• 松田学

もし日本が集団免疫なら…国を誤る「専門家」~安倍氏は改憲と消費減税で衆院解散?~

前回は「日本は集団免疫」との上久保靖彦氏の論をご紹介しましたが、メディア報道で創られた国民の常識?も、これまでの新型コロナ対策も根底から覆す内容ですから、無理もありません。反響は絶大、配信翌日までに400件もの問い合わせが松田政策研究所Chに寄せられました。気になるのは、専門家?たちからの心なき(根拠を示さない)批判。


現在囁かれている年内の衆院解散総選挙も、今後のコロナ情勢如何でしょう。ただ、実際に解散を決断するかどうかは、来年の任期満了までの安倍総理の政権運営構想にもよります。よく考えると、改憲にせよ消費税にせよ、安倍政権は小泉政権の負の遺産に苦しんできた政権。最近では与党内からも消費税減税論が出ていますが、どう考えるべきか。


●上久保氏のデータ解析で示された集団免疫

総選挙や消費税の話の前に、すべての前提になるのが新型コロナ情勢ですので、ここで簡単に上久保説を振り返ります。要するに、日本は中国からの全面渡航禁止(3月9日から)が遅れたことが怪我の功名?になって、その間に流入した先祖型のK型コロナウイルスが強力な免疫を形成し、恐ろしい武漢G型も欧米G型も撃退した。これに対し、K型が流入しなかった欧米では、K型よりもさらに前の先祖型であるS型の作用でG型コロナウイルスが増強されてパンデミックになったということ。


問題は、こうして形成された日本の集団免疫もウイルスにさらされ続けないと廃れてしまうこと。過度の活動制限や自粛は、かえって「第二波」を到来させてしまうことに…。


詳しくは前回のコラム(https://00m.in/VNBW7)をご覧いただければと思います。以下、ご記憶の方は読み飛ばしていただいて構いませんが、あらためて要点をまとめますと、


・インフルエンザウイルスとコロナウイルスとは相互に「干渉」し合う逆相関関係にあり、世界各国で精密にモニターされているインフルエンザの流行曲線の変化から、コロナウイルスの感染状況を正確に把握できる。


・変異を繰り返す新型コロナには少なくとも、S型、K型といった、自覚症状のほとんどない弱毒性の先祖型と、恐ろしいG型(武漢型、欧米型)がある。


・このうちS型が昨年12月に日本に上陸し、欧米にも広がっていた。


・その後、1月13日にK型が日本に上陸し、中国近隣諸国にも拡大。3月8日まで中国からの入国を続けた日本ではK型の感染が広がり、これに対する集団免疫が出来上った。


・2月初めに中国からの渡航を全面禁止した欧米では、K型は広がらなかった。


・K型は「T細胞免疫」を強化し、サイトカインでG型を撃退する。日本では、これが武漢G型、欧米G型を迎え撃ち、さらにG型について集団免疫が達成された。


・しかし、S型だけでは、ADE(抗体依存性感染増強)を引き起こす。K型があまり入らずS型のみだった欧米では、G型が入ってADEが起こり、重症化した。


・免疫にはその病原体とは無関係にできた「自然免疫」と、その病原体への感染でできた「獲得免疫」があり、獲得免疫には「B細胞免疫」と「T細胞免疫」がある。


・抗体陽性率が低いとされる現在の「抗体検査」は「B細胞免疫」を評価しており、日本人をG型から守った「T細胞免疫」を評価していない。正しい抗体検査キットは開発中。


・以上から、日本では緊急事態宣言も、その後の活動自粛も不要だった。


・集団免疫にある日本ではPCR検査で陽性であっても、初感染時のような症状が顕著な「感染」ではなく、単なる「暴露」(体内にウイルスが入っているだけ)に近い。現段階では、陽性でもほぼ100%近く重症化しないし、他人にうつすこともほとんどない。


・ウイルスは人間社会に常在して変異を繰り返しているもの。せっかくできた免疫は、これに暴露され続けることで維持される。現在のように、人間をウイルスから隔絶しようとする対策は、かえって、せっかくの免疫を廃らせる可能性が強い。


●専門家たちにとって大事なのは国民の命や真理よりも自分の立場

ここで上久保氏が強調しているのは、これは「仮説」ではなくデータであり、これに反証するならデータをもってする必要があるということ。同氏は、それで覆されるなら、自説はすぐに引っ込めるとしています。仮説ということでは、一部にBCG説など「自然免疫」を主張される専門家もいます。国際医療福祉大学の高橋泰教授は自然免疫を基礎とした「7段階」説を唱えておられますが、私が見ても、それこそ「仮説」のようにみえます。


私のFBに寄せられた東大医学部に籍を置く某専門家は上久保氏をさんざんに批判、そのコメントも多くが理解不足や誤解ですが、一つ、耳を傾けるとすれば、「大量のコロナウイルスを保有していた中国からの観光客の『実測データ』が間接的にでも得られなければ、到底納得できるものではない。この程度の生乾き以前の未検証仮説を総理に耳打ちするのは論外。正常性バイアスによる『引き』、すなわち経済活動再開最優先主義者の好みにあう説明という要素がなければ、ここまで取り上げられることもなかった。」


しかし、『実測データ』など素人の私が考えても、そもそも正確なデータなどなかなか取れないものでしょうし、そうしたデータが存在しないなら何らの推計も否定するということなら、いつまでも真相には迫れないでしょう。生データがない世界に対して、正確な推計ができるデータが存在すれば、それに基づいて解析するのはどの分野でも共通なはず。


「科学者としての姿勢として相手を批判する場合は根拠を示して批判する。それが礼儀となります。研究者であれば、我々の知見を批判するに足るデータをお示しください。それがReasonableなら私も一考いたします。」これが上久保氏からの反論です。


「正常性バイアス」の意味も取り違えていますし、経済活動再開に利害を持つ方による分析でもありません。どうも、医学の「専門家」たちは客観的な分析をぶつけ合うことよりも、誰々は何々派という立場が先立つ固定観念と利害の世界なのでしょうか。国民の命や真理こそが大事では?少なくとも人口当たり死者数が欧米より二桁少ない要因についての実証的な反論を持っていない限り、単なる批判のための批判のようにしかみえません。


専門家たちも政策当事者たちも、自分たちが依拠してきた考え方を否定する論が出てくると、それを排除しようとする傾向があるのは、何も医学に限られません。これは私自身が自らのフィールドで経験しています。先日、ある討論番組で司会者から「松田プラン」の説明を求められましたが、理解しようともしないパネラーたちからのコメントにあきれたものです。某リフレ派の経済学者はリフレ派理論の枠組みに邪魔されて、全く見当はずれの批判、某エコノミストは政府紙幣論と誤解して「意味がない」と断定、日頃から財務省を批判しているはずの某与党国会議員の「財務省が乗るのか?」は、いまの与党には政治主導で財務省を超えようとする意思すらないことを露呈しました。


松田プランの場合は、情報技術やトークンエコノミーに知見のない経済畑の方々には理解力の問題があるでしょう。これに対し、感染症の場合、データとデータをぶつけ合う真摯な議論が専門家どうしでできるはず。その上で、現在のウイルス隔絶「コロナ脳」からウイルスへの自然な曝露へと、国民意識の転換を図ることが政策対応として問われます。


その際には、私たちがインフルエンザ(例年の死者数は新型コロナよりずっと多い)に気を付けてきた以上にウイルスへの感染に注意を払うことを前提に、日常の活動を取り戻す、ただし、K型に未接触の福祉施設の高齢者たちの隔離などはきちんと重点対策をする、ということが「新常態」ではないでしょうか。PCR「感染者」に世界中がこれ以上振り回されないよう、上久保氏が進める正しい検査キットの早期実用化が望まれます。


●拉致問題と解散総選挙のテーマとしての憲法改正

ここから、賛否両論賑わう「年内解散」説についてですが、コロナ情勢もさることながら、解散の決断の上で肝心なのは、任期が一年余りの安倍総理が何を国民に訴えるのか。


先日、松田政策研究所Chで対談をした松原仁・衆議院議員によれば、「横田滋さんがめぐみさんと抱き合う姿を実現できなかったのは外交面の失敗。しかし、拉致問題は日本の独自外交という大きな成果をもたらした。小泉政権の最大の失敗は、このとき、憲法改正のチャンスを活かさなかったこと。」かつては国連決議や有志連合が条件とされていた経済制裁を日本単独で行えるようになったのも、この拉致問題が盛り上げた国家意識でした。


「拉致問題には2つの問題意識があった。一つは被害者の奪還。人権上の問題。これは他方で国家主権の問題と絡んでいる。アーミテージが言ったように、拉致は現在進行形のテロである。これは要するに主権侵害だ。ゆえに、もう一つの問題意識は、主権侵害に対して強い国を作ること。前段については敗北。後段は成果があった。」


「あのときは憲法改正に賛成の国民が6割いた。近隣国の良識に委ねようと憲法の前文に書いてある。それによると、北朝鮮は悪いことをしてはいけないことになる。国民が分かったのは、憲法の前文がリアルではないこと。拉致被害者が5人戻り、日本一国で経済制裁できるよう外務省の考えを変えたときの小泉氏の最大の罪は、このチャンスを生かさなかったこと。憲法改正の機運が国民の間に高まっていた。その瞬間に憲法改正ができた。」


「英国では、奴隷制の上に英国の繁栄があったとの自虐的な教育だったのをサッチャーが変えた。その改革が国民に広がったのが、フォークランド紛争。我々は没落する国家でいい、病める国と思っていたのが、がぜん目覚めて軍艦を送った。英国では、自分たちは自虐的教育をしてきた、目覚めよう、それが教育改革につながった。日本のフォークランドは拉致問題。フォークランドで英国は目覚めた。我々は拉致問題で目覚めた。」


確かに、現在では改憲賛成派が減っており、憲法改正への国民の気運がここまで盛り上がらない現状では、両院で賛成派が3分の2をとっていても、なかなか発議ができません。


●小泉総理のもう一つの負の遺産は増税先送り

もう一つ、私が小泉政権の不作為による負の遺産と考えるのが、当時の小泉総理が、自分が総理の間は消費税率の引上げは議論すらさせないとしたこと。行革の精神はわかりますが、消費税率を上げると歳出が緩むというのと、社会の高齢化で増大する社会保障費とは、桁も性格も異なる問題だったはずです。特に小泉政権のころは、戦後最長の「いざなみ景気」。ドイツも景気の良かった07年に消費税率を16%から19%に引き上げましたが、経済はビクともしませんでした。08年のリーマンショック前までがチャンスでした。


06年に第一次安倍政権へと政権交代する前までに税率引上げを決めておけば間に合いました。当時も前回97年の引上げからすでに10年を経過していましたが、次の安倍総理も財政よりもまずは経済成長との「上げ潮」路線。成長への期待はリーマンで打ち砕かれ、増税のチャンスを日本は逃すことに…。結果として、前回97年から数えること17年を経た2014年に、デフレ経済の下で3%の引上げを実施することに安倍政権は追い込まれてしまいました。これはアベノミクスを掲げる安倍総理ご本人にとっても不本意なことだったでしょう。それによる消費の低迷が次なる引上げをさらに遅らせたのは当然です。


さらにもう一つ、小泉政権の負の遺産を挙げるとすれば、「自民党をぶっ壊す」として公共事業の削減へと走ったこと。これが、その後の民主党政権の「コンクリートから人へ」と相まって、日本の公共事業のエコシステムを崩壊させ、いざ安倍政権が「第二の矢」として機動的な財政政策を掲げても、公共事業の実施自体が制約を受けてしまいました。


●サプライズ解散で安倍総理は消費減税を掲げるのか?

安倍総理が自らの師から受け継いだこれら3つの負の遺産に加え、今回のコロナ禍のなかで支持率も低迷、解散に打って出るためには、あと一年の間に実現する局面打開のタマが不可欠でしょう。その一つが、小泉郵政解散の手法での憲法改正かもしれません。「国会で憲法審査会を開いても、野党が乗ってこない。与党内でも慎重論がある。この際、国民の声を直接聞いてみたい。」郵政民営化への決然たる姿勢が大勝を招いたのと同じ手法です。


もう一つが、消費税の減税。その推進派である山田宏・参議院議員によれば、与党の幹部はまったく乗ってきていないようですが、安倍総理は現時点ではニュートラルとのこと。第二次安倍政権のもとでの二度の衆院解散はいずれも消費税をめぐるものでした。2014年の解散時に掲げた消費増税延期は、当時も、与党幹部のほとんどがあり得ないと考えていたものを、安倍官邸の決断で押し切っての解散でした。今回もあり得ないことではない?


消費税減税は、合流話や勢力結集の動きが出ている野党側が大きく掲げるであろうテーマです。これを与党が掲げれば、お株を奪われた野党はガタガタ…。コロナ禍のなか、あのドイツのメルケル首相も、付加価値税率(消費税率)を半年間、3%引き下げる措置に出ました。日本も時限的な減税としてあり得ないこともないようにみえます。


そもそも税率20%前後の欧州諸国では多くの国々が、これまで、付加価値税率を上げたり下げたりしてきました。日本も、次の税率引上げまでは10年以上かかる、しかも、莫大なる政治的エネルギーを投じて、というのではなく、情勢に応じて弾力的に税率を上下できるような消費税システムを、この際、官民併せて構築するのも選択肢かもしれません。


こうして、小泉総理の負の遺産を逆手にとった大決断劇があるのかどうか…、いずれにしても、いつまでも国民が「コロナ脳」から抜けられず、拉致問題の解決も改憲発議もできないままに安倍政権が終わってしまうことがないことを祈るものです。

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