで派遣して共同訓練をする、ドイツも軍艦を派遣することになりました。香港やウイグルの人権弾圧など、さすがに中国はおかしいと英仏独が気付き始めました。もちろん、これからの繁栄の中心が大西洋から太平洋地域へと移行していく大きな潮流をも踏まえた欧州の判断でしょう。


これを「中国包囲網」と言ってはいけないと言われていますが、「自由で開かれた」という意味において、中国とは異なるやり方と価値を生み出していく、そうすることで中国に対しても影響力を発揮していけるような新しい価値づくりのプラットフォームになっていくべきものだと考えられます。


このインド太平洋構想を提唱したのは安倍前総理でしたが、インドのように反米的な国や、米中いずれかの選択を表立って表明できない東南アジアの国々をまとめるということは日本にしかできない役割です。そこに米国が乗ってくることで形成されつつある構想であり、日本が世界の戦略図を数十年ぶりに変更させたという意味でも画期的なものといえます。これから世界中が求めるのが日本ならではの営みが生み出す価値だとすれば、このプラットフォームを主導する日本には大きなチャンスが訪れているといえるでしょう。


ただ、その前提は、尖閣諸島のことも含め、中国に対しても、あるいは北朝鮮に対しても、安全保障面では絶対に譲らないという強い姿勢を堅持することです。


他方で、価値創造の中核として世界で大きな影響力を発揮していく。これは力によってではなく、日本が良いことをやっているというかたちで自然に世界各国が影響を受けることで、「日本新秩序」が「世界新秩序」になっていく。


それが21世紀の日本の道であり、今年がそのスタートの年になればと思います。


ルトワック氏はこうも言っていました。日本はランドパワー(中国)の周辺の国々で民生の向上でも文化の交流でも、積極的に色々なことをやっていけばよい…と。常に周辺国のことを気にしなければならない宿命にあるランドパワーは、これに多くの勢力を向けることを余儀なくされ、結果として日本の安全保障に貢献するということです。


これはいわば、日本が担う価値を中国共産党による覇権的パワーの周辺で展開していくということでもあり、日本新秩序が世界新秩序になっていく上でも意味ある戦略です。


●日本の新しい国づくりへ

これからの日本の道を考える上で欠かせないのがDXへの対応であり、その意味で、今年新設されるデジタル庁が、果たして未来社会をどこまで先取りしているかが問われます。残念ながら、これがブロックチェーン革命まで視野に置いているとは聞いておりません。しかし、そこまで視野に置いた「デジタル革命」でなければ、日本がITでの遅れを取り戻し、世界を先導する国になることにはなりません。


これまでの30年はインターネット革命の時代、これからの30年はブロックチェーン革命の時代。電子データが最大の付加価値の源泉として成長を主導する時代になりました。そこで日本は世界の標準やプラットフォームを各分野でとっていかなければなりません。

そのためにも、今年は、私が唱える「松田プラン」が稼働に向けて、より多くの人々の理解が進む年になってほしいと思います。そうすることで、日本がトークン・エコノミーで世界を先導する国になることを期待するものです。


また、日本の国民性にも適合しているブロックチェーンをさまざまな社会的課題解決や価値創造へと活用することで、この技術自体に多様なイノベーションを起こしていけるのも、日本が有する潜在力ならではだと思います。こうして、各分野で国際標準をとっていく国になることが、日本の最大の成長戦略になると思います。


他方で、これからますますAI革命で産業界に居場所がなくなっていく個人であれ、リタイア後にもう一つの人生の膨大な時間をどう生きがいをもって過ごすかを考えねばならない高齢世代の人々であれ、各人が自ら価値を追求し、そこに生きがいを見出し、それに共鳴する人々が、ブロックチェーンを基盤として「いいね」の投げ銭感覚で、そうした価値や生きがいを支えていく。こうして、民間の自立的な営みとして、色々な価値を生み出す多様な協働型コモンズがモザイクのように展開していく。日本がそのような新しい国づくりを進めることで、世界が日本を真似てみたい素晴らしい国だと思うような国になる…。


「神風」のおかげで、新型コロナに対していったん集団免疫が達成された日本国民であるからこそ、これを奇貨として一日も早く「コロナ脳」から脱することでコロナ禍を克服し、以上に述べた営みを力強く始めたいものです。


今年がそんな一年になることを祈っています。


松田政策研究所では引き続き、リアリズムに基づいた質の高い政策論を展開し、皆様のお役に立つ情報発信を強化していく所存です。


また、私が携わっている各種の事業活動やプロジェクトを通じて、ここで述べたような国づくりを少しでも進めると同時に、ボードメンバーとして参画している参政党などを通じて新しい国づくりに向けた国民運動へと民意の形成も図ってまいりたいと考えています。


なお一層のご支援、ご協力を賜りますよう、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。


(注)ここで触れた文明法則史学に関しては、本号メールマガジン(vol.149)の最後にあります「松田学 政策発信」でご紹介しているブログ記事(林英臣氏との対談番組紹介記事)をご参照ください。


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