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  • 執筆者の写真松田学

石原慎太郎氏の死去と岸田文雄氏の物語~信念なき外交の次は消費増税?真の民主主義へ、武田邦彦先生立つ~

先週の大きなニュースといえば、石原慎太郎氏の死去でした。約5年間にわたり石原氏のもとで政治活動に携わった私には色々な思いがあります。顧みれば、それは日本の国家というものを前面に打ち出し、信念を貫き通した戦後唯一の政治勢力の台頭と消滅の5年間の軌跡でもありました。その精神を引き継ぐのが参政党でありたいと思っています。


信念という意味では、その対極にあるのが現在の岸田政権かもしれません。総理としての信念の欠如が露呈したのが、これも先週の話題になった佐渡金山の文化遺産推薦をめぐる二転三転…。「新しい資本主義」も果たしてどこまで信念に裏付けられた政策なのか…?そのレトリックの裏に隠されている本音は財政規律であり、そこに「岸田文雄の物語」がある、今年の参院選後の「黄金の三年間」にやるのは消費増税だという見方すらあります。


しかし、1995年から2020年までの25年間で、日本はドル換算ではGDPも軍事費も減少したのに対し、中国はいずれも約20倍。他方でこの30年間、日本は世界一の対外純資産国として世界に最も大量のマネーを供給してきた国です。これは、自ら稼いで得たはずの資産を、自らは貧しつつ、外国を豊かにするために回し、結果として中国を太らせ、その軍事的脅威まで拡大させたことを意味するもの。世界一お人好しな国、ニッポン…。


この国家縮退の流れを反転させる唯一の道が国内投資を力強く拡大することですが、専守防衛とともに「戦後レジーム」の一角をなす財政の非募債主義(財政緊縮)が日本をがんじがらめにしてきました。この面からも、「戦後」を超克する信念を具有する政治勢力の台頭が求められているはず。しかし、政策論のコンテンツなきまま官僚の話を「よく聞く」岸田総理にブレークスルーの役割を期待しても、土台、無理ということかもしれません。


先週、もう一つ大きなニュースとして取り上げられたのが、一触即発?のウクライナ情勢でした。これは専らプーチンが悪いが如く喧伝されていますが、このほど参政党から参院選に出馬することとなった工学者の武田邦彦氏に言わせれば、本問題の解決に向けて日本こそイニシアチブをとるべき…これも岸田外交には期待できることではありませんが、かく言う武田氏が今回、選挙に出る決断をされた背景には、信念ある有為な政治家を生み出せる真の民主主義へと日本の政治を変えていかねばならないという思いがあるようです。


●石原慎太郎氏のご逝去に寄せて…その思いを日本の再生に

私が石原慎太郎氏に最初にお目にかかったのは、2010年、「たちあがれ日本」の参院選公認候補者として東京都庁に石原都知事を訪ねてツーショット写真を撮ったときでした。言われたのは、「大きいなぁ…」。その時は近寄りがたい印象でしたが、その後、維新の衆議院議員のときに「経済維新」という政策体系を私が党内でとりまとめてからは、石原代表は「政策は松田」と思っていただいたのか、何かと目をかけていただくようになりました。


議員会館の石原代表の部屋で2人でサシで政策を議論したこともありました。「役人をやっているより、国会議員として日本の大改革に関われることのほうがよほど幸せだろう」と、励ましていただいたものです。


恐らく、日本の戦後体制をアウフヘーベンし、真の独立国家としてたちあがる日を期して、最後のご奉公という思いだったのだろうと思います。そうした日本を見ることなく他界されたのは、思い残すこと大だったのではないかと拝察いたします。


2012年の総選挙で、もし維新が全選挙区に候補者を立てていたら、当時の維新ブームであれば3ケタの議席を獲得し、自民との連立で場合によっては石原総理が誕生し、いま頃は、力強く再生した日本が存在していたかもしれません。しかし、当時の大阪側は候補者を絞り込み、獲得議席は、昨年の総選挙で躍進して獲得した41議席よりも多かったものの、54議席にとどまりました。これは、日本の政治史上のチャンスを失うことになったものだと思います。都知事の職を捨てて国会議員に戻った石原氏としては、落胆の思いもあったのではないかと想像します。


そして誠に残念なことに、何かと「たちあがれ日本」系に反感を持っていた大阪側の維新が国家観を喪失し、例えば憲法についての基本理念を左翼的な市民革命論に依拠するような橋下共同代表の発言を始め、維新が選挙で国民と約束したはずの路線から外れていく姿に、石原氏は耐えられなくなったのでしょう。維新の国会議員全員が集まった場で、議員たちを前に話す石原氏が、大阪側の某議員から突然、「出ていけ!!」と野次られたことを思い出します。平然とされていましたが、煮えくり返るお気持ちだったと思います。


いずれにしても、維新は分党して石原氏率いる次世代の党が誕生し、それから間もない解散総選挙で、まだ国民に十分に名を知られていなかった同党は石原氏とともに玉砕しました。現在の松井代表は、当時、次世代の党の方に行った私のような議員たちを、「誰のおかげで当選して国会議員になれたのか勘違いをしている」と発言していますが、それこそ勘違いです。国民と約束した国家観に基づく信念を忘れ、自らの選挙に有利だからと大阪側の維新になびく行動こそ、政治家にもとる行動でしょう。


特に私の場合、そもそもが平沼赳夫氏など当時の重鎮の先生方が、私を国政に必要な人として見込んでいただいたからこそ国会議員になれた原点があったわけですから、それを裏切るような人物こそ、いつなんどき、人を裏切る人になるかわからなかったはずです。


信念を貫いた結果、その後、バッヂを失った長い年月を私は過ごすことになりましたが、バッヂがなくても日本再生のためにできるだけのことはやってまいりました。そして参政党を結党し、信念を貫きとおす所存で、今年、国政へと立ち上がることになりました。

石原慎太郎氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。


●隠された「岸田文雄」の物語…非安倍と財政規律

では、いまの日本を率いる宰相である岸田総理は…?まず、岸田さんの「新しい資本主義」ですが、何度聞いても中身が何だかよくわからない…皆さん、そうおっしゃいます。


それはそうでしょう。そもそも昭和の日本ヘの回帰以外、有為な内容などあり得ようもないのですから。岸田氏のモチベーションは安倍路線の否定。そうなってしまうと、いまの自民党政権に、次なる日本に向けた構想力など期待しようもないと思われます。


要するに、新しい資本主義とは、レトリックの次元において安倍路線に対するアンチテーゼであり、実体面においては、財政規律でしかなく、増税である。とりあえず参院選までは、人の話をよく聞いて、メディアを味方につけて、今回の佐渡金山問題もそうであったように岸田総理自らの「決断」を演出し、支持率を維持する。そして、今年の参院選で自民党がそこそこ勝てば、そのあとにやってくるのは国政選挙のない「黄金の三年間」…


そこで実行するのは、消費税率のさらなる引上げだと考えたほうがいいかもしれません。

イシューとして自民党は消費増税など絶対に口に出さないにせよ、日本の有権者が今度の参院選で選択することになるのは、増税するか否かであるということになります。


こう指摘するのは、裁判沙汰でも何かと話題のジャーナリストである山口敬之氏ですが、財務官僚を経験した私からみると、同氏が示した見方はなかなかの慧眼です。この対談はある方の推薦で実現したものですが、松田政策研究所チャンネルにとってスキャンダルがどうのというのは関係ありません。大事なのは、視聴者の方々に提供できるコンテンツであり、それが本質に迫るものであるかどうかです。


安倍政権での二度目の消費税率引上げのあと、安倍総理は「今後10年間は消費税率のさらなる引き上げはしない」と明言したことに、財務官僚は困ったというのが正直なところだったでしょう。なぜなら、2019年10月の税率引き上げは、それで新たに得られる財源を教育・子育てへの追加支出に回され、財政再建効果などほとんどなかったのですから。


岸田さんは父親が通産官僚、叔父が大蔵官僚、ご自身が開成高校の出身、東大出に囲まれた環境の中にいながら、ご自身は東大受験に三度も失敗。自分が総理になって、東大出の財務官僚たちができなかったことを成し遂げてみせた。自らのコミュニティに対してレガシーを示した。人間の行動というのは、そんな意外なところに隠れた動機というものがあるものです。もし私が岸田さんの立場だったら、そんな思いも持ったかもしれません。


もちろん、私には「松田プラン」がありますから、増税する必要などまったくなくなります。それだけの政策体系が私にはあるつもりです。問題は、そうした政策コンテンツも国益上の信念も、岸田氏ご自身が持ち合せていないのではないかということ。


だから、財政規律や増税しかコンテンツがない…?以下、山口氏の発言をご紹介します。


●佐渡金山問題で露呈した信念なき政治家の姿…中身のない新時代リアリズム外交

同氏によると…「岸田政権は、安倍政権の前の官僚主導の、比較的、外国におもねる霞が関主導の政権だったということが、今回の佐渡金山問題で明らかになってしまった。第二次安倍政権前までは外務省はチャイナスクールのように、エリア担当が外交を主導していた。軍艦島のとき、国際政治でのバトルがあり、遺憾決議という大失態の反省を踏まえて、いまやるともう一度あの修羅場になる、苦労は避けたいというのが外務省の本音だった。しかし、軍艦島ができたのは安倍政権と菅政権がやるといって尻をたたいたからだった。官邸の強い後押しがないと、国際的な論争になるものは逃げる傾向にある。岸田さんはそういう外務省に聞く耳を持ってしまった。」


「そこで戦うだけの信念は岸田さんにはなかった。最後は総理の決断ということになっていたが、今までの流れは審議会で推薦が決まっていたもの。総理の決断というのは、お化粧のし過ぎだ。海外に滞在する日本人の航空券予約を止めた措置を総理がひっくり返したのは、国土交通省航空局の暴走だということになっているが、これも真相は違う。」


「岸田政権とは要するに『非安倍政権』。安倍的でないものを目指す。菅総理以前は国境まで止めなかった、あの轍は踏まない、完全に止めたら国民受けはいいだろう…。総理の決断としてそうした。木原官房副長官が主導しているのが、今の官邸。アベノマスクもそうだが、自立した決断できる、安倍さんの影響力のない政権なんだということに、この4か月、重点を置いた。」


「しかし、それだけだと中身が無い。そろそろ岸田文雄とは何かを出さなければならない。中身がないと日本は迷走してしまう。岸田文雄の信念を見せてほしい。」


「木原氏がうまいのは、決断力のアピール、演出だ。佐渡金山は、2021年から推薦の動きはずっとあった。コロナ禍で一年遅れただけ。菅-茂木-萩生田だと、すぐに決定だった。それが、岸田-林-末松だとそうならなかった。末松さんは政治信条は完全な保守政治家であり、文科大臣としてストップしたとは考えられない。いったん推薦を止めたのは、岸田と林の二人しかいない。」


「国益重視の安倍・菅外交から、相手の主張に耳を傾ける外交へと傾斜させているのは、岸田であり、林である。岸田政権の官邸としての判断で推薦見送りをいったんは決めたもの。保守層の懸念はその通りと言わざるを得ない。岸田、林の二人が経歴からして親中であるが、親中のみならず、親韓、媚韓でもあることが今回はっきりした。」


「外交官の後ろには総理官邸がいる、はしごを外されると昔の外務省に戻ってしまう。岸田総理は『新時代リアリズム外交』と言っている。これは、国益を前面に出した安倍外交とは違う外交を意味する。リアリズムとは、向こうがうるさいならやめよう。信念ではなく、非安倍的であり、妥協的である。全く中身がないのが新時代リアリズム外交。」


●中身なき「新しい資本主義」の本旨は「黄金の三年間」における消費税率引き上げ

「これに対して、『新しい資本主義』には奥底に秘められたものがある。骨格の柱にあるのは、これも『非安倍』。成長ではなく分配、成長のために日銀がマネーを増やすという安倍氏の路線と差別化をするレトリックということが一つ。その先に見えるのは財政規律。」


「昨年11月から日本の株価が下がっており、普通なら、少し色っぽいことを言うはずだが、言わない。流されない岸田文雄のコアがここにある。『非安倍』以外の岸田氏とは何かといえば、ズバリ、増税路線。お札をするのは間違っている、岸田氏の揺らがない部分は唯一、その部分。『非安倍』でメディアの攻撃をかわして、参院選に勝ったら…。まずはメディアを味方につける。安倍はメディアの敵だった。」


「じっとして、官僚頑張れよ、と。しかし、批判されたら、すぐにやめる。長期政権の先にあるのは、安倍政権で壊された財政規律を取り戻すこと。参院選後の『黄金の3年間』。これは結構、まれなケース、そこ一点突破の参院選だ。長期政権で増税をやる。自分の総理としてのレガシーを今から決めている、」


「岸田氏は東大を三回受けている人。家族は東大に囲まれて、自分が総理になったら、この人たちに良い仕事をしたと言われたい。父親や家族、親戚、開成高校の人脈…小さい頃から背負っているものがある。それ以外は何もない、お坊ちゃまだから。」


「岸田さんが政策の話をしたことはほとんどないと聞く。ただ聞くだけ、酒は強いし、酔わないし、聞いている。しかし、今回の外交を見ていると、しゃべらないのではなく、中身がなかった。唯一背負っているのが財政規律だけ、そういう懸念がある。その視点で見ると、色々なことのつじつまが合ってくる。」


●日本が調停役を務めるべきウクライナ紛争~ロシア包囲網は正しいのか~

さて、外交といえば中国韓国もさることながら、現在の国際情勢の焦点はウクライナですが、これについて武田邦彦氏が私との対談で興味深い指摘をしています。武田氏曰く…、


「なぜ旧型の東西対立が今も出てくるのか。米国を中心とする報道となっているが、日本にとっては中国が脅威であり、中国とロシアとの二面対決で日本は行けるのか。今回は、日本はロシアの肩を持って米国との調整をしたほうがいい。」


「ウクライナはかつてモンゴルが来てやられて、囲われた。ナポレオンが西から来た、ヒットラーが来て東部戦線でやられた。大戦の後、NATO軍とワルシャワ条約機構軍との間に境界ができたが、それが1990年から崩れ、現在はNATOの拡大でロシア包囲網が築かれている。ウクライナとロシアとの関係には長い歴史があり、東側はロシア人が多く、難しい地域だ。ここに西側が目をつけるというのは、NATO軍の出すぎである。」


「西側が平和を望むなら、ポーランド~ルーマニアの線とベラルーシ~ウクライナの線の間を非武装地帯にするといった交渉ごとにすべきだ。何事も喧嘩腰ではいけない。みんな民族自決、戦争をしないという路線に切り替えるべきである。日本が交渉で、西側を説得することになれば、世界のイニシアチブをとれる。北方領土もある。ロシアに感謝してもらうようなことをすべきだ。ロシアにとってウクライナは生命線だが、北方領土はどうでもいい。ロシアにとって核心的地域がウクライナだ。食糧も軍事もそうだ。そこと北方領土は比べ物にならない。良い交渉材料ができたと考えるべきだ。」


「台湾情勢を考えると、ウクライナが厳しくなれば、中国は台湾に侵攻しやすくなる。ウクライナの問題を軽くするのは日本にとって国益である。」


●従来の政治家ではこの時代の変化を乗り切れない…本物の民主政治を始めるために

ウクライナ問題で現実に日本がこのような交渉ができるためには、それこそ石原慎太郎氏が「NOと言える」と言ったような、相当したたかで独自の立ち位置を日本は国際社会で持たねばならないでしょう。そんな覚悟の政治家が日本に果たして存在するのか。武田邦彦氏が今回、参院選全国比例に出馬するに至ったのにはそれなりの理由があります。


以下、武田氏が対談番組で語ったところによると…「政治はやらないと言っていたのにナンだという古いファンがいるが、日本には野党がいない、それでは健全な発達はない。自民党は高度成長のときは大きな功績をあげた。それは大いに評価すべきだ。ただ、バブル崩壊以降、色々な政党の離合集散があったが、古い革袋に新しい酒はダメだ。従来の政治家ではこの時代の変化を乗り切れないことが、この30年で証明された。維新も希望も無理だった。今度の参政党は真正面からだ。自民党並みのデカい政策もある。」


「現在の日本の国会は貴族院だ。親が政治家、地盤とかカネとかがないとなれない。供託金も高いし、普通の人なら政治家になろうとしない。これを通常選挙に戻す。自分のような選挙に関係ない人が普通に選挙に出られることを示したい。公認候補発表のあと、立候補したということで、仕事の半分はやめさせられた。地上波テレビは2つに分かれた。平気ですというところもある。これから出る番組もある。それが残っているのは素晴らしい。しかし、普通はテレビに出られなくなる。立候補する権利は国民に平等に与えられた権利だ。自分が立候補して、それなら自分もという人も出てくることを期待したい。」


「参政党では松田のように議員経験のある人が国会で質問に立って、いずれ政権をとればいい。今は、議員の唯一の仕事は次の選挙に当選することだと言われている状態だ。議員会館にいくと、朝の講演で国会議員のレベルの低さを感じる。地方議員のほうが現実をわかっている。国会議員なら世界レベルの話のはずだが、レベルが低い、わかっているの?選挙区のことばかりで視野が狭い。うちの地元では…それが国会議員なのか。普通の人が国会議員に出られることを示していくのが参政党だ。国会で一角を作ってほしい。」


「参政党の意義は、字のとおり、今は政治が国民から遠く離れていて、立候補もできない、意見が上に行かない、手が届かない、それを覆して、みんなが党員になって、支部でいろんな議論をして、支部からこんな意見があったと出してもらう。参政党に参加している声を集約して国会にぶつけていく。電子的な面の発達で、それが可能にもなった。」


「初めて日本に民主主義としての政党ができる。党員が増え、みんなの意見が出て、そこで参政党の政策を決めるのがいい。そのためには練習も要る。皆が自分の頭を整理する、それができたら素晴らしい。今は殿様がどう思っているか、こっちの殿様か、あっちの殿様か、になっている。そうではなく、党員の意見が集約されたのが出てきたらこれは画期的だ。本当の意味での民主主義を日本に定着させる、そのモデルを参政党がつくる。戦後の政党政治がいよいよ終わる。」


…人の話をよく聞くということではなく、たとえ国民にとって耳障りのよくないことでも、本質的な論点を自ら国民に提示して合意を形成することこそが本物の政治の役割というもの。選挙が仕事という職業政治家はもう要りません。万機公論に決し、その上で自らの信念を貫く覚悟をもった政治家を、各界から広く人材を求めて輩出していかねば、日本はズブズブと沈んでいくだけでしょう。やはり、日本の政界には新しい「革袋」が必要です。

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