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  • 執筆者の写真松田学

新型コロナの帰結は集団免疫と世界秩序の転換~被害者、救済者?へとなりかわる中国~

このまま何も対応しないと、死者が英国では51万人、米国ではなんと220万人に!このImperial College の衝撃の論文が、新型コロナに対する英国の対応を急旋回させたようです。しかし、対策は集団感染ならぬ「集団免疫」。感染のピークを遅らせて、その間に劇症化への体制を整え、あとは人類がこのウィルスと共存するしか道はないようです。


かたや世界経済は1929年の大恐慌か…。今回の経済ショックがリーマンショックなどとは比較にならないのは、大恐慌がそうだったように世界秩序の大きな変動が伴うショックであること。特に今回は、中国共産党がキープレーヤーです。早速、中国自ら、加害者から被害者へ、そして世界の救済者へとなりかわるプロパガンダが始まっています。


新型コロナで皆さん、自粛疲れに加えて、情報の洪水にも疲れ果てているのではないでしょうか。確かに、夾雑物が多すぎて余計な雑音だらけです。何がいつどうなったのか、5W1Hの再確認と、今後どうするかの整理が必要でしょう。以下、新型コロナ対策の基本的な姿勢と、看過できない中国の動きにどう向き合うべきなのか、愚考を試みてみます。


世界を見渡すと、イタリア、イラン、韓国といった親中国の国々に感染者が多く、台湾や香港のような反中国の国々は少ない…これは日本に帰化した某・元中国共産党幹部がネットで流していた指摘ですが、これから爆発的に感染者が増える米国はいまは反中国。例外になるかもしれません。こうした親中、反中の軸のほかにもう一つ、中国もイタリアも米国もそうであるように、新型コロナの因果関係には医療体制の問題があります。


●ウィルスと共存共栄?の着地点に向けて

言うまでもなく、先進国最悪とされてきたのが米国の医療システム。英国の場合は、上述のレポートでは、ワクチン開発まで強硬な封じ込め措置を1年でも1年半でも続ければ死者は2万人に抑えられるとしていますが、米国は果たしてどうなるのか…。


前回のコラムで現場の臨床医の見方としてご紹介したとおり、人類は免疫を獲得しながら、無数のウィルスと共存してきました。新型コロナもいずれ、その一つになると考え、その完全封殺よりも、共存共栄?を着地点に考えるべきなのでしょう。


最近台頭しているのが「集団免疫」の考え方。私のコラムを読んでくれている財務省の後輩が、前述のレポートの全文を読み、こんな整理を私に送ってきました。


1)60歳未満の者への影響は(極めて)軽微である。

2)新型コロナウィルスに罹患しなくても、人類は他の病気や事故に毎日遭っている。交通事故で世界では毎日多数の者が死傷しているが、だからと言って自動車を禁止せよという論者は極めて少数。タバコや酒についても同様。

3)対策はエピカーブ(流行曲線)のピークを抑えて先送りし、医療機関の対応を可能ならしめることが目的であるべきであり、ワクチンがない現状では、罹患そのものを抑えることを目的とすべきではないことを明確化すべきである。

4)ワクチンがない現状では罹患しなければ免疫ができないままであり、outbreak(突発的な感染拡大の発生)のリスクはいつまでも残る。

5)従って、撲滅できないならば、新型コロナウィルスとの「共存」(感染しても劇症化はしない状態)ができる態勢を作ることが次善の策である。

6)劇症化を抑える生活習慣、治療法、薬が発見、開発できれば、予防対策は、通常のインフルエンザや肺炎、風邪並みの対策で十分である。


彼も私も専門家ではないので断定的なことはいえませんが、劇症化対策さえ講じられれば、死者数は相当程度、抑えられる。そう考えて、劇症化が抑えられることを前提に、行き過ぎた自粛(萎縮)を人々に求めるよりは、むしろ「共存」を目指す。そのほうが社会的、経済的コストはもとより、医療コストも下げられると考えるべきなのかもしれません。


●劇症化への対策とPCR検査改善案

そもそも新型コロナであれ、普通の風邪のコロナウィルスであれ、インフルエンザであれ、何らかの感染症が原因で劇症化した病状や患者に対する万全な医療体制を構築するのは、洋の東西を問わず必要なこと。新型コロナに治療薬がない限り、それへの感染を特定しようとする検査よりも重要なのは、劇症化している症状への適切な対応であるはずです。


特にPCR検査は、普通の風邪の原因である土着のコロナウィルスまで陽性判定しているケースが多い…前回ご紹介した、いずれも私の同級生である東大医学部卒の臨床医師と生物学専攻の大学教授が、その後、PCR検査の改善案を送ってきてくれました。


こうした検査の正確性を決めるのは、①感度、②特異性、③定量性だそうで、PCR検査は感度が高い割には特異性、つまり、武漢由来の真正の新型コロナを、それ以外の土着のコロナウィルスと区別して特定する力は弱いそうです。これら3要素のバランスが大事。


そもそもプライマー設定や温度条件をどうするかによって左右される検査であるため、別の視点からプライマー設定したPCRと併用して検査することで誤判定を極小化するというのが、すぐにでもできると彼らが言う改善案です。それでも、定量性の難点は克服できず、1コピーしかウィルスを持たない保菌者も重症者も、同じ判定結果になるとのこと。


つまり、精度も実用性も完璧な検査方法は現実になかなか難しいようです。少なくとも、検査万能を前提にして闇雲に感染者数を抑える考え方には、少し無理がある…?


いずれにしても、どれだけ対策を講じたところで人類社会が集団免疫に至るまで感染者数は拡大の一途。それに伴って、いったん保菌あるいは感染しても自覚のないまま免疫になった人々の数も増え続けるでしょう。心配なのは、ヨーロッパから今度は、医療体制がもっと不備なアフリカ大陸へと、感染が拡大していくこと。劇症化対策が果たして追いつくかが問われてきます。


●ウィルスで中国が主宰する世界秩序?…プロパガンダあの手この手

さて、地球社会全体をここまで追い詰めたそもそもの原因は、中国共産党の隠蔽体質。世界に対してどう責任をとるのか、経済社会の損失や失われた生活、多数の命をどう償うのか。これから中国は国際社会から排除されると考えるのが自然でしょう。


ところが…、そこはしたたかな中国共産党です。そもそも長期戦略を立てるのが彼らの得意技。2049年の中華人民共和国建国百年に最大最強の国家となって世界を制覇する、と公言しているのはよく知られた事実ですが、その目標に向かって中国共産党は動いています。そのなかでの余計な事件が、今回の新型コロナ問題を発生させてしまったこと。これを奇貨として、この長期戦略の遂行に資する短期の戦略をすぐに決めたようです。


それは、まず、加害者が被害者へとなりかわること。これは歴史的にみても中国の常套手段であり、かつて日本の居留民を救うべく起こった上海事変が「侵略」になりかわった通りです。中国の保健当局は「ウィルスの発生源が中国だという証拠はない」…。新華社からは「在日本ウィルス」、「在」を抜かすと日本で発生するウィルスになります。


次に、中国は、世界を救ったのは我々だと言い始めました。中国が世界の救世主…?


いまや武漢と化したイタリアは、G7では初めて、中国と「一帯一路」構想の覚書を締結した国です。これまでの数十年にわたる経済の軌跡で没落し、すがった先が中国でした。いまやヨーロッパで最も多く中国人が居住し、高級ブランドの中核もチャイナマネー、中国とのヒトの行き来が大変多く、真正武漢コロナの蔓延は必然だったでしょう。


こうして街がほとんど封鎖状態となったイタリアで、Youtubeに「中国がイタリアを助けている」旨のプロパガンダを流しているのが、中国系のメディア配信だそうです。イタリアがんばれ」…と。イタリア人は日本人と似て、お人好しで情緒的…「グラーツィエ」。


ウィルス流入に加え、イタリアでここまで事態を悪化させたのは、医療体制の不備ですが、原因は、財政状態の悪いイタリア政府へのEUからの指令に基づく歳出削減で、医療費を大幅に削ったことでした。そのようなEUのあり方まで問われてくるかもしれません。


●見えないウィルスが可視化する「見えない戦争」…細菌兵器説は本当?

もはやグローバル幻想は打ち砕かれ、ナショナリズムが見直されています。すでにトランプ政権の誕生が、世界の新しい趨勢を示していました。今回、「見えないウィルス」がもたらしたのは、世界の分断化のなかで起こっている「見えない戦争」の可視化だった…。


松田政策研究所チャンネルで対談をした批評家の西村幸祐氏は、この点がいちばんのポイントだとしています。中国が覇権秩序を打ち立てんとしていることに対して、米国がそれを許すまじとしている。こうしたせめぎ合いの構図を新型コロナが可視化し、新しい秩序の必要性を国際社会に気づかせた…。


大統領選に向けて「武漢ウィルス」と戦う姿勢をアピールするトランプ大統領が「チャイニーズウィルス」と言えば、中国外務省報道官は「アメリカ軍が武漢にウィルスを持ち込んだ」。西村氏は、このせめぎ合いのなかで中国は新型コロナが実は細菌兵器であることを逆証明してしまったとしています。そのことが暴かれることを脅威と感じているからこそ、アメリカのウィルスだと言い、武漢で多くの犠牲者を出すことでアメリカのウィルスを防いだのだという脚本で、被害者かつ救済者としての中国をアピール…。日本のメディアは中国の広報戦略に屈しているのか、細菌兵器はあり得ないとし続けていますが…。


WHOのテドロス事務局長がパンデミック宣言を行った記者会見で、彼が重要なことを言っていることを日本のメディアは報道していません。曰く「ヨーロッパがパンデミックのセンターになった」、だけでなく、もう一つ、「中国はエピデミックを食い止めた」…。


パンデミックが感染症の世界的な流行を意味するのに対し、エピデミックとは、地域、エリアの中での感染を意味します。武漢で発生したウィルスは、中国国内で終わった。いま世界で広がっているのはヨーロッパが震源地だ…。


テドロス氏といえば、一帯一路で中国ベッタリのエチオピアの閣僚出身で知られていますが、もとは毛沢東主義の極左ゲリラ組織に所属していた人。この発言は、中国の意向を受け、パンデミックの加害者をヨーロッパに転嫁するものです。WHOは中国と一体だとみるべきでしょう。台湾の人は、WHOは中国共産党の一機関だと言っているそうです。


●世界秩序の大転換を見据えた真の保守政治を

では、台湾はなぜ、奇跡的に感染者が少なくて済んでいるのか。それは台湾が中国共産党の脅威を実感しているからです。「両岸経済」とも言われる緊密な経済関係が大陸中国との間にはあるにも関わらず、蔡英文が真っ先にすべての入国を阻止したのは、中国の手口を知っていて、脅威を感じているから。ちなみに、中国では人民解放軍による2020年からの台湾進攻説が囁かれていました。今回、日本も台湾と同じことをやっていれば、東京五輪の開催国としての日本は世界のリーダーとして指導力を高めたかもしれません。


松田政策研究所のチャンネルで、現職の自民党国会議員をはじめ、色々な方々と対談していると、どうも、日本の政界や経済界、メディアには媚中勢力がはびこっていて、それが今回の新型コロナ対策に関する安倍総理の対応にも大きく影響してきたことが伝わってきます。日本の政界全体の対立軸は、親米派(清話会)と親中派(旧田中派の流れ)で割れる自民党のなかにあるとの説も…。だから、その二股をかけて政権を安定させてきた安倍総理は、保守が期待する断固たる措置に簡単には踏みきれなかった…。


2月末からの総理主導での一斉自粛措置は、親中派を切り離した危機管理体制の構築に向けた保守政治家としての安倍総理の決断だったとの見方があります。


世界秩序が大きく変わるとき、中国の周到なプロパガンダに毅然と立ち向かい、非民主主義の一党独裁体制が主宰する世界秩序の形成にストップをかけるために、日本はどうすべきか。新型コロナが投げかけた問題とは、これだったのかもしれません。


2049年への長期ビジョンに対抗できる世界史的な視点から「日本新秩序」のストーリーを世界に打ち出せる真の保守政治こそが、日本の政治には問われていると思います。

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