• 松田学

いま明かされた安倍政権の真実と民主主義の脆弱さ~先週の世界の3大ショック事件~

トランプ大統領がコロナに感染…!世界に衝撃を与えていますが、私の知人が先週、「今週は3つのショックな出来事があった」と嘆いていました。一つは、トランプとバイデンの滅茶苦茶なテレビ討論。目も当てられなかったと。もう一つは、ベルリンに建てられた慰安婦像、さらにもう一つは、自民党細田派のパーティーがみせた日本の政治の空虚さ…。


もう一つ、これは私が受けたショックですが、長らく安倍前総理と苦楽をともにした谷口智彦・前内閣官房参与との対談で明らかにされた、安倍氏が悲願の憲法改正ができなかった理由。いずれも、民主主義の弱さに関わる問題を提起しているような気がします。


●プロレスラー?のトランプが師と仰いだのが安倍前総理

やはり、日本と違ってG型ウイルスでADE(抗体依存性感染増強)が起こってしまう欧米では、一国の最高指導者も新型コロナの脅威にさらされているということでしょうか。


偉大なる米国の強い指導者を演出してきたトランプがこれでどうなるか予断を許しませんが、そのトランプはつい先日、バイデンや司会者の言葉を遮る乱暴な討論ならぬ「口論」で強さを演出したばかり。実は、トランプはプロレスラー。だから、最初に脅しをするなど悪役を演じるのが平気。バイデンは老人性の難聴ゆえ、言葉を分解する能力が低下しており、司会者と同時に話されると聞こえなくなることを突いたそうです。まさにプロレス。


安倍前総理は世界の首脳のなかで唯一、このプロレスラーとうまく付き合った宰相でした。その経緯について前述の谷口氏はこう語っています。「トランプ当選直後に安倍氏がニューヨークにトランプを訪ねたが、そこは金ピカ。一人で来いよ…まるで真昼の決闘。通訳一人を連れて入ると一家総出で出迎え。ゴッドファーザーの世界。お前、男なら来いよ。」


「豪州のビーフと米国のビーフ、TPPから出ていくと米国は不利と言うが、じゃあ、豪州はお前たちが攻められたら助けにくるのか?…平和安全法を苦労して通した。米国の艦艇が攻撃されそうなときに自衛隊の船がそばにいたら、自動的に守れるようにした。初めて一体化してプラスサムの抑止力になったと安倍さんは説明。カリフォルニアよりも日本に米軍を置いたほうが安上がり。北朝鮮は目先の脅威だが、長い目では中国だ…云々と。」


「最初に会ったときから安倍はすごいとトランプは思った。今回、辞めた時に、トランプは、俺は辛いよと言った。声をつまらせる景色だったそうだ。このトランプとの関係でG7などでも日本が世界の外交をリード。これは明治の国家開闢以来、初めてのこと。」


安倍政権の最大の成果は外交面での勝利でしたが、これは国際世論戦での勝利でもありました。米国や豪州の議会での安倍氏の名演説が高い評価を受けましたが…、


「政権誕生当時、極右、国家主義者、戦争主義者…出発点で安倍さんはそう言われた。日本の筋が悪い、年寄りばかりの子供のいない国で将来がないからナショナリズムを燃え上がらせている、ニッポン悪者論だった。そこで、日本経済を良くして若者に未来をもたせて、必要な施策を打てば打つほど、安倍は意味ある政策をしているとなっていった。これには疑いの目を向けていたメルケルも注目、一つ一つ理に合っていると。ケネディ駐日大使も、付き合えば付き合うほど理屈が通っている、と、オバマや連邦議会議員たちにも電話。なぜ一度も日本の総理は議会に呼ばれていないのか、となったもの。」


「豪州での演説では、日本はどれだけ長い時間をかけて成熟した民主主義を育ててきたかをみてもらった。おじいちゃんの時代にどんな制約があってそんな結果になったのかわからない後世の世代に、前の世代のことを謝る資格はない。しかし、各国が色々と助けてくれたことには感謝しよう。戦後の日本との寛容な付き合いに頭を垂れたい…。豪州議会は波を打ったような感動に。日本への理解に大きな力を発揮した。」


●ドイツ人よ、お前たちもか…ベルリンに建った慰安婦像

逆に、先週のもう一つのショックが、日本への無理解。慰安婦像がベルリン市の人通りの多い中心部に、しかも、今回ドイツでは初めて、私有地ではない公有地に建てられたようです。学界など各界からの参加者による除幕式まで…。事実を無視して嘘を拡散する韓国人活動家の執念はカルトの域に…。メルケルも最初は安倍氏に疑いの目を向けたように、もともと近年のドイツには日本に対する強い偏見が存在するようです。先に「3つのショック」と述べた知人とは、情報戦略アナリストの山岡鉄秀氏ですが、同氏によると…、


「ドイツといえば、ナチス・ヒトラー。戦争犯罪の代名詞です。ところが、ドイツは心から反省した結果、過去にけじめをつけて、信頼を回復しているというステレオタイプな話をよく耳にします。その反省で生まれ変わったはずのドイツ人は、実は深く病んでいて、日本だけは戦争犯罪に関してドイツが非難できる唯一の対象だと思い込んでいるようなのです。ドイツ人は本来なら親身になって相手の話を聞き、公平に物事を判断する人たちですが、こと戦争犯罪に関しては日本の主張に聞く耳をもってくれません。」


「彼らの頭の中では、日本軍=ナチス、南京大虐殺と慰安婦=ホロコースト、天皇陛下=ヒトラー、天皇陛下万歳=ハイルヒトラー…と変換され、固定されているのです。ドイツ人は自分がナチと呼ばれることを大変嫌います。戦争について日本を肯定すれば、ナチと呼ばれかねませんから慎重になりますし、むしろ日本を責める側に回ります。」


「ドイツには左翼思想の人が非常に多いのです。ナチスの暗い歴史を持つドイツでは、戦争に関してはナチスを否定することのみ訓練されています。日本人の歴史を見直そうという動きには、有無を言わさずに大反対、全否定で、中国や韓国、北朝鮮を信じて擁護するという偽善で正義感が満たされているのです。」


「また、ドイツの教会も戦争中ナチスに加担し、大汚点を残しました。そんなドイツの教会に韓国人キリスト教徒が深く入り込んでいます。ドイツ人の信者が高齢者ばかりとなり、財政難となり、活気を失ったドイツの教会にとって、大勢で食事をするにぎやかな韓国人信者の存在は頼みの綱になっています。韓国人信者が望む慰安婦像を建てて、お返ししたいという気持ちもあるのでしょう。」


「ドイツにおける日本叩きは、ドイツ人にとって一種の『救い』なのかもしれません。慰安婦問題や南京大虐殺をホロコーストに見立てて、自国がやったことは棚にあげ、日本を上から目線で断罪する。ドイツ人がネットで真実を調べようとしても、間違った情報が溢れています。どのサイトに行っても同じようなことばかり。これでは誰でも信じてしまいます。ドイツで流されるドキュメンタリー番組は、日本を不思議な国としてとらえ、頭ごなしに日本の植民地支配、南京大虐殺、731部隊、慰安婦問題を批判するのが普通です」。


「さらに驚嘆すべきことは、ドイツ人は自分たちがしたことを忘れていることです。ドイツ軍の慰安婦制度は、日本のそれとは比較にならない残酷なものでした。…ドイツ軍の慰安所で働かされた慰安婦の場合は、よほど運が良くない限り、生き残ることができませんでした。だから、証言者もいないのです。一方、日本軍の慰安所は、原則民間業者による運営で、慰安婦は業者が集めて来た女性たちだったので、最前線で戦闘に巻き込まれない限りは死ぬことはありませんでした。だから、元慰安婦が存在して、挺対協などの謀略組織に利用されているのです。なんという矛盾でしょうか。」


どうも、言論の自由を旨とする民主主義は、思い込みを広げる世論戦には弱いようです。


●内容空虚な自民党最主流派閥の政治資金パーティー

さらにもう一つの先週のショックが細田派のパーティー。参加した山岡氏によると、コロナ対策で12ぐらいのエリアに仕切られた会場には安倍前総理や菅現総理など政界要路たちが現われ、例によって次々と挨拶。通常、一般の参加者にとっては、こうした政治家たちによる内容空虚なおべんちゃらの連続のような挨拶が早く終わって、支払った2万円(人によってはそれ以上)を少しでも取り戻そうと?テーブルの食事にありつける時間を心待ちに我慢して聞いているものですが、この細田派パーティーでは食事は一切なし、水と乾杯用の缶ビールだけで、ただじっと、一部には映像で流れる挨拶を聞くしかなかった…。


そんなときこそ、せっかく訪れたお客さんに対して政治家たちが多少とも聞きごたえのある内容を話すべきなのに、どれもがいつもと同じ。唯一印象に残っているのは、五輪担当として再任された橋本聖子大臣が、「前の東京五輪の年に生まれた自分は、父がオリンピックに感動して聖火にあやかって聖子と名付けられた」と述べたことぐらいだった…。


その橋本大臣、杉田水脈議員の失言?を厳しく追及していましたが、そんなことよりも、パーティーの場では来年の東京五輪に向けた対策など、担当大臣としての政策論こそを述べるべきだったでしょう。ちなみに杉田議員、自民党内の部会での非公開の場での発言でしたから、間違いなく刺された…。党内では少数派の保守系議員が常に足を引っ張られていることの証左か…。発言内容が何であれ、言論の自由が保証されているはずの国会議員が党内での発言すら制約されること自体、民主主義にとって好ましくないことでは…?


有権者が選んだ政治家たちには、どんなことでも思うところを忌憚なく堂々と議論してほしいと思うものですが、いずれにしても、細田派パーティーが象徴するのは、日本の政治における理念や政策論の空虚さや本質論の欠如ではなかったでしょうか。特に菅総理については国家観や理念がみえないと言われます。八幡和郎氏はこんな指摘をしています。


「菅さんはイデオロギーとか理念の人でないので、これはおかしいと…市会議員として住民から言われては知恵を絞るパターン。市会議員はやることがどぶ板。携帯とかインバウンドとか…。そういう感覚で、こういう問題があってなんとかならんかと、脈絡なく提案する。舛添さんから言えば、体系性がない。短期間でどどっとやるなら、それもあってよいが、あまり長く総理をやると体系性がなくなる。短期政権なら我慢もできる。」


「デジタル庁も、ともかくマイナンバーだ、コロナで千載一遇のチャンスだ…それはまさに市会議員的な感覚でわかる範囲。こういう理念で、ではなく、つまり上からではなく、下からの個別改革。理念といえば『地方を大事に』…になる。こういう人が総理になったのは前代未聞。田中角栄にも理念があった。ただ、このような総理が時に出てきてもよい。百やることを決めて、できたらよかったね、を目指すべき。短期政権でいいから、それさえできれば総理を辞めますと言えば、みんなが協力するだろう。」


●安倍政権が憲法改正を成し遂げられなかった本当の理由

でも、菅政権が安倍政権を継承すると言うなら、憲法改正はどうする…?


八幡氏によると「改憲は、がんばると約束しているが、本人の情熱は…?自分がやりたい百の問題解決をするときに、これを改憲でぐちゃぐちゃにするのか、となりかねない。改憲なら岸田氏のほうが確実だった。菅政権が2~3年続いて大人気が続いていれば…ではないか。そのうち安倍さんが我慢できなくなるという展開があるかもしれない。」


では、その安倍前総理は、自らの最大の悲願だったはずの憲法改正を、7年8か月もの安定政権のもとで、しかも国会の3分の2という自民党の悲願がようやく達成された状況のもとで、なぜできなかったのか。以下、谷口氏が明かしてくれた真相です。


「国会で与党が絶対多数を握っても、改憲派が与党の中で多数を握っても、両院の憲法審査会が動かないと憲法改正はできない。強行突破すれば、その後の国民投票が危うくなる。まずは自民党がその気になる必要がある。そのために、数多くの選挙に勝ち続けて求心力を高める。そして、細田派と麻生派は良いが、二階さん…。これを今井氏は意識した。」


経産省官邸官僚に振り回された政権…として色々と批判されているのが、この今井尚哉・前総理補佐官ですが、「今井さんは7年8か月、自らを総理に捧げた。そこをくみ取ってほしい。まさに無私の人。米CSISレポートで中国とのキーマンとして二階さんと今井さんが書かれたが、それが引用したのは日本語のレポートだった。改憲まで走らせるには、二階さんとの関係を…議会対策、自民党対策をできたのは今井さんだった。」


「だから、二階さんと一緒に一帯一路の国際会議にも出た。そうまでして二階さんの力を頼った。これは親中のためではない。憲法改正のため。目的がはっきりしていた。安倍を改憲に持っていくためだった。」


私の財務省での同期の浅川雅嗣・元財務官(現アジア開発銀行総裁)は、よく、今井氏は経産省が産業界にいい顔をするために一帯一路に傾斜していたといった趣旨のことを私に語っていたものですが、実は…、


「今井さんは産業界との関係でも歯ぎしりをしていた。やってくれよ、スリランカやモリディプで…。でも、日本の会社はやらない。中国にやられっぱなし、中国がやらないと欧州が来て日本は敗けてしまう。日本の企業に出てくれよという思いが続いていた。」一帯一路で中国が各国に食い込むのを苦々しく思っていた点では今井氏も同じだったようです。


「国会に出来てしまっている憲法審査会という手続きは難物。まさに総理の『孤独』。自民党が総力を挙げて、野党をも取り込んで憲法審査会を繰り返し開催していくというプロセスは、『もりかけ桜』で全部だめになった。野党も、これらが大した問題でなく、違法性もないことを承知の上で、ひたすら審議時間を奪うために『もりかけ桜』を言い続けた。働き方改革も大事な制度は流れた。重要法案は審議未了に…。ましてや憲法においてをやで、入り口にすら到達しなかった。」


●総理大臣の『孤独』と日本の民主主義

総理の『孤独』とは、総理大臣になると味わうことになるのは「どす黒いまでの孤独」(麻生元総理)だと言われますが、その『孤独』とは、ひとりぼっちという意味の孤独ではなく、最高権力者であっても達成できないことばかりであることを思い知らされる、なんとも言いようのない苦しみである旨、谷口氏は11月号の「HANADA」誌に記しています。


「野党は本当に強い。新しいものは作れなくても、政府案をつぶすには強い力。」


ここで私が思い出した言葉が「決められない政治」。これは衆参のねじれ現象のもとで言われた言葉ですが、安定多数史上最長政権のもとでも、時の為政者は、自ら考える最も重要なことを決められない…。保守系の支持者のなかには、安倍氏が改憲を達成できなかったことに落胆し、批判する向きも多いようです。


しかし、総理大臣を経験したことのない者にはわからないものがある、その職には安易な批判を許さない重みがある…改めてそう感じされてくれたのが、谷口氏の証言でした。


それにしても、日本は野党があまりに強すぎるウルトラ民主主義国家なのでしょうか。民主主義は、米国では国家の分断を克服できず、むしろ分断を助長し、欧州では極右あるいは極左のポピュリズムを台頭させている…そのなかにあって、日本は安定した民主主義が営まれていることで評価されているのが国際論壇の傾向です。しかし、現実をみると、日本が示しているのは、多数決の原理をもってしても大事な意思決定ができない民主主義の弱さなのか…。その事例として、後世の歴史に残らないことを祈るものです。


民主主義に対する全体主義の優位性を強調せんがばかりに拡張しているのが中国。米中デカップリングが高じるなかで、香港問題が、中国が成長の源としてきた国際金融市場での米ドルとのリンクを遮断しかねない暴挙であるとして、習近平を見下す議論もみられますが、少なくとも経済システムの面から冷静にみれば、中国は決して侮れない存在です。


特に、実用化に向けて予想以上のテンポと精密さで開発が進んでいるデジタル人民元は、国際秩序を根底から中国主導へと変えてしまいかねないインパクトを持つもの。一刻も早い、政府発行の「デジタル円」への「松田プラン」の意思決定を願うものです。


こうした今後の国の命運を左右する大事な局面にあって、本質論を語れない政治、もしかすると全体主義勢力からの影響をいつの間にか受けている可能性のある野党やメディアによる「決められない政治」という破壊工作?を、このまま見過ごしてよいのか…。


これらを改めて想起させてくれた谷口智彦さん、7年8か月、本当にお疲れ様でした。

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